「やりたいこと」があっても動けない人が見落としている“全体像”の描き方

写真はイメージです Photo:PIXTA
「やりたいことが見えてこない」そんな悩みを抱える人は、全体像を整理できていない可能性がある。企業支援の現場で実績を積んだコンサルタント・高橋輝行氏も、新人時代は後先考えずに仕事に着手していた過去があるという。場当たり的な仕事から脱却するために必要な考え方とは?※本稿は、高橋輝行『結果を出すコンサルだけが知っている 「伝わらない」がなくなる話し方の順番』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。
「やりたいこと」の全体像が
見えていない人の共通点
私がコンサルティング会社に入社し、先輩からある企業の事業成長を検討するための調査を依頼されました。
私は、その企業や業界を取り巻く状況など知らなかったので、とりあえず関連する書籍を買い込んでインプットしていました。
その状況を見ていた先輩から、
「調べる前に、何を調べるべきか整理している?」
と聞かれました。
私は「何を調べていいか分からないので、知識のインプットから始めています」
と答えると、
「それじゃ、いつまでたっても終わらないよ」
と言われました。
そして、
「優れたコンサルタントは、やることを決めたら、走り出す前にまず『考える要素』と『優先順位』を先に考えて、やることの全体像を整理するものだよ」
とアドバイスしてくれました。
当時の私は、後先考えず、とりあえず頭に浮かんだことをしてしまっていました。
それだと、考えるべきことが漏れたり、色々な方向に考えが飛んだり、同じことを考え続けてしまうといったことが起こり、いつまでたってもゴールに近づくことができません。
「とりあえず動く」のではなく
「思考の解像度を上げる」作業を
アドバイスをもらった私は、どうすればいいか考え込んでしまいました。
するとその先輩は、
「考える要素と優先順位を一緒に整理しよう」
と言ってくれました。
そして、
「企業の成長の方向性を検討するには、市場、競合、自社を比較する『3C(Customer 、Competitor、Company)』という便利な思考の枠組みがあるから、それを使って、まずはCustomerの要素を出していこう」
と会話をリードしてくれました。
「やりたいこと」に対して、「考える要素」の全体の枠組みのことを「フレームワーク」と言います。
最も汎用的なフレームワークは「5W1H(Who、What、Why、When、Where、How)」です。
例えば「ドライブしたい」のであれば、「誰と」「いつ」「どのような方法で」といった要素を出していくことで、実際にドライブすることができるようになります。

