ニトリホールディングス【9843】株価が約3年ぶり安値圏 懸案「島忠」代表に似鳥会長が就任、シナジーは発現するか

ニトリホールディングス【9843】株価が約3年ぶり安値圏 懸案「島忠」代表に似鳥会長が就任、シナジーは発現するか
値がさ株を卒業、株式分割で投資額5分の1に
ニトリホールディングスの株価は調整局面です。2024年3月に上場来高値2万4420円を付けたあと、同年7月に1万6355円まで急落しました。同年9月には2万2970円まで反発したものの、以降は再び下落基調となります。
25年7月には1万2000円台まで売られました。1万2000円台は、22年11月以来2年8カ月ぶりです。なお、今期(26年3月期)の第1四半期決算を公表すると、株価は前日比で一時10.1%高と急騰。足元では1万4000円台まで上昇しています。
【ニトリホールディングスの株価チャート(過去5年間)】
・株価:1万4240円(25年9月11日終値)

出所:Tradingview
ニトリホールディングスは、市場評価性(PBR基準)から「JPXプライム150」指数に選出されています。投資家の期待が高く、価値創造が推定されることが採用理由です。
なぜ投資家はニトリホールディングスに期待を向けるのでしょうか。同社は25年10月に1:5の株式分割を予定しており、投資単位は足元の株価で28.4万円まで減少する見込みです(25年9月11日終値)。これまでより最低投資額が小さくなる分、注目する投資家はさらに増えそうです。
今回はニトリホールディングスに焦点を当て、同社の強みを探ってみましょう。
徹底した自前主義 製造に加え物流とITもグループ完結
ニトリホールディングスの強みは、同業で比較的高い利益率です。25年3月期の営業利益率は12.7%と、プライム上場の小売業134社の平均5.1%(24年4月期~25年3月期)を大幅に上回ります。
高い利益率は製造小売業(SPA)の特徴です。通常、小売業や卸売業といった流通業は生産の機能を持たず、既製品(ナショナルブランド)を仕入れて販売します。対して製造小売業は、自ら生産した自社製品(プライベートブランド)が主な商材です。在庫リスクを負う分、既製品よりも粗利率が高い傾向にあります。
製造小売業は、自社製品は企画のみで、製造は外部に委託することもあります。しかしニトリホールディングスの場合、商品の多くを自ら製造します。製造はベトナムやタイといったアジアで行い、主に国内で輸入販売します。
さらに、ニトリホールディングスは製造小売業を発展させた「製造物流IT小売業」という独自のビジネスモデルを展開します。製造にとどまらず、物流やシステム開発も自社でまかなう戦略です。物流子会社としてホームロジスティクスを、IT子会社としてニトリデジタルベースを持ち、製造から販売までのプロセスをグループ内で完結することで中間コストを抑えることに成功しています。
販売に直接かかわらない部門を多く抱える戦略は、コストをカバーできるだけの売り上げが必要です。製造物流IT小売業は、家具で国内トップクラスの売り上げを持つニトリホールディングスだからこそ実践できる戦略といえるでしょう。
島忠のシナジーに遅れ グループトップが立て直しを指揮
ニトリホールディングスを巡っては、25年5月に創業者の似鳥昭雄(にとり・あきお)会長が島忠の代表権を持つ会長に就任したことも話題です。島忠はホームセンター「ホームズ」などを運営する企業で、ニトリホールディングスが21年に完全子会社化しました。
島忠は当初、ホームセンター同業のDCMホールディングスから1株4200円で買収されることに合意していましたが、ニトリホールディングスが1株5500円で対抗しました。買収総額は最大2100億円に上り、ニトリホールディングスにとって初めての大型M&Aとみられています。
似鳥会長の島忠トップへの就任は、事業の立て直しが目的とみられています。実は島忠は苦戦しており、連結後は黒字を確保したものの、足元は2期連続の赤字です(国際会計基準後)。想定より売り上げが伸びず、人件費や広告宣伝費の増加をカバーできない状況となっています。買収時に生じた「のれん(※)」約256億円も、定期償却と減損でゼロになりました。
※のれん…被買収企業の純資産と買収額の差。純資産より高く買収したとき、のれんは買収企業の資産として計上される

出所:ニトリホールディングス 決算短信より著者作成
島忠の苦戦は、シナジーの発現が遅れていることにあります。島忠は買収後、既存店舗を「ニトリホームズ」へ改装し、ニトリと島忠の双方の商品を扱う戦略を採ります。しかし期待したほど客足が伸びず、「ニトリホームズ」は現在も1店舗にとどまります。23年12月には、従来の「ホームズ」を新規出店しました。新規出店はこれのみで、連結後に61店舗あった店舗は53店舗まで減少しています。
島忠は似鳥会長の指揮の下、収益の改善を目指します。アプリ会員を増加させ集客の強化を図るほか、家具配送をニトリと統合し物流費を削減します。また、島忠におけるプライベートブランド比率を上昇させ、粗利益率の改善を図る方針です。一代でニトリホールディングスを築いた似鳥会長の手腕が注目されます。
増収増益の連続記録がストップ 増配は継続、今期で22年目
最後に業績の実績と見通しを解説します。順調に拡大してきたニトリホールディングスですが、足元では停滞感もあります。
ニトリホールディングスは、22年2月期で35期連続の増収および経常増益を達成しました。続く23年3月期は、決算期変更に伴う約13カ月(404日)の変則決算でした。増収率は日数プラスの影響を上回ったものの、経常増益率は下回りました。また翌24年3月期は、日数マイナス影響より抑えられたとはいえ、単純比較では減収減益で着地します。こうした経緯から、増収増益の連続記録は途絶えます。
直近25年3月期は増収減益でした。中核のニトリ事業において売り上げが伸びた一方、円安に伴う輸入コストの上昇および販管費の増加が影響し、利益が減少しました。

出所:ニトリホールディングス 決算短信より著者作成
今期(26年3月期)は増収増益の計画です。ニトリ国内事業はテレビCMの強化や家電商品の売り場拡大などで売り上げを伸ばし、販管費の増加をカバーして増益を目指します。計画どおりなら、単純比較で営業増益は3期ぶりです。
【ニトリホールディングスの業績予想(26年3月期)】
・売上収益:9880億円(+6.4%)
・営業利益:1358億円(+15.4%)
・純利益:940億円(+13.9%)
※()は前期比
※同第1四半期時点における同社の予想
出所:ニトリホールディングス 決算短信
なお、増収増益の連続記録はストップしましたが、連続増配は続いています。連続増配は前期で21期に達しました。今期は前期比2円の増配となる1株あたり154円(株式分割後で0.4円増配の30.8円)の配当金を予定します。配当利回りは1%前後と低水準とはいえ、今後は連続増配の記録も注目を集めそうです。
若山 卓也/金融ライター
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。