CES 2026が映し出した、AIのリアルと未来の姿とは

「AI First Lounge Vol.04」の様子

AI First Approach(AI前提)、AI First Line(AI最前線)、AI First Step(AI活用の第1歩)という3つの「AI First」を軸に、AIの未来に関してワクワクとリアルの両面から情報を届け、ユーザーや企業と濃いコミュニティを形成するためのイベント「AI First Lounge」。

1月16日に開催されたVol.04の前半では、「CESが映し出す、AIのリアルと未来」と題し、ギズモード・ジャパン編集部とBusiness Insider Japan/Tech Insider編集部が取材した「CES 2026」を報告。後半は本イベントを協賛した日本マイクロソフトとの特別セッションで、Copilot in Microsoft 365 の使い方について解説した。

ギズモード・ジャパン編集部の取材メンバーがCES 2026で注目したもの

撮影:今村拓馬

セッション1のテーマは「CES 2026で感じた、ワクワクする未来」。ギズモード・ジャパン編集部の西谷茂リチャード、中橋勇進、陳セージの3人が、世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」で注目したものを紹介した。

中橋が挙げたのはロボット掃除機。ロボット掃除機の「部屋がきれいじゃないと動けない」「2階に上がれない」という2つの課題に対する提案が見られたという。

例えば、掃除機にロボットアームが備えられ、邪魔になるものを掴んでは指定の場所に置きにいく。2階に行くために、掃除機がクローラー付きの親機に乗る、あるいはドローンで飛ばすという解決策が見られたという。

中橋が「1番完成形に近い」と感じたのはRoborockの「Saros Rover」で、掃除機に付いた2本のホイールレッグで階段を上っていくことで、階段を一段ずつ清掃できるのも特徴だ。「AIの進化によって、僕らが理想としていたロボット掃除機に近づいた」と語っていた。

ちなみに中橋は世界最大の球体型エンターテインメント施設「Sphere(スフィア)」も体験したという。4:3のアスペクト比で作られた過去の映画を、Sphere用にAI生成でアップスケールしたものを鑑賞したが、いかにもAIで作られた動画に大喜びする観客の姿を見て複雑な思いを抱いたそうだ。

撮影:今村拓馬

西谷が注目したのはヒト型ロボット。今回は「実用性と量産性が見えてきた」と感じたという。例えば、ボストン・ダイナミクスの新型ロボット「Atlas(アトラス)」は、製造やメンテナンスがしやすい簡素化された関節を採用。人間の形はしているものの、関節が360度回転するなど人間にはできない「合理的な動き」をする。

「人間と同じ形だけど人間を超越した動きや関節になって、ロボット開発が成熟してきた」との印象を語っていた。

CESでさまざまなガジェットを見てきたセージが、特に印象に残ったものとして挙げたのが、スマートグラス、超小型スマホ、Rolling Squareの「Await」というデジタルトイカメラの3つだ。

撮影:今村拓馬

Venous Eyewearの「Magic Palm」というスマートグラスは翻訳やAIチャットが可能でありながら、見た目は普通のメガネで非常に軽量。スマートグラス関連の機能はテンプル部分に搭載されているので、普段使っているメガネのテンプルをこれに交換してもらえばスマートグラスになる。

超小型スマホにはQWERTYキーボードケースを利用できるものもあり、「BlackBerryのファンは絶対好きだと思う」と語っていた。

トイカメラのAwaitはカラフルなパーツを交換でき、撮影した画像はスマホを介して自動でアップロード。24カット分撮影すると、画像のダウンロードや印刷ができるという。ブースが盛況で、興味を持っている人が多いことに驚いたそうだ。AIやデジタルとは逆の市場も存在感を高めている例として紹介された。

西谷は、CES 2026は「ハードウェアとソフトウェアの両方の側面で実用性に向かっていっているAI」だったとまとめてセッションを締めくくった。

熟練者が見たCESは『ストレンジャー・シングス』の世界!?

撮影:今村拓馬

セッション2は、「AIと経済、未来は本当に明るいのか」というテーマで、ギズモード・ジャパン総編集長 尾田和実と、Business Insider Japan ニュース編集長 伊藤有がCES 2026を振り返った。

CESを取材するのは2020年以来となる尾田は、機内Wi-FiでNetflixの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』を視聴したせいで、CESとストレンジャー・シングスの世界がシンクロしたという。

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』は、1980年代の米インディアナ州の田舎町を舞台にしたSFホラードラマ。少年たちの失踪や超常現象、裏側の世界(アップサイド・ダウン)の怪物との戦いを描く。2016年に配信が始まり、シーズン5の第8話(2026年1月1日配信)で完結した。

「ストレンジャー・シングスでは、“現実の世界”に対して、謎の存在『マインド・フレイヤー』が統治している“裏側の世界”というひとつ上の構造がある。これが今のインターネットおよびAI業界を見事に表していると思った。

