残念ながらほとんど意味がありません…ホリエモンがキッパリ断言する「健康診断前」のあるある習慣

堀江貴文氏 写真提供:メディカルレビュー社
年1回の健康診断で安心していないだろうか。その健診の直前だけ体調に気を使い、検査結果に一喜一憂しているようでは、「健康を何もわかっていない」と堀江貴文氏は喝破する。大切なのは、365日間継続してデータを測定する習慣だという。ホリエモン流「医療費を減らすための予防医療」とは?※本稿は、『予防医療How Much? 病気のリスクをお金の価値で考えてみた』(堀江貴文/著、メディカルレビュー社)の一部を抜粋・編集したものです。
「健康診断前」のサラリーマンあるあるに
ホリエモン「何にもわかってないな」
サラリーマンの読者は会社から言われて、1年に1回の健康診断を受けているだろう。それ以外の職種の人も、多くは地方自治体が提供する定期健診や自費の人間ドックで、自分の健康状態を確認していると思う。かく言う僕も1996年に起業して以来、ずっと年1回の人間ドックを欠かしたことがない。
健康診断の日が近づくと、まわりでこんな会話を耳にすることはないだろうか。
「もうすぐ健康診断だから、体調に気をつけないと.……」
「1週間後の健康診断まで禁酒だ」
こういう言葉を聞くと、僕は「健康のことを何にもわかってないな」と思ってしまう。
大多数の人は、血圧や血糖値などの数値やAからEの総合判定に一喜一憂していると思う。そのために、直前になって、急に食事や生活習慣を改めたりするのだろうが、それは無駄でしかない。仮にそういった直前の「努力」で、健康診断の数値が少し良くなったとしても、それは残念ながらほとんど意味のないことだ。
健康診断の数値は検査当日のあなたの体の状態を示しているだけであって、それ以上に重要なのは長期間にわたる体の状態の変化なのだ。「健康診断は同じ医療機関で継続して受診してください」と言われるのは、そういった理由による。
そんな状況の中で、スマートウォッチの限界を超える健康管理のデバイスがあるとの噂を聞き、開発者である奈良県立医科大学MBT研究所の梅田智広研究教授に話を聞いた。
梅田研究教授が開発したのが、電力センサーを利用した「ライフスタイルセンシング」というシステムだ。
家庭の分電盤に電力センサーを設置。家電の電力使用データからライフスタイルを可視化して、変化の予兆を察知して健康管理や生活習慣の改善を促すというもの。
1分ごとにデータを取るので、家電の利用がほぼリアルタイムにわかり、住んでいる人がテレビを見ているのか、外出しているのか、寝ているのかなどが予測できる。
医学と工学の両方の知識を持つ梅田研究教授は、生活習慣の乱れを早期に発見して改善を促すには、どんなデータを取ればいいのかを試行錯誤した末、電力センサーによるライフスタイルセンシングにたどり着いたという。センシングとはセンサーによって測定対象を計測して情報を取得する技術のことだ。
家電の電力データが
生活習慣を映し出す鏡に
「これまでも冷蔵庫やエアコン、電気ポットなど個別にセンサーを付けてデータを取るもの、ガスや水道のメーターを使うものなどがありましたが、いずれもスポット的なデータでした」(梅田研究教授)
取得した電力データは、エアコンやテレビなどの「生活系」、電子レンジや冷蔵庫などの「食事系」、洗濯機や掃除機などの「活動系」に分類し、発生頻度や実施時間帯などをAIが分析。「夜中に冷蔵庫を開けるようになった」「電子レンジを使う時間が毎日違う」など、健康管理や生活習慣の乱れの把握などに活用できる(図43)。

