「アンナミラーズ」が帰ってくる! 電撃復活の背景にレトロブーム?

昭和、平成の時代に人気を集めたあのレストランが帰ってくる――。“アンミラ”の呼称で親しまれ、最盛期には関東を中心に25店舗を展開していた「アンナミラーズ」だ。井村屋(東京/岩本康社長)のフードサービス部が運営し、令和まで残っていた最後の店舗が閉店したのが2022年8月のこと。約3年の空白期間を経て、今冬に再出店を果たす。その理由とねらいとは。

昭和レトロブームが再出店をあと押し

新店舗の外観イメージ

「ホームメイドパイ」をはじめ、ドイツからアメリカ東部のペンシルバニアに入植した「ペンシルバニア・ダッチ」の家庭料理を提供するパイレストランとして、独特な世界観と華やかなスタッフの制服、コーヒーのお替わり無料サービスなどが好評だったアンナミラーズ。国内唯一の店舗として品川駅高輪口のショッピングモールに残っていた高輪店が、リニア新幹線の開業を見据えた再開発で閉店となって以降は、オンラインショップでのパイの販売やポップアップショップの出店を行っていたが、ついに実店舗で復活を果たす。

「高輪店の閉店をプレスリリースで発表してから閉店までの約2カ月間は連日長蛇の列。中には徹夜で並ぶお客さまの姿もあった。たくさんの人から閉店を惜しむ声とともに再出店の要望があり、会社のホームページにも多くのコメントが寄せられた」と話すのは、高輪店オープン時のマネジャーで、現在は井村屋顧問を務める鼎正教氏だ。

高輪店閉店以降、「横浜高島屋」「エキュート品川」「東京スカイツリータウン・ソラマチ」など百貨店や商業施設などで期間限定のポップアップショップを年4回程度出店。そこでも実店舗の再出店を望む声が多く寄せられていた。折しも昭和レトロがブームになり、再出店に向けた機運が社内でも高まって、2024年秋頃から物件探しを始めたという。

麻布十番、白金台、広尾、自由が丘も候補に

レストランを象徴する人気メニューの一つアップルパイ

「アンナミラーズは昭和感たっぷりのレストラン。ポップアップショップではフレッシュストロベリーパイやチョコレートパイなど、生クリームのトッピングやデコレーションを施す商品の提供は難しかった。もともとアンナミラーズのパイメニューはゼロから手作りする“スクラッチ・メイド”が基本。焼き立て、クリーム搾りたてのパイなど、作りたてのおいしい料理を味わっていただきたいと考えている」(鼎氏)

アンナミラーズの基本コンセプトである「High Quality(高品質)」「Smile&Hospitality Service (笑顔でお客さまをお迎えする、おもてなしのサービス)」「Cleanliness&Atmosphere(清潔でお客さまにとって居心地の良い、雰囲気づくり)」、そして井村屋グループの理念かつミッションに掲げる「おいしい!の笑顔をつくる」を体現する店舗として再出発を果たす。

再びの出店の場所に選んだのは南青山。1973年に初出店した1号店と同じエリアで、東京メトロの外苑前駅徒歩1分という絶好の立地だ。鼎氏によると「出店地としては港区を考えていた」ことから、他に候補地となったのは麻布十番、白金台、広尾。さらに「ブランド認知度が高かった」ため、自由が丘も検討されたという。

最盛期には25店舗を展開していたアンナミラーズ。そこから店舗が減少していった背景を「バブルが弾けた影響で、外食産業を取り巻く状況が非常に厳しくなった」と鼎氏は振り返る。かつては名古屋、京都、大阪、神戸などからフランチャイズ展開したいというオファーもあったものの、技術的にクリアできない点があったため、関東中心の出店にとどまっていた。

バブル崩壊の影響で不採算店が増えていく中でも最後まで残っていた高輪店は多くの顧客に恵まれたうえ、アクセスがよく、近隣ホテル宿泊客も多く来店し、ホームメイドパイが土産として購入されるケースも多かった。「再開発エリアに入っていなければ、まだ営業を続けていただろう」と鼎氏。復活する南青山の新店舗もカラーリングやインテリアは高輪店に近いイメージになる予定で「作りたてのおいしさを食べていただくことに加えて、ホスピタリティの面を、さらに磨いて前面に押し出していきたい」と話す。

食べ歩きを想定したワンハンドフードの提供も

新店舗の内観イメージ

南青山の店舗で主要顧客に想定しているのは、20~30代の女性だ。かつてのアンナミラーズでは来店した女性客が「ここで働きたい」と希望してアルバイトやパートになることも多かったため、人材採用の面でも期待しているという。ただ、出店を控える中、目下の課題はまさにスタッフの確保と教育。新店は2フロアで営業する約50坪の店舗で、まずは最適なオペレーションを検討した上で採用・教育訓練に移ることを予定している。

井村屋フードサービス部副部長で、高輪店の店長だった高橋賢一氏は「実は再出店が決まった後もポップアップショップの店頭で新規出店の予定を聞かれた。公表前だったため言葉を濁したが、期待されていることがひしひし感じられた。新たな店でも期待に応えられるよう努めていきたい」と話す。

メニューはホームメイドパイのほか、ケーキ、デザート各種に加えて、本場アメリカンスタイルのハンバーガーやサンドイッチを取りそろえる。国立競技場、秩父宮ラグビー場、神宮球場に近く、ボールパーク構想が進められる神宮外苑の再開発エリアに入る立地であることから、テイクアウトでの食べ歩きを想定したワンハンドフードの提供も検討しているという。

1973年の日本進出時はアメリカのアンナミラーズとライセンス契約を結んで出店したが、現在は商標権などを井村屋が買い取っているため、日本での商品開発やオペレーションを自由に設計できるようになっている。そのうえで「本場アメリカのスタイルは踏襲していきたい」と鼎氏は話す。

制服はかつてのデザインを踏襲

10月1日付で井村屋フードサービス部が独立して新会社・井村屋フードサービス株式会社を設立し事業運営にあたる。「オープン記念のノベルティグッズ配布なども含めて、キャンペーン企画も考えていきたい」と高橋氏。お替り自由の“ボトムレスコーヒー”のサービスや、メイド喫茶の流行にも大きな影響を与えたという説もあるデザインの制服も復活する。

「昔を知る60~70代には懐かしく感じてもらえるだろう」と鼎氏。ファン待望の復活がどれだけのインパクト与えるか。どのような展開を見せていくのか。注視していきたい。