【タイ】EV価格3割低下で急成長[車両] 税制優遇策が奏功=工業省副次官
タイで電気自動車(EV)市場が急成長しているのは、減税や補助金などの税制優遇政策で販売価格が25~30%下がったことが要因——。今月東京を訪れた、タイ工業省のパサコーン副事務次官がNNAなどのインタビューに応じ、このような見方を示した。今後は、タイ国内でEVの生産台数を拡大させつつ、輸出促進も図る方針だという。また、EV以外にも半導体産業に関する振興策の現状と展望についても語った。【堀江恵】

東京都内で開催されたシンポジウムに登壇する、タイ工業省のパサコーン副事務次官=12日(NNA撮影)
ドイツの統計サイト「スタティスタ」やタイ工業連盟(FTI)によると、タイのバッテリー式EV(BEV)の新規登録台数は2020年に2,999台だったが、25年1~11月は12万9,044台に達し、EV市場は5年近くで約43倍と大きく拡大した。税制優遇などの需要喚起策が実行されただけでなく、パサコーン氏は「供給側に対しても、最大11年間の法人税減税や原材料の輸入税免除といった生産促進策を講じてきた」と述べた。その上で、これらの政策により「EVの販売価格が25~30%押し下げられている」と語った。
工業省は今後、タイを東南アジア諸国連合(ASEAN)域内のEV生産拠点とするために、国内のEV生産能力向上に注力する。現在は、税制優遇などの恩典を付与する条件として、EV輸入台数と同等の台数を現地で生産する「1対1」を求めているが、段階的に「1対3」へ引き上げる計画だ。

一方で国内の自動車市場が落ち込んでいることや、中国系EVメーカーの年産能力が計画も含めると合わせて数十万台に上るなど、生産過剰が懸念されている。これに対しパサコーン氏は、「現時点では需要が上回っている」との見解を示した。ただ、将来的には供給過多になることも視野に入れ、輸出促進策として1台の輸出に対し生産数を1.5台に換算する優遇措置を講じているという。また、生産計画に満たなかった場合は、補助金の支払いを留保するなどの対策も検討していると説明した。
■半導体は「前工程」の誘致を強化
EV産業の誘致に成功したタイがさらに産業の高度化を進める鍵として、パサコーン氏は半導体産業の強化を挙げた。タイの強みは、組み立て、検査、パッケージングなどの「後工程」にある。ただ、マレーシアやシンガポールといった近隣諸国に対抗するには、集積回路(IC)設計や回路形成を担う「前工程」の産業誘致が重要だと指摘する。
パサコーン氏は「現在、半導体開発のための基盤整備を進めている」として、今後はタイ投資委員会(BOI)と連携し、専門人材の育成や研究開発(R&D)への支援を強化する方針を示した。EV産業のみならず、ロボティクスやデータセンターといった成長産業の誘致も促進するという。

■東京都内のシンポジウムに登壇
パサコーン氏は今月12日、東京都中小企業振興公社が主催するシンポジウム「日タイ産業連携の新展開」に出席し、タイの経済や市場状況、政府が注力する産業について基調講演を行った。同国の国際競争力を高めていくためには「産業構造そのものを改革していく必要がある」と述べ、主に◇バイオエコノミー◇ヘルスケア・医療◇農業・食品◇防衛◇BCG(バイオ・サーキュラー・グリーン)——産業を中心に、日本の中小企業との連携に対する見方を示した。
タイはキャッサバやサトウキビ、米、パーム油といった農産資源が豊富で、同国政府はそれを活用したバイオエタノールやバイオシリカをはじめとするバイオ分野の開発・生産に力を入れている。パサコーン氏は、ASEAN地域にアクセスしやすい地理的な優位性などもタイの強みだと説明し、「日本にはオンリーワン技術がある。タイの資源を活用してもらい、世界の不確実性にウィンウィンな関係で対応していきたい」と連携に期待を寄せた。
パサコーン氏は、タイの製糖最大手ミトポン・シュガーや日本の化学メーカー、ダイセル(大阪市)など日タイ大手企業の幹部らとともにパネルディスカッションにも参加した。タイのバイオ産業について具体的な事例が紹介される中、日本企業との連携の可能性について意見を交わした。
シンポジウムは都内の会場とオンラインで開催され、タイへの進出を検討する日本企業や地方自治体・政府関係者など約160人が参加した。