残念ですが「水道料金アップ」は避けられません…インフラ崩壊ニッポンが直面する厳しい現実

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水道管の法定耐用年数は40年。だが、いまの更新ペースでは全体を入れ替えるのに157年かかる計算だという。背景にあるのは、政治判断に左右されてきた投資の歴史と、抑え込まれてきた料金水準だ。さらに下水道は2040年代に更新の山を迎える。老朽化と財源不足が同時進行する日本は、どこに活路を見いだせるのか。※本稿は、経済学者の根本祐二『インフラ崩壊 老朽化する日本を救う「省インフラ」』(日本経済新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

高度成長期とバブル崩壊後に

水道投資のピークが来た

 水道分野の信頼できるデータは水道統計である。図表2-23は、水道管の配管延長距離と上水道普及率を示したものである。

 普及率は、総給水人口(上水道人口+簡易水道人口+専用水道人口)を総人口で割った値である。1980年91.5%、1990年94.7%、2000年96.6%、2010年97.5%と、100%に向かって増え続けてきて、最新時点(2023年)で98.2%である。100%とならないのは、住民が自主管理している小規模給水システムや個人の井戸・雨水利用などを採用しているケース、地震被災地において調査時点で水道ネットワークが使われていないケースなどがあるためである。

同書より転載

 図表2-24は水道投資額の推移である。水道に関しては建設年度別の配管距離のデータは公開されておらず、その代わり金額の推移が公表されている。

 これによると、整備ピークは昭和50年前後(1970年代)および平成10年前後(1990年代)の2つであることが確認されている。前者は高度成長期のピーク時点であり、水道普及率も70%から90%に一気に高まった時期で、全国で水道ネットワークが整備されたと考えられる。

 後者はバブル経済崩壊後の景気対策期である。公共事業予算の増額に伴って水道投資額も増えたと推測されるが、この時期の水道普及率はすでに96%(1995年95.8%)あり、単純な水道ネットワーク普及ではなく耐震化などに用いられたと考えられるが詳細は不明である。

同書より転載

いまの管路更新ペースでは

耐用年数の4倍の時間が必要

 図表2-25は水道管路更新率の推移である。水道管については橋りょうのような量のピラミッドグラフ(編集部注/建設年別のインフラ量を棒グラフで示したもの)は公表されていないことから、将来の更新投資時期を正確に予測することができない。

 その代わり、管路更新率が参考になる。これは、ある年に水道管の更新が全体の管路延長の何%行われたかを示したものである。水道管の法定耐用年数は40年であり、更新投資が40年で一巡するための適正更新率は2.5%となる。2.5%を上回っていれば平準化投資をしていることになり問題はない。

同書より転載

 しかし実際は、はるかに低い水準で、かつ、年々低下し続けており、公表されている最近年(2021年)では0.636%となっている。このペースで現在の全量を更新するには157年(100÷0.636%)かかる計算となる。水道管を多少長寿命化しても追いつかないぐらいの圧倒的な更新不足と言える。更新率は、更新投資予算不足の深刻度合いを可視化する良い指標である。

 では、なぜこのような事態になってしまったのか、筆者は料金水準が低いことが原因であると考えている。

 水道法では、能率的な経営のもとにおける適正な原価に照らし公正妥当なものであることとされているが、仮に適正な原価を計算しても、認可された料金がそれを下回っている、もしくは認可に時間がかかるとすると、料金収入は不足する。収入不足を補うために、当面は不要な費用としての維持管理費が削減され、結果的に資産の劣化を早めているのではないかと筆者は懸念している。

 老朽化していなければ、維持管理が不十分でもすぐに障害が出ることはない。しかし、老朽化が進めば日常の維持管理次第で直ちに障害が発生する。

 さらに、維持管理費を削減しても収入が不足する場合は赤字となるが、赤字分は最終的には一般会計から支出して埋め合わせることになる。つまり、いずれにせよ何らかの住民負担を行っているのである。

 地方公営企業年鑑によって水道事業の収支を見ると、営業収益と経常費用の差引は赤字が続いており、他会計補助金等によって赤字が補われていることがわかる。水道事業単独では採算がとれておらず、一般会計からの補填で支えるという状態は受益者負担の原則から見ると望ましくない。

