【米国市況】株下落、原油高と半導体規制案で-ドル上昇157円台半ば

(ブルームバーグ): 5日の米金融市場では株式相場が反落。原油価格の上昇に加え、米政府が人工知能(AI)半導体の輸出に許可を必要とする規制案を検討しているとの報道を受けて、半導体銘柄が売り込まれた。

  ニューヨーク原油先物は大幅続伸し、1バレル=80ドル台で引けた。

  米利下げ観測の後退で国債利回りは上昇。ドルは値上がりし、対円では一時157円台後半で推移した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6830.71-38.79-0.56%
ダウ工業株30種平均47954.74-784.67-1.61%
ナスダック総合指数22748.99-58.49-0.26%

  S&P500種株価指数は前日の上昇分の大半を消した。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は1.2%安。エヌビディアは一時2.8%下げたが、結局上昇して引けた。

  米当局は、米国の承認なしに世界のいかなる場所にもAI向け半導体を出荷することを制限する規制案を作成した。事情に詳しい複数の関係者によると、提案されている規制は、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などが製造するAIアクセラレーターのほぼ全ての輸出について、米国の許可取得を企業に義務付ける内容となる見通しだ。

  米国・イスラエルとイランの軍事衝突は6日目に入ったが、収束の兆しは見られない。イランは米国に対する攻撃をエスカレートさせる意向を表明した。

  先週の米新規失業保険申請件数は前週比で横ばいとなり、労働市場が安定しつつあることを裏付ける数字となった。

  6日に公表される2月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が5万5000人増と、1月の13万人増からの伸び鈍化が予想されている。1月は予想外に強い数字だった。2月の失業率は横ばいの見込み。

  インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は、「インフレが想定以上に強まるリスクが、投資家の期待する速いペースでの利下げを妨げる可能性があるか、ウォール街は見極めを進めている」と話した。

  JPモルガンのアンドリュー・タイラー氏率いるマーケット・インテリジェンスデスクは「雇用統計は強ければ強いほど望ましい。エネルギー価格の上昇に伴い、インフレ期待が高まっているためだ」と指摘。「弱い数字となれば利下げ観測は強まるだろうが、短期的にはスタグフレーションに陥るリスクがある」と述べた。

  リッチモンド連銀のバーキン総裁は米国・イスラエルとイランの戦争について、米金融当局の対応はその影響が米経済にどの程度の期間及ぶかに左右されるとの考えを示した。

  モルガン・スタンレーのセリーナ・タン氏らストラテジストは、原油価格の上昇は株式と債券の相関関係が再び崩れるリスクを高めると指摘。ただし、債券は引き続き株式リスクの分散手段になり得るとの見方を示した。

  「原油高が長期化し、成長率を押し下げる一方でインフレを押し上げるようであれば、2021-23年のように株式と債券が同時に売られる局面が再来する可能性がある」と述べた。

米国株は反落、戦争リスク意識

国債

  米国債は4営業日続落。原油価格上昇でインフレが再燃するとの警戒が続いた。

国債直近値前営業日比(bp)変化率  
米30年債利回り4.75%1.90.40%
米10年債利回り4.14%4.00.99%
米2年債利回り3.58%3.10.88%
米東部時間16時28分

  利回りは全年限で上昇。金融政策に敏感な2年債の利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して3.59%と、1月以来の高水準。4営業日間の上げとしては2024年10月以来の大きさとなった。10年債利回りは2月以来の高い水準となった。

  インフレ期待の高まりを背景に、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測は後退。金利スワップ市場では、2026年の利下げ幅を40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)未満と織り込んでおり、先週末時点の60bpから縮小した。

  ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏は、紛争が今後数週間で解決に向かうと仮定すれば、原油価格の急騰は一過性のものとなり、ブレント原油は先物カーブの水準である1バレル=65ドル前後まで下落する可能性が高いと指摘。

  「原油価格がより高い水準で落ち着くようであれば、10年債利回りには明らかに上昇圧力が続く」と述べた。

  オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニアポートフォリオマネジャー、ノア・ワイズ氏は「短期的には、原油価格の上昇は債券利回りの上昇につながる」と指摘。「FRBにとって状況が複雑になる」と話した。

  RJオブライアンのマネジングディレクター、ジョン・ブレイディー氏は「市場ではきょう、経済指標は材料視されない」と指摘。「中東での戦争拡大やエネルギー市場動向が引き続き焦点になっている」と述べた。  

米2年債利回り、原油高につれて上昇

外為

  外国為替市場では、ドルが主要10通貨に対して全面高。ブルームバーグ・ドル・スポットは一時0.6%上昇。

  ドル対円では0.5%高の1ドル=157円85銭まで買われた。

為替直近値前営業日比変化率  
ブルームバーグ・ドル指数1204.304.440.37%
ドル/円¥157.53¥0.470.30%
ユーロ/ドル$1.1604-$0.0030-0.26%
米東部時間16時28分

  米国みずほ証券のデリバティブトレーダー、佐野繁男氏はイラン情勢について、長引けばドル買い・円売りが続くことになると予想。ドル・円は「上昇基調に戻りつつある。160円をもう一度試しにいく展開とみている」と述べた。