同書より転載
「生活、食事、活動に分類した電力データを100点満点でスコア化し、規則正しく健康的な生活を送っているほど高い数字が出ます。スコアの乱高下が激しいと、高齢者の場合、フレイルや軽度の認知症が疑われます。家族や主治医、介護関係者などで情報を共有することで、生活習慣の改善を促すことができます」(梅田研究教授)
心拍数や歩数などのバイタルデータの代わりに、家での家電の使われ方(電力データ)をモニタリングすることによって、健康管理をしていくというわけだ。電力センサーには分電盤から電力が供給されるので、バッテリー切れの心配がない。スマートウォッチの課題である充電の問題からも解放される。
ウェアラブル端末のデータ収集は
抜けがありじつは精度が高くない
健康管理に必要なデータの収集について検討していた当初は、梅田研究教授もスマートウォッチの活用を念頭に置いていたそうだ。しかし、結果は失敗。梅田研究教授が奈良県で300人にウェアラブル端末でバイタルデータを取る実証実験を行ったところ、3カ月で70%の人が脱落。
1年経過して継続しているのはたった10%未満に終わった。加えて、入浴時や睡眠時に外してしまうなど、24時間継続したデータが取れないこともデメリットになった。
「ウェアラブル端末のデータは抜けが多いんです。特に高齢者の場合はITに拒否反応を持つ人が多く、使い慣れていないので、自分で連続してデータを取ることは現実的ではありませんでした。隙間だらけのデータでは、精度が低い診断になってしまい、使い物になりません」
梅田研究教授は当時を振り返って、こう語る。
「そこで考え付いたのが、電力データのモニタリング。これなら、対象者は何もしないでいい。365日抜けのない電力データとスポット的に取ったバイタルデータを組み合わせることで、その人の健康状態を正確に把握できるようになったのです」
梅田研究教授もスマートウォッチの欠点を十分に理解していたわけだ。それにしても、1年365日、途切れることのない健康管理のデータが取れるというのは、物凄い強みだ。
梅田研究教授の言うように、このデータに健康診断や病院での検査の数値を組み合わせれば、最強の健康管理データになると思い、思わず興奮した。
健康診断に関しても、梅田研究教授は明確な考え方を持っていた。
「年1回の健康診断とライフスタイルセンシングによる通年データは、例えてみれば、静止画と動画の違いです。直前に体調を整えて受けた健康診断の結果は静止画として残りますが、その日の結果でしかないので、その後に病気が見つかると、『去年の健康診断では何も問題もなかったのに……』ということになります。
健康診断は、過去に遡って時系列で判断することが大事。グレーゾーンの数値が出た場合に、それが悪い症状である黒が薄まってグレーになったのか、それとも健康で真っ白だったものがグレーになったのかを知ることが重要です。
ライフスタイルセンシングは動画のように、通年の連続したデータが蓄積されているので、健康状態の変化が手に取るようにわかるのです」
僕の考えと全く同じだ。
バイタルデータを継続的に記録し
行動を追跡することが重要
医学界は検査の適正数値ばかりでなく、健康診断や人間ドックの数値を継続して記録し、それを比較・評価する「バイオロギング(編集部注/バイオロギングとは野生動物に小型の記録計(データロガー)を装着し、その動物の行動や生態を継続して記録する調査方法のこと)」の重要性をもっと知らしめるべきだと思う。
経済産業省が2016年に、約1000人の糖尿病軽症者と予備軍を対象に行った調査(編集部注/「経済産業省におけるヘルスケア産業政策について」における「健康・医療情報を活用した行動変容促進事業(平成28年度事業の結果)」より)がある。
調査の内容は以下の通り。対象者に対して、1年間にわたり、歩数、活動量、体重、血圧などの数値を日常的にモニタリングしつつ、定期的に糖尿病の診断基準として使われるHbA1c(ヘモグロビンA1c)(編集部注/血液中のヘモグロビンのうち、糖と結合しているものの割合を測定した数値のこと)の数値を計測して、その変化を追跡するというものだ。比較対象として、そういった情報がもたらされないグループも用意し、定期的にHbA1cの推移を記録した。
結果はバイタルデータを提供されたグループは、提供されなかったグループよりHbA1cの数値が0.4も下がったという(図44)。

同書より転載
バイタルデータの見える化(意識化)による病気予防・改善の効果が数値化されたというわけだ。やはりスマートウォッチやライフスタイルセンシングは、意味のあることなのだ。
生活習慣病を防ぐことが
生涯医療費を安く済ませる近道
画期的な研究に出会った。それは東北大学大学院の辻一郎教授の研究で、「生活習慣と健康診断の数値が、その人の平均余命と生涯医療費にどのように影響を及ぼすのか」というもの。
結論としては、喫煙、肥満、歩行時間、飲酒に関して良好な生活習慣を持ち、血圧、血糖、脂質に関する健康診断の数値が良い人ほど、平均余命が長く、生涯医療費が安く済むというものだった。
例えば、血圧が正常な人は高血圧の人に比べて、平均余命が1.7年長く、生涯医療費は375万8000円少ない。血糖値が正常な人は高血糖の人に比べて、平均余命が2.1年長く、生涯医療費は82万9000円少ない。脂質の数値が正常な人は脂質異常の人に比べて平均余命が2.7年長く、生涯医療費は15万7000円少ない(図46)。

同書より転載
生活習慣病の人は3つの数値がすべて悪い場合が多いから、死ぬまでに医療費を474万4000円も損する可能性がある。こんな大金の支出をスマートウォッチや電力データのモニタリングで防げるとしたら、とてもお得と思うがいかがだろうか。

『 予防医療How Much?病気のリスクをお金の価値で考えてみた 』(堀江貴文、メディカルレビュー社)