ロボアドで資産運用、最も優秀なのは?主要5社の過去7年間の成果を徹底検証!

AI(人工知能)を活用して、顧客に合った投資診断や投資アドバイス、運用などを行うロボアド(ロボット・アドバイザー)。10年ほど前から各社が続々と参入しているが、実際の成績はどうなのか。主要5社を徹底検証してみた。
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製造現場におけるFA(ファクトリー・オートメーション)に続き、オフィスでも定型業務を省力化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が導入されるようになり、様々なシーンで「自動化」が進められてきた。さらに現在では、人間の代わりに答えを導き出すAIまで身近な存在となってきている。
資産運用の世界も然りで、日本でも2016年の後半から続々と登場し始めたのがロボアド(ロボット・アドバイザー)だ。高度な金融工学に基づくアルゴリズムを用い、個々の投資家のニーズやリスク許容度などを判断材料に理想的な資産配分や投資先の組み合わせを自動的に導き出すというサービスだ。その登場に前後し、フィンテック(金融×IT)という言葉も一世を風靡した。
■運用をすべてお任せにできる「投資一任型」
ロボアドには「アドバイス型」と「投資一任型」の2タイプがあって、あくまで前者は配分や組み合わせの提案までにとどまる。これに対し、後者は利用者とサービス提供者が「投資一任契約」を結び、実際の運用もロボアドに一任する。
この「投資一任契約」自体は、日本版金融ビッグバン(金融業界における規制緩和)の一環として1998年から解禁されていた。だが、顧客に代わって運用を担うのは生身の人間(高額の人件費がかかるプロ)であったため、最低投資額も相対的に高めに設定され、門戸を広く開放したものではなかった。
つまり、ロボによって自動化することで、従来よりはるかに低コストで「投資一任型」のサービスを提供できるようになったわけだ。しかも、いくつかの簡単な質問に回答するだけで自分に適したポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)が判明して運用もすべてお任せになるので、投資に関しては完全なシロウトでも気軽に利用できる。
これらのメリットに注目し、今まで投資とは無縁だった人たちの資金も続々と流入し、「投資一任型」のロボアドは右肩上がりで預かり資産残高を拡大させてきた。もっとも、「投資を自動化したサービス」であることは共通していても、各社で運用の中身には少なからず違いがあるはずで、これまでの実績にも差が生じているのではないだろうか?

■5社の5コースの実績をそれぞれ比較してみると…
そこで、「投資一任型」のロボアドにおける主要5社の通信簿を作成してみることにした。主要5社とは、残高でトップを独走中の「ウェルスナビ」と、最古参サービスの一つである「THEO(テオ)」、楽天証券の独自サービスである「楽ラップ」、マネックス・アセットマネジメントが手掛ける「ON COMPASS」、SBIグループ傘下のフォリオが提供する「おまかせ投資」だ。
パフォーマンスの検証期間は、5つの中で最もスタートが遅かった「おまかせ投資」(2018年11月2日〜)と条件を揃えるため、2018年12月末〜2025年12月末の過去7年間とした。プロによる公平で専門的なジャッジが求められるので、検証作業は投資信託などの評価分析を手掛けるウエルスアドバイザー投資顧問部長の武石謙作さんに委ねた。
調査対象は「ウェルスナビ」と「おまかせ投資」が全5コースで、「楽ラップ」は全9コースのうち「下落ショック軽減機能(DRC機能)」の付いていない5コース。「THEO」は全228コースの中からリスク水準に応じて5つ選択し、「ON COMPASS」は全8コースを武石さんがリスク水準に応じて5コースに分類し直したうえで、それぞれのサービスにおけるリターンとリスクの実績値を比較した(①の一覧表)。
すると、判明したのは実に単純明快な結果だった。5コースのいずれにおいても、「ウェルスナビ」の累積リターンがトップで、2位が「おまかせ投資」となったのだ。リスク水準1とリスク水準2のカテゴリーでは、以下の順位(3位:THEO、4位:楽ラップ、5位:ON COMPASS)にも変化がなかった。
リスク水準3では「ON COMPASS」が4位になり、「楽ラップ」が5位に転落。さらに、リスク水準4とリスク水準5では「ON COMPASS」が3位に浮上し、他のリスク水準では3位だった「THEO」が4位に甘んじた。