  また、米国債の利回り曲線がベアフラット化していることは「教科書的な動きで健全だ」と指摘。

  一方で、日本国債の利回り曲線がベアスティープ化していることについては「米国に比べて懸念要因が多いためだ」と分析。例として、食料品の消費税減税や補正予算の先行きを巡る不透明感や、ホルムズ海峡経由の原油輸入が約80%に上り、経済への影響が他国より大きいなど、不確実性が増していることを挙げた。

  ドル指数はこのままいけば、週間では約3年ぶりの大幅高となる勢いだ。米国によるイラン攻撃で逃避需要が高まったことが背景にある。市場はドル上昇が続くか見極めようと、6日発表の雇用統計に注目している。

  マネックスの為替トレーダー、アンドリュー・ハズレット氏は「経済指標の重要性が、今回の紛争前と比べて低下しているわけではない」と指摘。「労働関連の数字は最近、比較的堅調だ。あす発表の非農業部門雇用者数でもこの傾向が続けば、ドルはさらに上昇すると見込んでいる」と述べた。

  コーペイのチーフマーケットストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「強い結果となれば、タカ派方向のリプライシングが一段と強まり、最近のドル上昇が続くだろう」と指摘。「為替市場への影響は非対称的だ。主要通貨の中では、円やユーロ、ポンドがとりわけ新たな売り圧力にさらされやすい」と分析した。

  TDセキュリティーズの通貨ストラテジスト、ジャヤティ・バラドワジ氏は、「市場が年内の利下げを考えるには、非農業部門雇用者数が非常に弱い数字になり、失業率は上昇する必要があるだろう。足元では紛争とインフレ懸念が焦点となっている」と話した。

ドル・円の推移

原油

  ニューヨーク原油先物は大幅続伸。20カ月ぶりの高値に押し上げられた。中東での戦争長期化について、市場の織り込みが進んでいる。

  トランプ米政権はイランでの戦争に起因する価格上昇に対処するため、幅広い選択肢を検討していると明らかにした。原油価格はこれを受けて、引け後に上げ幅を縮小した。考えられる措置としては、戦略石油備蓄(SPR)の取り崩しや、米財務省による原油先物の購入が含まれる。

  中国政府は国内製油大手に対し、ガソリンと軽油の輸出を停止するよう指示した。原油需要の9割を中東に頼る日本では、石油元売り会社が政府に石油の国家備蓄の放出を要請した。クウェートは製油所3カ所の処理能力を落とした。

  イスラエルを含め中東各国は5日も、イランからのミサイルやドローンを迎撃した。カタールは住民に外出の自制を要請した。イランはペルシャ湾で石油タンカーを攻撃したと発表。エネルギーが豊富な中東で航行の安全が一段と危ぶまれている。

ホルムズ海峡の航行状況 | 船舶の往来はほぼゼロに

  フィリップ・ノバのシニア・マーケット・アナリスト、プリヤンカ・サシデバ氏は「原油タンカーや石油インフラ、あるいは障害が長引く場合、価格はまた急上昇する可能性がある」と述べた。

  ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによれば、ホルムズ海峡の船舶航行は95%以上減少し、大型原油タンカーや液化天然ガス(LNG)運搬船はこの航路を迂回(うかい)している。今でも航行している数少ない船舶は、紛争地域で一般的な慣行である位置情報のトランスポンダーをオフにした状態で、ペルシャ湾岸地域を出港している。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は、前日比6.35ドル(8.5%)高い1バレル=81.01ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は4.9%上昇し85.41ドル。

  ニューヨーク金相場は反落。ドルの堅調が金に下押し圧力を加えたほか、中東での戦争が6日目に入り、収束の兆しが見えないことから、金融緩和の観測が後退した。

  金スポット価格は米国時間に一時1.7%下落。エネルギー価格高騰に起因するインフレ懸念で、ドルと米国債利回りが上昇した。インフレ高進は連邦準備制度理事会(FRB)に金利の据え置き、あるいは利上げを促す可能性がある。

  金利スワップ市場では年内の利下げを約35ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)織り込んでいる。先週末の時点では60bpだった。利下げ見通しの後退は、利息を生まない金投資にはマイナスに作用する。

  また米株式市場で生じた損失を埋めるために、金を売る動きも一部で見られた。

  INGバンクの商品ストラテジスト、エワ・マンティー氏は金の軟調について、「一部は株式主導の動きが要因のようだ。米国の時間に入ってからそれは顕著で、投資家はファンダメンタルズを疑問視せず、流動性を確保する手段として金を利用している」と述べた。

金相場は一貫して上昇基調 | 2026年は年初から20%近く上昇

  年初来の金相場は約17%上昇し、地政学と貿易面での緊張激化という追い風を受けている。また連邦準備制度理事会(FRB)の独立性が脅かされるとの懸念も、金買いを促している。価格は1月末に日中ベースでオンス当たり5595ドルを超え、過去最高値を記録した。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時3分現在、前日比74.04ドル(1.4%)安の1オンス=5066.32ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は、56ドル(1.1%)下げて5078.70ドルで引けた。

(原油相場を追加して更新します)

原題:Stocks Fall With Bonds as Oil Surges Anew on Iran: Markets Wrap(抜粋)

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