撮影:今村拓馬

AIの、いわゆるバーチャルの世界を作っているGAFAMの世界や、NVIDIAが世界の秩序(ワールド・オーダー)を作っている上位構造の世界がある。そういうことと、ぴったりとシンクロする。時差ボケでそんなことを考えました(笑)」(尾田)

CESの展示では、「ARグラス」が「見る気をなくすぐらい」大量に展示されていたことを紹介。「ARグラスをかけるとネットの世界とつながる。ストレンジャー・シングスとシンクロして、普通の世界が一瞬で裏の世界に変わってしまうような状態になった」(尾田)という。

ロボットも数多く展示されていた。尾田が目にしたロボットの中には、海洋調査用のカメ型ロボットやツボ押しロボットもあった。ツボ押しロボットには「少し恐怖を感じた」そうだが、「繊細な動きができるのには感心した」と語っていた。

ロボット関連では「フィジカルAI」という言葉を最近よく見かけるようになったと語った伊藤。

撮影:今村拓馬

「フィジカルAIは、リアルな世界の動きをシミュレーションする。例えば物体を落としたらどう動いて、どう影響するかなど、世の中の物理法則を再現できるAI。それがロボットに活かせると考えられている」(伊藤)。

それが尾田には、ストレンジャー・シングズの「裏世界と現実世界が融合し、両世界を接続させる怪物」に見えたという。

AIやデジタル以外では、Clicksのスマホ用キーボードが話題になっていたことを紹介した。

「ストレンジャー・シングスでは、少年たちがトランシーバーやレコード、ウォークマンといったローテクな武器で裏世界と戦う。こじつけですが、CESでもそうしたものが意外と受け入れられている、価値が再発見されていた感じ。レトロや郷愁といった話ではなくて、『これでいいじゃん』感、『これがむしろ未来だろう』感が新たな潮流として出てきた」(尾田)

一方、CESは20回以上取材しているという伊藤はスマートグラスについて、「技術的な洗練が極限まで来ていて、できることがもう決まっているような状態。だからさまざまな中国系メーカーが競っている。今後の差別化要因はデバイスそのものではなく、裏側で動いているAI」だと指摘した。

「スマートグラスは価格まで含めて普及レベルまで来ている。2025年の時点で、あるスマートグラス某企業のCEOは、日本の報道関係者からの質問を翻訳ができるグラスを使ってリアルタイムで翻訳させて回答していた。それくらいのレベルで実用的になっている」(伊藤)

ロボットについては、ボストン・ダイナミクスの技術力の高さを賞賛していた。CES 2026はロボットの技術レベルを一望できるイベントでもあったが、長年ロボットを研究してきたボストン・ダイナミクスは他社と段違いのレベルだったという。

「昨年のCES 2025では、NVIDIAがフィジカルAIをクローズアップした結果、中国のメーカーも、フィジカルAIの『身体』としてのヒューマノイドロボを素早くキャッチアップしたと思う。ものづくりはパワーがあればできる。

けれど、ボストン・ダイナミクスとの差を見ると、ソフトウェアはそう簡単に追いつかないんだということがよく分かる。ソフトウェア開発は蓄積が必要で、外観だけ同じようなものを作ってもボストン・ダイナミクスのレベルに急には届かない。ここに大きな差がある」(伊藤)

ヒューマノイドロボット元年と言われているが「少し俯瞰して見た方がいい」と指摘した。

撮影:今村拓馬

また伊藤は、CESで注目したものとしてロボタクシーの「ZOOX」を挙げた。実際に一般公道を走るZOOXに乗ったが怖さはまったく感じなかったという。

最近はEVに逆風が吹いているが、「アメリカ市場のなかでロボタクシーが進化している。Waymo、Uber、ZOOX、Teslaとプレイヤーが出てきて既に競争になっている。本当に普及するところまで行く可能性がある」と語っていた。

Microsoft 365 の Copilot 活用法を紹介

撮影:今村拓馬

セッション3のテーマは「マイクロソフトと学ぶ、Copilot 最大活用術」。Copilot および Microsoft 365 の活用事例について、普段から使用しているギズモード・ジャパン編集部の綱藤公一郎と、Tech Insider編集チーフの小林優多郎が具体例を紹介した。また、日本マイクロソフト Microsoft 365 戦略本部 シニアカテゴリーマネージャーの酒井淳大氏に、Copilot の活用方法を解説してもらうとともに自身の使い方も紹介してもらった。

撮影:今村拓馬

小林は Outlook で Copilot の「カスタム指示」を使ってメールの返信文を作る方法を紹介した。発表会開催のメールに出欠確認を返信する際に活用しているという。カスタム指示は、回答する内容やトーン、形式などを事前に設定し、カスタマイズできる機能。毎回同じプロンプトを入力する手間を省き、効率が上がる。酒井氏は「業務効率化に直結した使い方」と評価していた。

