段ボール箱の需要低迷、米経済にとって不吉な訳とは

ペンシルベニア州アトグレンにあるインターナショナル・ペーパーの段ボール箱工場

米国で段ボール箱に対する需要が低迷している。ピザからオーブンまで、さまざまな商品が段ボール箱で運ばれることを考えると、これは消費の変調を示唆する警告サインかもしれない。

ボール紙工場の歴史的な閉鎖ラッシュはまた、段ボール箱を製造する企業や、それらの企業に木材を販売する森林地所有者とっても人ごとではないことを示している。

米国最大の段ボール箱メーカーであるインターナショナル・ペーパーは8月、国内のボール紙工場2カ所を閉鎖すると発表した。

ジョージア州のサバンナとライスボロにある工場が9月末に完全閉鎖されると、米国は約8カ月間でボール紙生産能力の約9%を失うことになる。これは2009年の景気後退時に失われた能力の約2倍だ。

「これほどの規模の閉鎖は見たことがない」。包装業界アナリストを長年務め、現在は経済ニュースレターを執筆するアダム・ジョセフソン氏はそう語る。

段ボール箱の出荷量は、新型コロナウイルス流行時に記録的な高水準に達したが、足元では2016年以来の低水準まで落ち込んでいる。国民1人当たりベースでは落ち込みがさらに激しく、1999年のピークから20%以上減少したとジョセフソン氏は言う。

米国民1人当たりの段ボール箱出荷量

インターナショナル・ペーパーのアンディ・シルバーネイル最高経営責任者(CEO)は今月、同社では今年の需要を約1%増と予測していたが、現在は2%減を見込んでいると投資家に語った。

現在のような電子商取引(EC)全盛時代にこうした反転が見られたのは驚きだ。小売業者に一括配送されていた商品の宅配が増えることで、これまで以上にボール紙が必要になると予想されていたからだ。

この論理はコロナ流行時に実現したように見えた。米国人が巣ごもりを余儀なくされ、経済刺激策がモノへの支出を大幅に押し上げた際、段ボール箱への需要は記録的水準まで上昇した。

ボール紙生産者は、前例のない需要の高まりだけでなく、天然ガスや化学品などのコスト急増を理由に、価格を大幅に引き上げた。段ボール箱の需要が減少し始めた後も、生産者はインフレと利益率への圧力に対抗するため値上げを続けている。

データ会社ファストマーケッツが発行する業界誌で、買い手と売り手を調査し指標価格を設定している「PPIパルプ&ペーパー・ウィーク」によると、最も一般的なライナー(波状の中芯を挟むボール紙)の価格は1トン当たり約945ドル(約14万円)で、2019年末の約725ドルから上昇している。

同誌の調査によると、今年、生産者が1トン当たり70ドルの値上げを求めた際、買い手は40ドル分の値上げにしか応じなかった。ファストマーケッツの地域担当編集長、グレッグ・ラダー氏はそう話す。

「これは市場での激しい攻防を示している」とラダー氏は述べた。それでも、生産者が値上げ要求を控えたり、工場停止による供給抑制をやめたりすることはないだろうと言う。

昨年、アイルランドのスマーフィット・カッパ・グループと米ウエストロックが合併し、企業価値200億ドルの包装材メーカーが誕生した。これをきっかけに始まった業界再編の波により、米国の生産上位3社がさらなる市場シェアと価格決定力を握った。

インターナショナル・ペーパーは今年1月、英DSスミスを72億ドルで買収した。そして8月には、米パッケージング・コープ・オブ・アメリカ(PCA)が米グライフのボール紙事業を18億ドルで買収した。

株式アナリストらは、需要が引き続き弱まったとしても、生産能力削減により来年は値上げを推進できるはずだと述べている。

段ボール箱メーカーとアナリストによると、需要は現在、ドナルド・トランプ米大統領の関税政策に伴う米企業経営と輸出市場の不確実性に加え、個人消費の減速が重荷となっている。住宅市場の低迷も打撃で、引っ越し用や建築・家電製品用の段ボール需要がさえない。

アナリストによると、アマゾン・ドット・コムなどのEC企業が段ボール消費を減らしていることも逆風だ。EC企業は、紙製やビニール製の封筒で配送する商品を増やしたり、オーダーメードの箱を使用したり、箱の中に箱を入れるような包装を減らしたりしているという。

インターナショナル・ペーパーは今年4月、ルイジアナ州キャンプティの大型工場を閉鎖した。それに続くジョージア州の工場閉鎖は、需要動向に応じた措置というより、127年の歴史を持つ同社の再建計画の一環という面が強いと、シルバーネイル氏は述べた。同氏は、多くの利益を生み出す少数の顧客に焦点を当て、赤字拠点を排除したいと考えている。

インターナショナル・ペーパーは、ジョージア州サバンナのボール紙工場を9月中に閉鎖すると発表した

同氏は今月、ニューヨークで開催された会議で投資家に対し、89年の歴史を持つサバンナ工場は投資不足に陥り、約3億ドルの維持費が必要だったと説明した。

「大規模な修理を行う必要があった。基本的に経済価値を生まないにもかかわらず、稼働を続けるなら不可避の修理を、だ」と同氏は述べた。さらに悪いことに、同工場の生産品の一部は輸出向けで、国内販売よりも収益性が低かった。

インターナショナル・ペーパーは同工場を閉鎖する代わりに、2億5000万ドルを投じてアラバマ州セルマのコピー用紙工場を軽量ボール紙工場に転換する。軽量ボール紙は、燃料消費を抑えたい荷主の間で人気が高い。

一方、非公開企業のフッド・コンテナとグリーン・ベイ・パッケージングがそれぞれルイジアナ州とアーカンソー州のボール紙工場に投資し、生産能力を高める計画を発表済みだ。この結果、セルマの工場転換も踏まえると、米国は最近の工場閉鎖で失った生産能力の約4分の1を取り戻す見通しだ。