ほっかほっか亭「店舗減」でも"へこたれない"ワケ

SNSのクレームコメントにも1つひとつ返信, 「ほっかほっか亭ってまだあるんだ」がバズった, ほっかほっか亭が運営する「コインランドリー」, 店舗数は減っているが、売り上げは向上, ほっかほっか亭の今後のSNS戦略

東京都内ではほとんど店舗を見ないと(写真:ほっかほっか亭の公式サイトより)

ここ1年ほど、大手弁当チェーン「ほっかほっか亭」の話題をSNSやメディアで目にする機会が増えている。

【秘蔵写真】「懐かしすぎる…」1980年の創業当時の《ほっかほっか亭》

2024年9月には、同社メニューに対して辛口レビューを行った料理研究家のリュウジ氏に公開でコラボを依頼して賛否両論の意見が巻き起こったり、2025年の4月1日(エイプリルフール)にはSNSに「ライス販売停止」とウソネタを投稿して物議を醸したり――といった事案が起きた。

一見すると炎上しているように感じる事案も、筆者には計算したうえで戦略的にやっているように見えた。なお、上記の2事例については、過去に本媒体で論じている。

SNSのクレームコメントにも1つひとつ返信

ほっかほっか亭を運営しているのは「株式会社ほっかほっか亭総本部」だが、同社は株式会社ハークスレイの100%子会社だ。持ち株会社の株式会社ハークスレイは東証スタンダード市場に上場しているのだが、ほっかほっか亭単体での事業展開や企業戦略は、外からはなかなか見えづらいところがある。

このたび、同社のSNSを中心とした広告・宣伝戦略を仕掛けた飯沼俊彦氏(株式会社ほっかほっか亭総本部 取締役)に話を聞くことができた。そこから、広告・宣伝にとどまらない、ほっかほっか亭の秀逸な事業戦略が見えてきた。

――飯沼さんは、2024年4月から同社に来られているとのことですが、取締役としてヘッドハンティングされたんでしょうか?

いえ。入社から何回か昇進を経て、最終的に2025年4月に現在の取締役になりました。青木達也が社長に就任して以来、人事改革が行われ、外部から多くの人材を招聘しています。私もその流れで、昨年ほっかほっか亭に来ました。

青木は、業績を上げた人は、社歴や年齢にかかわらず、どんどん昇進させるという方針の人事戦略を取っています。

――異例の昇進の速さですが、どのような活動をされ、どのような実績を上げられたのでしょうか?

私がやったことの1つは、広告・宣伝戦略をSNS中心に組み替えたことです。西山先生がお書きになっていた、料理研究家のリュウジ氏とのコラボもそうですし、エイプリルフールネタもそうです。他には、SNS上のクレームコメントに1つひとつ返信するという地道な活動も行っています。

こうした取り組みの結果、ほっかほっか亭からの投稿だけでなく、顧客自身の投稿、つまりUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)も急増しています。

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株式会社ほっかほっか亭総本部 取締役の飯沼俊彦氏(写真左)と筆者(写真:筆者提供)

「ほっかほっか亭ってまだあるんだ」がバズった

われわれが重視しているのは「ファンの育成」です。SNSで顧客とコミュニケーションするだけでなく、スマホアプリ「ほっかアプリ」を導入したり、自社独自のポイントサービス「ほっかポイント」を運用開始したりもしています。

SNSをプロモーション戦略の中核に据える一方で、スポンサーシップやアニメとのコラボレーションなどで効果が上がっていないものは打ち切りにするなどの効率化を行いました。

その結果、広告費を大幅に削減しながら、効果は向上という成果を得ることができました。

――私も、2024年くらいから御社がSNSでよく話題になっているのを目にしています。一方で、都内で暮らしていると、お店が近くにないという問題もあります。

そういえば、Xの一般ユーザーが「ほっかほっか亭ってまだあるんだ」という投稿をしていて、それに公式アカウントから返信されていたのが大きな話題になっていたこともありましたね。

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自虐的な返しがバズり、その後、Xユーザーたちが「自分の街」のほっかほっか亭を挙げていく展開に(写真:ほっかほっか亭公式Xアカウントより)

ほっかほっか亭の店舗の大半はフランチャイズ店ですが、フランチャイズ契約の関係で、西日本を中心とする展開とならざるをえません。

また、中食(なかしょく)市場自体は右肩上がりで成長していますが、いまはコンビニエンスストアで手軽に弁当が買えますし、弁当屋チェーン間の競争も激しい状況です。既存のスタイルでは、なかなか成長できない時代になっています。

