「ゼッテリア」マック超えの脅威となりうるワケ

馴染みのあった「ロッテリア」は、全店舗が「ゼッテリア」に置き換えられる。写真は、都内のゼッテリア店舗(写真:筆者撮影)
1月21日、外食大手のゼンショーホールディングスは、ハンバーガーチェーンの「ロッテリア」が3月をめどに国内全店を閉店し、「ゼッテリア」に順次転換することを発表した。
【写真】ロッテリアより高くなった…「だけどうまい」《ゼッテリア》のランチメニューを試してみた
ロッテリアのブランドは、日本での54年の歴史に幕を下ろすことになるが、SNSでは「ゼッテリアって何?」「どうして変わるの?」といった、疑問の声が出ている。
ゼッテリアは、2023年9月に東京・田町に第1号店がオープンした。それ以降、ロッテリアの店舗は徐々にゼッテリアに転換しており、局所的に話題にもなっていた。ここにきて、公式に全店舗の転換を発表したのはなぜなのだろうか?
背景にある、運営事業者の状況と、ハンバーガー市場の動向を中心に読み解いてみたい。
「ゼッテリア」とはいったい何なのか?
まず、ロッテリアが名称変更をしなければならない経営上の事情について整理しておきたい。
23年2月、牛丼チェーン「すき家」、回転寿司チェーン「はま寿司」などを展開するゼンショーホールディングスの100%子会社である株式会社ゼンショーファストホールディングスが、株式会社ロッテリアの全株式を取得することを発表した。
それ以降、ゼンショーの傘下でゼッテリアがオープンし、徐々にロッテリアからの転換が進んでいた。
なお、ゼッテリアはロッテリアの看板メニューの「絶品バーガー」を主軸に展開しており、店舗の名称も「絶品バーガー」と、気軽に楽しめる店の意味を込めた「カフェテリア」を組み合わせたものだ。
ゼッテリアの店舗に行っても、そのような説明書きが随所で見られ、新たな店名の浸透を図っていることがうかがえる。

トレイに敷かれたチラシでは「続々OPEN!」の文言とともに、店舗名の由来が説明されている(写真:筆者撮影)
店舗には明示されていないし、企業側も表明してはいないが、筆者としてはゼッテリアの名称は、運営会社の「ゼンショー」の頭文字にも掛けられているのではないかと考えている。
ちなみに、筆者が最初にゼッテリアの存在を知ったのは、25年3月に大阪を旅行していた際、道頓堀で店舗を見かけたときだ。目にしたときは、関西人のシャレで名前を変えたのかと思っていたのだが、後で調べてみて、上記のような理由があることを知った。
「ロッテリア」を使い続けられない理由
「店名を変えた」と言っても、「ロ」を「ゼ」に変えただけであるし、ロゴ、メニュー、店舗デザインなどを見ても、ロッテリアから継承している部分は多い。
ブランド名の変更にはリスクもあるし、津々浦々に浸透させるにはコストも時間もかかる。ロッテリアのままではダメなのだろうか?
乳酸菌飲料の「カルピス」はカルピス株式会社が製造、販売を行っていたが、現在はアサヒ飲料に買収されており、カルピス株式会社は同社の子会社として、主に乳製品事業を行っている。買収されても、飲料の「カルピス」のブランドは存続し続けている。
ロッテリアの場合もカルピスの事情と似ているのだが、ブランド名に「ロッテ」という旧親会社のブランド名を冠している点、韓国においてはロッテリアが強いブランドとして存続し続けているという点において異なっている。
事業主体が変わった以上、「ロッテ」を含むブランド名を使用し続けることは支障があるし、こういったケースでは株式譲渡の際にそのような契約になっていることが多い。
たとえば、「餃子の王将」と「大阪王将」は、別の会社(「大阪王将」が「餃子の王将」からのれん分けをして独立した)だが、「大阪王将」の元従業員が「(厨房に)ナメクジ超大量発生してます」などと虚偽投稿を行った際に、「餃子の王将」にもクレームが入ってしまった。
名前が似ているだけでもこうした問題が起きることを考えると、別会社が同じブランド名を使用すると、多くの支障が出てくることが想定できる。