同書より転載
「やりたいこと」の言語化ができたら、「とりあえず動く」のではなく、思考の解像度を上げるための地図となる「フレームワーク」をシェアする話し方をすることで、作業の無駄や失敗を防ぐことができるのです。
フレームワークをシェアすることで、相手の思考は「やりたいこと」を実現するために考える要素と順番を整理することができ、思考の解像度を具体的に上げられるようになります。
そして、それぞれの要素について「このアイデアはどうだろう?」「これを知っている人に聞いてみよう」と思考が先へ動き出します。
要素と順番を意識して
話しを進めていくメリット
先ほど紹介した先輩は、私と話をする際に、常にフレームワークから話を始めていました。
その先輩と居酒屋へ行った時、私がメニューを開いて「何を食べましょうか?」
と聞くと、
「この店の料理のジャンルは『和食』で、カテゴリは『前菜』『煮物』『焼物』『ご飯物』か。まずは、前菜はどれがいい?」
とまず料理のジャンルを示し、次に料理のカテゴリを整理し、考える要素の優先順位をつけて話を進めてくれたので、
「まずは枝豆ですね。おっ、卵焼きも食べたいです!」
と、私は食べたい料理までスムーズに辿り着くことができました。
この先輩だけでなく優れたコンサルタントは、仕事でもプライベートでも常に「やりたいこと」の次に「フレームワーク」を話す習慣を持っていました。
言い換えると、お互いの頭の中に共通の思考の枠組みをつくる話し方をしているのです。
この習慣を身につけると、「やりたいこと」を実現するために相手が「考えるべきこと」の全体像を提示できるようになります。
そして、相手の半歩先から、考えを深める要素を順番に整理し、思考をガイドできるようになります。
考えを深める要素に
「優先順位」をつける
ある日、入社したての社員と同じ居酒屋へ行きました。
私が先ほどの先輩と同じように料理のフレームワークを頭に置いて話そうとすると、
「ご飯物、うまそうですね!カツ丼にしようか、焼きそばか迷います…」
と、新入社員はいきなりご飯物から考え始めたのです。
私は「まず、前菜から」と考えていたので、私は新人コンサルタントに「前菜から順に頼んで、お腹の具合を見ながら最後のほうにご飯物を注文しない?」と提案しました。
ものごとには考える順序があり、ご飯物から先に考えると、前菜やその他の料理がどの程度食べられるか予想がつかず、選ぶことができません。
一方、前菜から考えて、お酒を飲みながら少しずつ食べれば、最後にお腹に入る分量のご飯物を選ぶことができます。
このように、フレームワークをもとに考える要素を整理した次は、考えを深める要素に優先順位をつける話し方をします。
そうすることで、相手の思考を混乱させることなく順序立てて思考をガイドできるだけでなく、それぞれの要素を行ったり来たりするのを防ぐ効果もあります。
フレームワークを使って
会話を進めていく方法
ここからは、相手の「やりたいこと」の全体像を整理する話し方のテクニックについて、いくつかご紹介します。
ある日、知人のコンサルタントの会社の近くでランチへ行った時のことです。
私が「今日ランチどこ行く?」と聞くと、
「この辺だと『和食』『中華』『イタリアン』があるけど、どれがいい?」
と料理のジャンルを聞いてきました。
私が「久々にイタリアンがいい」と言うと、
「じゃあ、『生パスタの店A』『釜焼きピザの店B』『グリル肉の店C』のどれがいい?」
と料理名を挙げてくれました。
私は「グリル肉の店C」を選び、知人と楽しいランチを過ごしました。この時、店を選ぶのにかかった時間はわずか30秒ほどでした。
この例での「やりたいこと」は、「知人の会社近くでランチを食べる」です。初めに知人は会社近くの店の「料理のジャンル」を提示しました。
私が「イタリアン」を選ぶと、次に「料理の種類」を提示しました。
このように、フレームワークを使って相手の思考をガイドする場合には、(1)考える要素を「横」に広げる、(2)考える要素に優先順位をつける、(3)優先度の高い要素を「縦」に掘り下げるという流れで進めると、スムーズに話を進めることができます。
別の知人とランチへ行き、知人の会社近くで食べることになりました。
「『パスタ』と『ピザ』の店があるけど、どれがいい?」
と知人が料理名を挙げてきました。
私は前日の夜にイタリアンを食べたので、
「イタリアン以外がいい」
と答えると、
「じゃあ、『とんかつ』か『焼きそば』なんかどう?」
と聞いてきました。
「大」から「小」の順で
話を進めると思考が整理される

『結果を出すコンサルだけが知っている 「伝わらない」がなくなる話し方の順番』 (高橋輝行 あさ出版)
私にとってはどれもイマイチで、「ほかにない?」と言うと同じようなやりとりが何度か続いて5分ほどでようやく店が決まりました。
コンサルタントの知人と店を決める時間とを比べると4分以上も長くかかりましたが、その原因は最初に提示した要素の違いにあります。
コンサルタントの知人は、初めに「料理のジャンル」を提示し、この知人は「(ジャンルをイタリアンに絞った後の)料理名」を提示しました。要素の大きさは、
ジャンル>料理名
であり、「料理のジャンル」から話して料理名へと絞り込んでいく話し方のほうが相手の思考をガイドしやすいです。
このように、フレームワークを使って思考の全体像を整理する際には、要素を横に広げてから縦に掘り下げ、大きな要素から小さな要素へ段階的に提示する話し方を心がけるようにしましょう。

同書より転載