店舗戦略という点では、小規模の店舗を多く出店する戦略をとり始めています。店舗を小さくする限り、メニューを絞ってオペレーションを効率化するという対応をしています。

特に力を入れているのが「ワンハンドBENTO」で、主食もおかずも片手で食べられる弁当を開発しています。

大阪・関西万博でもワンハンドBENTOの限定商品を販売していますが、大好評で1日200万円を売り上げています。ワンハンドBENTOは今後、空港や駅などの人流の多い場所に出店することで、購入機会を増やしたいと考えています。

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大阪・関西万博で販売している「ワンハンドBENTO」(写真:ほっかほっか亭提供)

ほっかほっか亭が運営する「コインランドリー」

もう1つ重視しているのが、「カスタマイズ」です。お客さんが自分でおかずやごはんを組み合わせて注文できる、「カスタマイズ弁当」を近畿エリアの一部で展開してきましたが、9月から東日本の店舗でも販売を開始しています。

まだ全国に1店舗しかありませんが、「トリコバーガー」というクラフトハンバーガーショップも展開しています。

実は、弁当事業以外の新規事業も強化しています。成功している事業に、コインランドリーがあります。すでに弊社のコインランドリー「Wash&Shine!(ウォッシュアンドシャイン)」の店舗数は102店に達しています。

――コインランドリー事業とは意外ですが、お弁当販売事業とのシナジーはあるのでしょうか?

実は、シナジーはたくさんあるのです。

コンビニエンスストアは市場が飽和している一方で、競争が激しいため、撤退する店舗も多いのですが、その跡地を買い取って、ほっかほっか亭の店舗にしています。ただ、弁当販売だけだと店舗が大きすぎて持て余すので、土地の半分を弁当店にして、残り半分をコインランドリーにしています。

つまり、お弁当屋にコインランドリーを併設させているのですが、土地の有効利用以外のメリットもあります。

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ほっかほっか亭の店舗に併設されたコインランドリー「Wash&Shine!」(写真:ほっかほっか亭公式サイトより)

店舗数は減っているが、売り上げは向上

コインランドリー事業も競争環境は激しいのですが、利用者の人が重視するのが、清潔さ、衛生です。多くのコインランドリーは無人店舗で、当社の運営するコインランドリーも無人店舗なのですが、ほっかほっか亭の店員が清掃などの管理を行っているので、実質的に有人店舗になっているといえるでしょう。

食品会社が運営するランドリーとして衛生面に力をいれ、年1回全店で細菌検査を行っています。この点で、他のランドリーに対する競争優位を実現しています。

業態は違っているように見えますが、ほっかほっか亭もWash&Shine!も、お客様の家事の軽減に貢献するという点では共通しています。

――既存のお弁当事業だけでなく、新規事業も多数手がけられていることに驚きました。こうしたイノベーションを実現するうえでの秘訣や、会社内で取り組まれていることを教えてください。

特に重視しているのが、組織改革とスピードです。たとえば、組織横断でAIを活用するチームを編成し、収益性の向上を実現しています。

出店予測にもAIを活用しています。どの場所に店舗を出すと収益性が高いのかを、AIを活用して予測を行うことで、出店戦略の精度を上げることに成功しています。

店舗数自体は減っていますが、店舗当たりの売り上げが高まっており、全体としての売り上げは向上しています。

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1980年の創業当時のほっかほっか亭店舗(写真:東洋経済写真部)

ほっかほっか亭の今後のSNS戦略

ほっかアプリでの情報配信に関しても、AIを活用して顧客データを分析したり、投稿時間や投稿内容の最適化を図ったりしています。顧客の位置情報に合わせた配信も行っています。

SNSのクレームコメントにも1つひとつ返信, 「ほっかほっか亭ってまだあるんだ」がバズった, ほっかほっか亭が運営する「コインランドリー」, 店舗数は減っているが、売り上げは向上, ほっかほっか亭の今後のSNS戦略

(写真:筆者提供)

弊社は食材にこだわっており、原価率が非常に高いのですが、質を落とすわけにはいきません。そこで、人件費を抑える、無駄をなくす。店舗戦略を最適化するといった効率化を図ることで営業利益を高めるという方法を取っています。

ただ、人件費を抑えるといっても、給与を下げるのではなく、セントラルキッチン方式を導入して調理時間を短くする、調理しやすい店舗づくりをする――といった工夫をしています。

店内調理という、ほっかほっか亭の競争優位を維持しながら、利益を確保する工夫をしているのです。

――SNSやメディアで話題になる裏側では、さまざまな経営努力をされていることを実感しました。最後に広告・宣伝の話題に戻りますが、今後はどういう展開をされる予定ですが?

これまで、他企業やインフルエンサーとのコラボレーションを多数行ってきましたが、これまでの「協調型」に加えて、「対決型」のプロモーションも考えています。これまでにない展開になると思いますので、ご期待いただけたらと思います。