「月300時間労働→残業削減」ラーメン店が転換の訳

目標残業時間、有給休暇取得率を経営計画書に明記, 「残業を減らすけれど、給料は増やす」取り組み, 残業時間削減は健康経営の実践になる, LINEで生活習慣の指導も, 社長が社員の健康管理を促す必要性

(写真:『全世界100店舗!売上10倍!社員定着率85%!すごい!ラーメン凪の仕組みと人づくり』より)

ラーメン店の仕事というと、「朝早くから深夜まで働く、超ブラックな仕事」というイメージを持つ人がいます。人気ラーメン店「すごい!煮干ラーメン凪」などを展開する株式会社凪スピリッツジャパンの生田悟志社長も、かつてはそのような働き方が社内に蔓延していたと振り返ります。
ですが、同社の直近の残業時間は月8時間。生田社長の著書『全世界100店舗!売上10倍!社員定着率85%!すごい!ラーメン凪の仕組みと人づくり』より飲食店の残業削減のポイントを紹介します。

目標残業時間、有給休暇取得率を経営計画書に明記

創業当時は、寝ずに仕事をし続けたことがありました。創業して間もないころに入社したメンバーたちが、休みなしで働いたマンパワーのおかげで、ある程度の規模までこれたことは否定しません。

【写真】かつては月300時間労働、徹夜だったことも…実際のラーメンはこんな感じ

ですが現在の凪は、「労働時間は減らし、給与は増やす」ための働き方改革を進めています。

なぜなら、スタッフが幸せでないと、お客様を幸せにすることができないと気づいたからです。

経営計画書の「経営方針」「内部体制に関する方針」「社員に関する方針」のなかで、労働時間と休日に関するルールを明記しています。

労働時間は、総合職の場合、1カ月が31日の月は177時間、30日の月は171時間、28日の月は160時間が規程で、これに30時間の固定残業時間がプラスされます。ただし、残業時間は、毎月10時間以下を経営目標として掲げており、コツコツ削減に取り組んで、2025年2月に8時間になりました。

目標残業時間、有給休暇取得率を経営計画書に明記, 「残業を減らすけれど、給料は増やす」取り組み, 残業時間削減は健康経営の実践になる, LINEで生活習慣の指導も, 社長が社員の健康管理を促す必要性

(画像:『全世界100店舗!売上10倍!社員定着率85%!すごい!ラーメン凪の仕組みと人づくり』より)

ベテランのマネージャー、小林敦は、創業時と現在の凪の違いの1つに「就業規則の遵守」を挙げています。

「創業時は、本当に休みがなくて夜中まで働く会社でした。ですが現在は休みを取らずに仕事をしていると、『なんで月に5日しか休めていないの? 最低でも月に8日は休まないと』と生田に注意されます。飲食業界はどこも人手不足で、『休め』とはなかなか言いにくい状況です。『週1日で休めればいいほう』という飲食店も多いなかで、凪は『月5』で怒られるのですから、労働環境は大きく改善していると思います」(小林敦)

かつてラーメン店は、「飲食業界のなかでも特に労働環境が悪い」と言われていたことがありました。凪は、そんなラーメン業界のなかでも「あの会社はヤバい」と話題に上がるほど、労働環境が整っていない状態でした。

「残業を減らすけれど、給料は増やす」取り組み

ですが、今は変わりました。当時を知るエリアマネージャー、大里健太郎も、凪の変化の1つに、労働環境、労働条件を挙げています。

「以前は月に300時間働くこともありました。月300時間働いて、仮に手取りが20万円だとすると、時給換算で約666円です。『時給に換算すると666円か。正直、やってられないな』という声が社内に蔓延していました。ですが現在の凪は、『残業を減らすけれど、給料は増やす』ための取り組みをしています」(大里健太郎)

ここで大きな役割を果たしているのが、環境整備と経営計画書です。

環境整備は生産性を上げる取り組みです。同じ仕事が短い時間でできるようになることで、働く時間が短くなるだけでなく、店舗では回転数の増加にもつながります。また、業務改善も進みます。

さらに、経営計画書で、残業を減らす方針を打ち出しているため、残業が多いと方針違反で評価が下がります。評価を下げたくないから、残業が減り、残業が減ると経費削減になります。

目標残業時間、有給休暇取得率を経営計画書に明記, 「残業を減らすけれど、給料は増やす」取り組み, 残業時間削減は健康経営の実践になる, LINEで生活習慣の指導も, 社長が社員の健康管理を促す必要性