■「ウェルスナビ」と「おまかせ投資」が特に優秀!
言い換えれば、リスク水準が高くなるほど、「ON COMPASS」が獲得した累積リターンは大きくなっているのだ。武石さんは指摘する。
「逆に、リスク水準1とリスク水準2では、『ON COMPASS』のリターンが他のロボアドと比べてかなり低くなっています。各社が公表している想定リスクの数値(②の表)と見比べると、『ON COMPASS』は最も低くなっていました。リスクを抑制した運用を行えば、おのずと期待できるリターンも低くなります」
①の表中の「リターン/リスク」はリターンをリスクで除した数値で、投資信託の評価に用いられるシャープレシオという指標の簡易計算版だ。この数値が高いほど、取ったリスクに対して得られた超過リターンが大きく、効率的な運用が行われていると評価できる。
武石さんいわく、概ね1を超えていれば及第点で、リスク水準1の「ON COMPASS」と「楽ラップ」の低数値が気になるが、それらもリスクを抑えた保守的な運用がもたらした結果と推察される。
「保守的な運用の場合は為替ヘッジ(為替変動リスク回避操作)を行っているケースがあります。7年間で40円超も円安が進んだだけに、結果的には為替ヘッジを行わないほうが良好なリターンとなりました」(武石さん)

やはり、いずれのリスク水準においても簡易計算版のシャープレシオが最も高かったのは「ウェルスナビ」で、2位が「おまかせ投資」だった。③のグラフは、リスク水準1とリスク水準5において5つのロボアドがどの程度の最大上昇率・最大下落率(年間)を記録したのかを表したものだ。

■上位2社は金(ゴールド)にも投資していたことが奏功
当然ながら、下落率が低くて上昇率が高いというのが望ましい状態で、リスク水準1とリスク水準5のどちらについても相対的に「ウェルスナビ」と「おまかせ投資」が優秀だったと言える。これら2つが好調だった背景としては、どんなことが考えられるのか?
「検証期間中における資産別の累積リターンを見てみると、金(ゴールド)と米国株式が特に高いパフォーマンスを記録していました(④のグラフ)。5つのロボアドはいずれも米国株式に投資しているものの、ゴールドも組み入れているのは『ウェルスナビ』と『おまかせ投資』だけでした。正確に言えば、『THEO』も組み入れていたのですが、原油などといった他のコモディティ(商品市場)も対象としていたので、その分だけリターンが伸びなかったのかもしれません」(同)
「ウェルスナビ」はノーベル経済学賞受賞者の「現代ポートフォリオ理論」に基づいた国際分散投資を実践している一方、「おまかせ投資」はAIによって金融市場の動向を予測しながら機動的に配分の見直しを図っているという。これまでの運用状況を振り返る限り、こうしたセールストークは伊達ではないと言えそうだ。
「とはいえ、いずれのロボアドも手数料負担分を差し引いたうえで、1〜5のすべてのリスク水準においてプラスのリターンを記録しています。リスク水準に応じて、リターンも高くなっているという点も共通しています」(同)

⑤のグラフは、今回の検証期間中に毎月3万円ずつ積み立て投資を行っていた場合のシミュレーション結果だ。1位と5位では軽視できない差が生じているものの、5つのロボアドとも「続けていてよかった!」と実感できる結果が出ている。
今回の調査で実力を見せつけた格好の「ウェルスナビ」は、今年2月25日にその預かり資産残高が1兆9000億円を突破し、2兆円の大台乗せも射程圏内に入ってきた。他社もそれに追随して健闘しているし、ロボアドは個人の身近な資産運用ツールとしてさらに定着しそうだ。
(金融ジャーナリスト・大西洋平)
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