 是正するための料金改定は必須であり、住民も良質な水道サービスの維持には費用がかかることを認識して、受け入れるべきだと考えている。

国土の数%のエリアにだけ

下水道を敷くのが最適解

 下水道法では、下水の定義として「廃水(汚水)又は雨水」とされている。発生原因者が特定できる汚水と、特定できない雨水が存在することが、水道との大きな違いである。

 下水道法上の下水道は終末処理場まで管で接続されるネットワークインフラであり、公共下水道と呼ばれている。水道が水源から需要地までをつなぐネットワークインフラであるのに対して、公共下水道は、下水の発生地から処分場までをつなぐ逆方向のネットワークインフラである。ちなみに、2つ以上の地方公共団体における広域的な処理システムが流域下水道と呼ばれるが、インフラ老朽化の観点から見ると両者には大差はない。

 公共下水道の設置、改築、修繕、維持その他の管理は、市町村が行うものとされている。ただし、公共下水道の設置自体は市町村の義務ではない。後述する通り、公共下水道以外にも下水処理の方法があるためである。

 一方、公共下水道が整備された地域では、住民には公共下水道に接続する義務がある。ただし、「特別の事情により」義務が免除されることになっており、実際に、下水道普及率は高くても接続率は高くないという地域は少なくない。接続には敷地内、家屋内の対応工事の支出が必要であるため、あえて接続しないことを選択する住民が多いことを意味する。下水道管は敷設されていても住民が接続しないということは、利用料を徴収できないということであり、下水道管理者にとっては大きな負担となる。

 水道と比較した下水道の特徴は、公共下水道以外にも有力な下水処理方法がある点である。浄化槽法に規定される合併処理浄化槽、集落排水である。

 合併処理浄化槽は、もともと存在した単独浄化槽がトイレの汚水だけを処理するものであり、生活雑排水は河川や海に投棄され水質汚濁の原因となったことから、生活雑排水も浄化する浄化槽として開発されたものである。合併処理浄化槽内で公衆衛生上の問題がないレベルまで浄化された後、河川等水域に放流される。2001年浄化槽法改正により、生活雑排水の処理ができない単独浄化槽の設置は禁止された。

同書より転載

 また、農業集落におけるし尿、生活雑排水などの汚水などを共同で処理する浄化施設が農業集落排水施設である。同じ趣旨で林業集落排水施設、漁業集落排水施設も存在する。いずれも最終処理場までネットワークでつながないという意味では、ネットワークインフラではない。

 これらの方式は人口密度によって使い分けられる。人口密度の高い地域はスケールメリットを出しやすい公共下水道、1次産業の集落は集落排水施設、人家のまばらな周辺部は合併処理浄化槽が合理的である。公共下水道と合併処理浄化槽の分岐点は1ha当たり40人とされている。この数字は国勢調査上の人口集中地区(DID)の目安である1平方km当たり4000人と同じである。

 DID面積は国土面積の3~4%だ。その3~4%のエリアに公共下水道を集中させ、それ以外の広大なエリアは合併処理浄化槽や集落排水施設で処理すると考えると、日本全国に公共下水道を展開するよりはるかにコストは少なくてすむのである。

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他のインフラより20年遅れて

2040年代に下水道破綻の波が来る

 公共下水道の信頼できるデータは下水道統計である。図表2-28は管路施設のピラミッドグラフだ。建設のピークは、1998年頃であり、学校、公営住宅、水道などに比べると約20年遅れている。このため、現時点で平均的に老朽化しているわけではない。

 一方、ピーク後の布設距離は年々減少しており、この図表の足元の2023年度の実績は、ピーク時の約5分の1である。下水道管の標準耐用年数は50年であることを考えると、2040年代には大きな更新投資負担が生じると予想される。

 水道同様に、公共下水道事業(公営企業)の収支を見ると、営業収益と経常費用の差は赤字であり、他会計補助金等によって補填されている。ちなみに、下水道では雨水分に対する税金の投入は不可欠であるが、その分はすでに営業収益に織り込まれている。

 下水道事業単独では採算がとれておらず、一般会計からの繰り出しが必須という状態だとすると、料金改定は必須であると考えている。以上は、水道とまったく同じ状況にあると言える。

同書より転載

『インフラ崩壊 老朽化する日本を救う「省インフラ」』 根本祐二 日本経済新聞出版