食料品「消費税ゼロ」でお客が逃げちゃう…焼肉店の切迫感 円安や人件費高騰、外食産業は今でもキツいのに
〈政策の現場から 衆院選2026〉
衆院選が2月8日に投開票される。さまざまな問題に直面する暮らしの現場を訪ね、政策の課題を探る。
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8日投開票の衆院選で、大半の政党が消費税の減税に言及している。負担感の強い税金だけに、中でも与野党が掲げる「食料品の消費税ゼロ」を歓迎する声は少なくない。一方で外食産業は客離れと負担増の「ダブルパンチ」を危ぶむ。(石井紀代美、鈴木太郎)
◆2025年の倒産は過去最多の900件
「相当な危機感があります。外食産業全体がしぼんでしまうんじゃないかと」
営業前の明かりが落ちた東京都内の焼肉店で、脇野富士夫社長(64)が険しい表情を浮かべた。食料品の消費税ゼロで、経営が圧迫されると強調する。

食料品の消費税0%は「外食産業に大打撃を与える」と語る脇野富士夫社長=東京都世田谷区の「太樹苑 下北沢店」で
外食産業を取り巻く状況はおしなべて厳しい。帝国データバンクによると、2025年の飲食店事業者の倒産件数は900件に上り過去最多を更新した。
そこに食料品の消費税ゼロが重なれば、内食と外食の税負担差は10%にもなる。消費者の内食志向が強まると予想され、脇野さんは「スーパーで肉を買って、家で焼いて食べる人など、外食離れも一定程度進むだろう」と覚悟する。
◆「配慮が行き届いた制度設計を」
食材の仕入れ負担が減らない懸念もくすぶる。税率が引き下げられた分が、そのまま仕入れ価格に反映されて下がればいいが、脇野さんは「そうなるとは思えない」。「生鮮食品、特に肉は飼料などの輸入コストの上昇で上がり続け、人件費も高騰している。仕入れ価格は下がりませんよ」と考えているからだ。
脇野さんは渋谷区や世田谷区など都内で計8店舗を運営する。新型コロナ禍で落ち込んだ売り上げは戻っていない。食材の高騰だけでなく人件費もかさむ。円安によるエネルギー価格上昇もコストを押し上げる。

食料品の消費税0%は「外食産業に大打撃を与える」と語る脇野富士夫社長=東京都世田谷区の「太樹苑 下北沢店」で
外部環境が厳しい中で飛び出した消費税論議。チームみらいを除く各党が減税・縮小を訴えるが、裏付けとなる財源確保などの議論は深まっていない。脇野さんは「外食は、日本の多様で豊かな食文化や街の風景を形作っている大切な礎。ぜひ国民的議論の場で配慮が行き届いた制度設計をしてほしい」と願う。
◆準備も大変「早めに周知してほしい」
減税の恩恵を受ける食料品店にも悩みはある。東京都足立区のスーパー「さんよう」取締役の阿部芳邦さん(51)は「減税するのであれば、早めに周知してほしい」と訴える。

値札付きの食料品が並ぶスーパーの売り場=東京都足立区のスーパー「さんよう」で(石橋克郎撮影)
最も気を使う作業が値札の書き換えだ。税率が変更になる商品の値札を一つ一つ替える必要がある。仕入れと並行しての準備は骨が折れるという。食料品の軽減税率8%が適用された時は、総額表示の義務化などへの対応が「結構な準備だった」と振り返る。
買い物客の受け止めもさまざまだ。同区で1人暮らしの男性(79)は「年金暮らしには、食品消費税ゼロになるのはありがたい」と歓迎。女性(73)は「消費税をゼロにしても他の所から財源を持っていかないといけない。社会保険料の負担など総合的に考えてほしい」と訴えた。
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