「ロッテリア」に似ているような……転換当初は戸惑う人が続出したゼッテリア(写真:筆者撮影)
「中途半端な改名」ではない、“巧みな戦略”
「名前を変えざるをえない」のは不可避の事情があったとしても、「継続性を担保する」という点については、戦略に基づいて判断していると考えられる。
ゼッテリアは、ロッテリアと比べて「絶品バーガー」を主軸に据えて高付加価値化、高価格化を図っている点と、スイーツやドリンクなどのカフェメニューが充実している点に特徴があるが、まさにこの点が新店舗の「戦略」になるだろう。
ハンバーガーチェーンに限らず、外食産業は、
・原材料高とそれに伴う値上げ
・競争環境の激化
という問題を抱えている。
日本のハンバーガー市場は拡大傾向にあり、主要企業が相次いで運営体制を変更している。
「バーガーキング」は出店が加速する中で、さらなる拡大を企図して金融大手のゴールドマン・サックスが日本事業を買収した。
また、「ドムドムハンバーガー」を運営するドムドムフードサービスは、事業領域の拡大を目指してMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣が参加する買収)を実施した。
ゼンショーによるロッテリア買収とゼッテリアへの店舗転換も、そうした流れの中で位置づけられるだろう。
また、ハンバーガーチェーン各社は、原材料高で値上げを余儀なくされているだけでなく、各社は価格以外の新たな価値を創出していく方向に活路を見出そうとしている。
筆者もゼッテリアに行ってランチメニューを試してみた。
ロッテリアのランチメニューより価格は高く、「マクドナルド」の「ひるまック」と同価格帯だが、ハンバーガーの肉は厚くておいしいし、落ち着ける雰囲気もあり、価格に見合った満足度は得られた。
なお、店には平日の13時過ぎに行ったが、ほぼ満席だった。

筆者が1月中旬に訪れた都内店舗のランチメニュー(写真:筆者撮影)

筆者が注文したのは、イチオシの「絶品ビーフバーガー」のランチセット(税込み790円)。肉厚で満足感が得られた(写真:筆者撮影)
ロッテリアのよいところは残しつつも、時代に合わせて変えるべきところは変え、新たな価値を創出していこうという戦略性が、ゼッテリアにはあるように筆者には感じる。
ハンバーガー店が「カフェ市場に進出」するメリット
カフェメニューの充実という点に関しては、すでにマクドナルドが実施して、成功を収めている。マクドナルドは、ドリンクやスイーツメニューを充実してカフェ需要を取り込んでいる。
筆者は年末年始にイタリアへ行ったのだが、イタリアのマクドナルドでも同様の展開がなされていた。フードとカフェのカウンターが分かれていて、カフェでは、多様なドリンクとスイーツが提供されていた。

イタリアのマクドナルド(写真:筆者撮影)

世界各国、安定した美味しさを提供。写真はイタリアのマクドナルドで注文したチーズバーガーのセット(写真:筆者撮影)
コロナ禍で、職場や学校、あるいは自宅以外の場所で仕事や勉強をする習慣が世界的に根付いていったが、その最適な場所を提供したのが、カフェであったと見ることができるだろう。
日本以外の国・地域においてスターバックスが苦戦しているが、その要因の1つとして、ファストフードチェーンがカフェメニューを展開し、価格とフードメニューで優位性を発揮しているという状況もある。
ハンバーガー事業とカフェ事業の相性は必ずしもよさそうには見えないが、食事の時間以外に、カフェメニューで顧客を取り込むことで、店舗と店舗スタッフを有効に稼働させることができるし、幅広い顧客層を取り込むことも可能になる。
その点で、ハンバーガー事業とカフェ事業は相互補完の関係にあると言えるだろう。
「マクドナルド」にも対抗しうる可能性
ちなみに、ゼンショーホールディングス傘下のすき家でもコーヒーやスイーツメニューを展開しており、好評を博しているが、店舗のつくりや業態から見て、カフェのようにゆっくり過ごすのは難しい。
ハンバーガー店で展開したほうが、店舗側にも顧客側にもメリットは大きいように思える。
さらに言えば、ゼンショーは25年3月期決算で売上高が1兆1366億円を達成し、国内の外食企業として初めて売上高が1兆円の大台を超えた超大手企業で、経営体力もある。
高品質・高価格化とカフェ市場の強化は、マクドナルドでもとられている戦略ではあるが、ゼンショーの外食産業のノウハウと経営体力をもってすれば、ハンバーガー業界のトップに君臨してきたマクドナルドにも十分に対抗しうる可能性がある。
日本の外食チェーンは、質、価格、サービスのあらゆる面で世界最高峰にあると言っていいが、ハンバーガー市場においても、今後、本家アメリカ以上に進化を遂げていきそうだ。