(画像:『全世界100店舗!売上10倍!社員定着率85%!すごい!ラーメン凪の仕組みと人づくり』より)

一方で、残業が減ると残業代による収入が減るため社員から反発があることも予想されます。ですが、お客様増によって増えた売上、残業が減ったことによって削減された経費で、残業時間を短くしても、給料を増やしていくことは可能です。

残業時間の削減は計画的に取り組まないと、安定して減らすことはできません。経営計画書に方針として打ち出すことは残業削減の実現に不可欠です。

残業時間削減は健康経営の実践になる

私が残業時間削減にこだわっているのは、過重労働が社員の健康を蝕むからです。そこには個人的な理由もあります。

私は父を病気で早くに亡くしているため、「健康こそ最高の財産である」と考えています。

父が亡くなったのは48歳。私自身、年齢を重ねていくごとに、その歳までしか生きられないんじゃないかといった、強迫観念に近いものを抱えています。

ですから、健康維持にはものすごくこだわっているし、社員たちにもそれを強く求めています。経営計画書には、「健康に関する方針」として、「社員の心と体の健康を第一とする」と明記し、社員の健康維持、健康増進のための取り組みを進めています。

社員には年1回健康診断の受診を義務づけており、健康診断個人票を作成して5年間総務が保管。必要に応じて、医師や専門家から助言をいただき、栄養指導、運動指導、生活改善指導を実施しています(「健康診断を受診しないスタッフには賞与を支給しない」と経営計画書に明記しています)。

また、禁煙手当もつくり(勤務時間外も含めて完全禁煙が条件)、社員が健康でいられるよう、あらゆる手を使っています。

LINEで生活習慣の指導も

さらに標準体重を上回っている社員には、LINEで体重を報告させ、「もっと歩くように」などと、生活習慣について指導しています。体重管理については、かなり細かく、スパルタで指導します。

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(画像:『全世界100店舗!売上10倍!社員定着率85%!すごい!ラーメン凪の仕組みと人づくり』より)

毎日体重を報告させるのは、いわゆる「レコーディングダイエット」(記録をとることによって改善する手法)です。特に体重が多い人は、やれば必ず成果が出ます。でも、皆、自主的にはやらない。自分の健康のためになるのに、です。凪の最大の資産は人材です。だから、強制的にやらせます。

とはいえ、中には健康状態を悪くする社員もいます。そんなときは、仕事より健康優先です。

「出勤をしようとしたら、立てなくなりました。動いたら嘔吐するような状態で、頭がぐるぐるまわって、診断の結果は『前庭神経炎』でした。妻に『働けなくなってしまった』と話しているうちに、情けなくて涙が出てきました。当時は、自分が担当する新店のオープンを控えていて、精神的に参りました。

そうしたら、生田からオープンを遅らせるから、とにかく休めと言われて、1カ月くらい完全に休みました。しかも、その間に給料をいただいて、とてもありがたかった。社員の健康のために新店出店を延期する。そんなことをしていただける会社、普通はないと思います。現在は凪を離れて、ちゃんのれん組合の一員として自分のお店を持っているのですが、社員時代のあのときのことは、感謝してもしきれません」(大曽根悠二郎・味のともちんファミリー)

「食事とか生活習慣にまったく無頓着で、なんとなく体調が悪いなと思っていたら、仕事中に脳梗塞になってしまいました。幸いにも大里がこれはおかしいと気づいて、すぐに病院に行くことができて、3カ月で復帰しました。

そうしたら、生田の方から負担のかからない部署に異動させてくれて、直近でA評価になり、賞与もいただきました。3カ月も会社に穴をあけていたので、正直賞与はもらえないものだと思っていて、感動しました。今も定期的に血糖値などの報告をLINEで送っています」(花山慎治・新規出店部本部長)

目標残業時間、有給休暇取得率を経営計画書に明記, 「残業を減らすけれど、給料は増やす」取り組み, 残業時間削減は健康経営の実践になる, LINEで生活習慣の指導も, 社長が社員の健康管理を促す必要性

(画像:『全世界100店舗!売上10倍!社員定着率85%!すごい!ラーメン凪の仕組みと人づくり』より)

社長が社員の健康管理を促す必要性

健康状態は、社員の個人情報です。ですが、私は社長が社員の個人情報を把握し、健康管理を促すことは必要だと考えています。

凪のスタッフたちは、皆ただの「労働力」ではありません。大事な「人財」です。私は、人を大事にしたいと思っているし、社員は家族だと思っているから、彼らの健康管理にまで踏み込んでいます。