好きなことをやらない生活は耐えられない…「年金60万円」「資産6053万円」「家業の年収360万円」の節約できない70代おひとりさま。6年で1953万円溶かし、すがった都合のいいお金の増やし方

高齢層の資産の実像, 事例1:施設入居も想定…年金153万円・70代夫婦の現金の移し先, 「不動産」は取り崩しや組み換えがしづらい, 地方都市に住む60代の「8人に1人」が、「土地はあるけど、金融資産がない」, 事例2:支出を抑制できず、「高リスク運用」に走る70代女性, 米国株高に救われたが…「運用益」頼みの資産運用は危うい

(※写真はイメージです/PIXTA)

資産寿命を延ばすには、資産を分散し「お金に働いてもらう」必要があります。しかし、ただ資産運用すればいいものではありません。たとえ運用で儲けても、その先を見据えていない場合、資産運用が失敗に終わってしまう可能性も……。野尻哲史氏の著書『100歳まで残す 資産「使い切り」実践法』(日本経済新聞出版)より、70代夫婦と70代シングル女性の2つの事例をとおして、老後の資産運用の明暗を分けるポイントをみていきましょう。

高齢層の資産の実像

高齢層の資産の実像をご紹介します。株式会社マネーライフプランニングのお客様の事例です。

事例1:施設入居も想定…年金153万円・70代夫婦の現金の移し先

70代の夫婦で、金融資産2000万円と不動産1800万円強で総資産は3800万円に達しています。ただ不動産は奥様のお姉さまとの共同名義になっていることから、現金化は簡単ではありません。そのため、金融資産だけを対象にアドバイスを行います。

80代前半までの勤労収入として年間96万円程度見込めるうえ、公的年金も夫婦2人で153万円受け取っています。そのため80代前半までの年間収入は250万円程度となります。これに対して、支出を推計し、年間収支を計算すると70万〜80万円の黒字を確保できるとみています。

そのため現状で資産の取り崩しの必要はないとの判断です。10年程度引き出す可能性が低いことから、扱いの難しい共同名義の不動産以外の資産の配分を見直します。

運用資産は海外物を中心にして、外国株式(51%)、外国債券(20%)の比重を高めています。その一方で、現預金は29%と3割ほどに抑えています。

高齢層の資産の実像, 事例1:施設入居も想定…年金153万円・70代夫婦の現金の移し先, 「不動産」は取り崩しや組み換えがしづらい, 地方都市に住む60代の「8人に1人」が、「土地はあるけど、金融資産がない」, 事例2:支出を抑制できず、「高リスク運用」に走る70代女性, 米国株高に救われたが…「運用益」頼みの資産運用は危うい

[図表1]70代夫婦の相談当初/相談後のポートフォリオ 出所:株式会社マネーライフプランニング

85歳から有料老人ホーム入居を想定(入居一時金521万円、年間入居費246万円)すると、年金収入(153万円)との差額にその他の生活費用も考え、年間170万〜180万円の取り崩しが必要になると推計しました。

ただ、それまでの10年程度は取り崩しが必要ないため、全資産平均収益率3%で運用できれば、85歳の時点で資産は34%強増えています。その後も、平均運用収益率を3%と想定すると、年間170万〜180万円を引き出していっても100歳まで資産寿命を延ばすことができる計算となります。

「不動産」は取り崩しや組み換えがしづらい

この事例では相談当初のポートフォリオには不動産が入っていましたが、金融資産だけに限定してアドバイスをしている点がポイントといえそうです。

不動産の現金化はなかなか簡単ではなく、特に「この場合には名義が姉妹の共有になっていることが将来、課題を残すことになりそうだ」と考えて、ライフプランはそれを除いたベースで想定しています。

ちなみにその後、共同名義人のお姉さまが亡くなられて、この方が相続されたとのこと。今後はこの土地もポートフォリオに入れて考えやすくなります。

地方都市に住む60代の「8人に1人」が、「土地はあるけど、金融資産がない」

実際、セミナーなどでは「土地は退職後の資産と考えていいのか」とよく聞かれました。私の回答は非常にシンプルで、「部分売却できるのであれば、退職後の生活資産として考えていい」というものでした。

ただ、現実には部分売却できる不動産はなかなかありません。土地・家屋を一度売却して、その土地・家屋に賃貸として住み続ける「リースバック」や、自宅を担保にお金を借り入れて生活費にする「リバースモーゲージ」といった制度もありますが、すべての不動産がそうした対象となるわけではありません。

なお、実際「土地はあるけど、金融資産がない」という方も一定数いらっしゃいます。「60代6000人の声」アンケート(2025年)では、「保有する資産は土地だけで取り崩しを行っていない」と回答した人が593人、資産があると回答した人の12.2%となりました。8人に1人くらいの割合でそうした人がいるというわけです。

事例2:支出を抑制できず、「高リスク運用」に走る70代女性

70代のシングル女性です。8年前に初期の相談を受けました。その際には、金融資産が3553万円で不動産が2500万円、合計で資産は6053万円とのことでした。

子どもに継がせた家業からの年間収入は360万円あり、これに年金60万円を加えると収入はかなり多いのですが、支出も多くて年間収支は130万〜150万円の赤字になっていました。

ただ、支出を抑制しましょうというアドバイスはなかなか受け入れていただけませんでした。

6年後の再面談のときには総資産は金融資産4100万円に減少していました。ただ、それでも「今しかできないこと、好きなことをやらない生活は耐えられない」と考えていらっしゃって、「支出の抑制はどうしてもできない」とのことでした。

そのため運用で儲けようとの意識が強く、86%を外国株に投資するポートフォリオを選択されていました。

高齢層の資産の実像, 事例1:施設入居も想定…年金153万円・70代夫婦の現金の移し先, 「不動産」は取り崩しや組み換えがしづらい, 地方都市に住む60代の「8人に1人」が、「土地はあるけど、金融資産がない」, 事例2:支出を抑制できず、「高リスク運用」に走る70代女性, 米国株高に救われたが…「運用益」頼みの資産運用は危うい

[図表2]70代女性の8年前/2年前のポートフォリオ 出所:株式会社マネーライフプランニング

米国株高に救われたが…「運用益」頼みの資産運用は危うい

ライフプラン・アドバイスで最も難しいのは、支出のコントロールだといわれています。

事例2の場合には、「子どもが継いでいる家業があるので自分の生活資金は大丈夫」という思いが強く、その結果、「運用資産は儲かったら引き出して使いたいことに使う」という姿勢に軸足を置くことになっているようです。資産活用という冷静なアプローチができないことが課題の本質にあるようです。

ちなみに、直近は3000万円ほど保有していた米国の高配当株が2倍に値上がりしたとのこと。しかしその間も支出の抑制は全くできておらず、資産総額は横ばいにとどまったそうです。結果的には、米国株の上昇に支えられて過分な支出はカバーされたわけですが、もし相場環境が厳しい局面だったらどうなっていたでしょうか。

ただ今年は地方に移住をされる予定とのことで、これで支出の抑制が見込めれば幸いかもしれません。

野尻 哲史

合同会社フィンウェル研究所

代表

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