ちなみに酒井氏は海外とのやり取りが多く、英語の微妙な言葉選びや文章のトーンで悩んだときに Copilot に助けてもらっているそうだ。

小林は、Word に自分の取材メモを読み込ませ、Copilot で記事の叩き台を作ってもらう使い方も紹介した。Word には「エージェントモード」が搭載されており、Word ファイルが直接編集されていくのが特徴だ。

酒井氏は、「過去に作った同様の文章を読み込ませることで、新しい文章を作る時間がかなり短縮できる。作った文章を Copilot にチェックしてもらうことで、誤字脱字などをチェックできる」と解説した。

撮影:今村拓馬

自作キーボードや電子工作を趣味としている綱藤は、部品の在庫管理のために Excel で在庫管理シートを作成したという。しかし綱藤は Excel に苦手意識を持っており、関数も SUM しか分からないとのこと。

一方、Excel に内蔵された Copilot は Excel の全てを知っている。使い方や関数について Copilot に聞けば必ず答えてくれ、表を直接操作して指示してくれる。綱藤は Copilot に教えられた通りに操作することで、プルダウン表示や、在庫が少ない部品をカラースケールで赤く表示するといったことも簡単にできたという。Excel の標準機能では難しいグラフ作成のために、Python のプログラムコードを提示する機能も紹介した。

「『今ある部品の在庫から、配布するキットが何セット作れるか計算する列を作って』といった指示を出すと、Copilot が表を分析して解説と同時に「列を挿入」ボタンも表示される。これを押すだけで、列のタイトルや複雑な関数の数式が瞬時に入力される。初めて使った時は本当に衝撃的でした」(綱藤)

Copilot が Excel の知識を補い、これまで Excel を使いこなせず「もったいない」と感じていた Microsoft 365 Personal のサブスクリプションが、「相対的にコスパが良くなった」と感じるようになったと綱藤は語っていた。

酒井氏は「 Excel が苦手な人ほど自然言語で指示を出せる Copilot を使ってほしい」と勧めた。作業自体は Copilot に任せ、自身はデータ分析など「その先の作業」に注力すべきだとし、ツールの操作方法を学ぶことよりも、データを見て分析する統計的な知識が今後より重要になると強調した。

撮影:今村拓馬

最後に酒井氏は自身の Copilot 活用方法を紹介した。酒井氏は、アメリカ本社の上司の指示で「 TED トーク風プレゼン」をすることに。やったことのない英語での TED 風プレゼンを Copilot に相談したという。

まず、プレゼンの元ネタとなるプロジェクト概要、進捗情報、今後の展開といった情報を Copilot に読み込ませ、「 TED 風の構成案を考えてほしい」とリクエスト。Copilot からは、構成案と TED 風にするための重要なポイントが箇条書きで提示された。例えば「1スライド1メッセージに絞る」「黒の背景色で赤のタイトルを使うと TED 風」「 What ではなく Why を問う」といったスライド作成のアドバイスを受けたそうだ。

スライドができた後は、最終チェックも Copilot に相談。論理が破綻していないか、ストーリーや言葉遣いに一貫性があるかなどをチェックしてもらった。酒井氏によると「聞いても聞いても改善ポイントは出てくる」そうだ。

スライドが完成したら、次はプレゼンの準備。話す際のスクリプト原稿を作ってもらうため、自分が作った PowerPoint のデータを Copilot に読み込ませ「 TED 風の原稿を作ってほしい」とリクエストした。スライドごとにエピソードに沿った原稿が用意され、「原稿を作る時間も大幅に削減できた」と振り返った。

撮影:今村拓馬

プレゼンの練習も Copilot の助けを借りた。Copilot は音声でのやり取りも可能なので、音声機能を立ち上げて「プレゼンの練習をしたいから、自分のプレゼンを聞いてフィードバックして」とリクエスト。すると、聞き終わった後に話すスピードや抑揚、英単語の発音についてアドバイスしてくれたという。

全段階で Copilot が『伴走者』として手伝ってくれる。作業的な部分は Copilot に任せ、自分自身はより創造的な活動に力を注いでいただくといいのではと考えています」(酒井氏)

なお、紹介した Copilot の機能は Microsoft 365 のサブスクリプション契約をしているユーザーであれば誰でも使える。昨年末から順次発売されている、Microsoft 365 Personal(24 か月)が搭載されている Surface などのパソコンでも利用可能だ。

イベント会場ではマイクロソフトのPC「 Surface 」などを展示。Copilot を実際に使ってみることが可能となっていた。

BABY THE COFFEE BREW CLUB

住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-31-21 東急プラザ原宿 ハラカド 3F

instagram: baby.thecbc