トヨタ、ベンツ、BYD試乗で確信したPHEVの本質

そもそもプラグインハイブリッドのメリットは?, 超ド級「Sクラス」のプラグインハイブリッド, 新興「BYD」のプラグインハイブリッドは?, プラグインハイブリッド市場を制するには?, EV再考のいまプラグインハイブリッドの役割は?

さまざまなPHEVに乗ってその本質がわかった。写真はメルセデスAMG「S63 E パフォーマンス」(同乗者撮影)

なるほど、メーカーやモデルによって「クルマの本質」の違いがはっきりわかるものだな――。

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最近、トヨタ「クラウンスポーツPHEV」(新車価格765万円)、メルセデスAMG「S63 E パフォーマンス」(3799万円~)、そしてBYD「シーライオン6 DM-i」(398万2000円)を短期間に乗り比べて、改めてそう感じた。

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試乗会場に並んだメルセデス各車。手前が今回試乗したメルセデスAMG「S63 E パフォーマンス」(筆者撮影)

同時に、プラグインハイブリッド車(PHEV)はこれからどうなっていくのか、とも。

そこで、これまでに乗った三菱「アウトランダーPHEV」、トヨタ先代「RAV4 PHEV」、 同「プリウスPHEV」、マツダ「MX-30 ロータリーEV」や海外メーカー車などの試乗体験を踏まえ、プラグインハイブリッド車の今後を考えてみたい。

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そもそもプラグインハイブリッドのメリットは?

まず、プラグインハイブリッド車とは何かを振り返っておこう。

PHEVは、動力源こそエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HEV)でありながら、外部からの充電や、外部に給電をするプラグイン機能を併せ持つクルマのこと。

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数十km程度であればガソリンを使うことなくEV走行できる(筆者撮影)

ハイブリッド車と比べて搭載する電池の性質はBEV(電気自動車)に近く、電池容量はBEVほどではないが、通勤や通学など地域内の日常移動ならば、給油なしにBEVとして使うこともできる。

ハイブリッド車として走行しながら充電もできるため、燃料が満タンで満充電だと航続距離が1000kmを超えるモデルも珍しくない。

つまり、ハイブリッド車とBEVの“いいとこ取り”だ。

見方を変えると、ハイブリッド車で十分だと考える人にとっては“割高なハイブリッド車”であり、思い切ってBEVへの買い替えようと思う人には“中途半端”に映るかもしれない。プラグインハイブリッド車に対する見方はさまざまある。

そのうえで、争点として筆者が挙げたいのが、運転中での「本質の感触」だ。

ここでいう「本質」とは、クルマの車体に起因する設計思想のこと。具体的にどういうことか、実車体験をもとに話を進めたい。

たとえばクラウンスポーツの場合、クラウンスポーツ/セダン/クロスオーバー/エステートという4車型からなる「クラウン群」の特徴として、それぞれで車体と主要駆動輪、サスペンションの味付けが大きく違う。

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トヨタ「クラウンスポーツ RS」(筆者撮影)

クラウンスポーツは、これまでのクラウンと比較して、かなりスポーティな乗り心地とハンドリングに仕上げていると感じる。特に、ハイブリッド車でその傾向は強い。

そのうえで、クラウンスポーツのプラグインハイブリッド車に試乗すると、ハイブリッド車よりも電池容量が大きいため、クルマ全体のずっしり感があり、上質でスポーティな仕上がりとなっている。

換言すれば、クルマとしての本質はハイブリッド車で目指したクラウンとしての“革新と挑戦”を感じる。これがクラウンスポーツPHEVの「本質の感触」だ。

超ド級「Sクラス」のプラグインハイブリッド

次は、メルセデスAMG・S63 Eパフォーマンスである。ボディ寸法は、全長5335mm×全幅1920mm×全高1515mm、乗車定員5名のセダンだ。

エンジンは排気量3982ccのV型8気筒。重量は2690kgで、燃費は国際規格WLTCモードで8.6km/L。

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メルセデスAMG「S63 Eパフォーマンス」(筆者撮影)

左ハンドルの運転席に入ると、ナッパレザーの「AMGパフォーマンスステアリング」や「3Dコックピットディスプレイ」など、AMGらしいスポーティ性が際立つ。

こんな超ド級のプラグインハイブリッドだが、想像通り、普段づかいにも十分対応できそうな柔軟性を持っていた。実感したのは「Sクラスらしさ」だ。

筆者は90年代からドイツを中心に、メルセデス・ベンツ関連で数多くのモデルの試乗・取材をしてきた。

本社が製造するオフィシャルモデルに加えて、90年代から00年代にかけてグローバルで流行した「ブラバス」「ロリンザー」「カールソン」などチューニングメーカーによるハイパフォーマンスモデルも、ドイツ各地で何度も乗っている。

そうした過去の体験から、今もメルセデス・ベンツが目指すクルマづくりは、「メルセデス・ベンツらしさ」や、個別モデルでの「Sクラスらしさ」「Gクラスらしさ」などが貫かれていると感じる。

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「Sクラス」らしさを感じる広々と快適な後席空間(筆者撮影)

各種の技術革新を経ても、ブランド全体における「メルセデス・ベンツらしさ」は変わらず、もちろんそうした設計思想は「EQS」などEVについても同じだ。

今回は、公道のみでの走行のため、真のパフォーマンスを体験することができなかったが、AMGの中には「毎日の生活の中で気兼ねなく使えること」というメルセデス・ベンツの設計思想があり、それは今回、試乗した超上級プラグインハイブリッドでも同じだった。

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センターディスプレイに表示されるドライブモードの選択画面(筆者撮影)

換言すれば「EVっぽさ」は控えめに、「パワフルかつ使いやすいエンジンを持つSクラス」という印象だ。これが、このクルマの「本質の実感」だ。

なお、このクルマのパフォーマンスをフルに発揮させるにはドイツのアウトバーンで走るか、または設計意図とは若干違うかもしれないがサーキット走行に誘い出す必要があろう。

新興「BYD」のプラグインハイブリッドは?

こうしたクラウンのハイブリッド車、メルセデスAMGのハイパフォーマンス車と比べて、「本質の実感」が「かなりEV寄り」だと感じたのが、BYD「シーライオン6 DM-i」である。

可能な限りガソリンを使わず、EV走行する設計思想に加えて、エンジンが始動した際の車内に伝わる音と振動が少ないのが特徴だ。

乗り心地とハンドリングの質感も高く、日本導入モデルはまだFWD(前輪駆動車)だけだが、ワインディング路での走行を含めてパフォーマンスとして十分だと感じた。

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398万円という戦略的な価格で国内導入されたBYD「シーライオン6 DM-i」(筆者撮影)

26年中には、同モデルの4WDに加えて、「ATTO 3(アットスリー)」よりコンパクトな「ATTO 2(アットツー)」のプラグインハイブリッド車が日本導入される予定である。

そのほか、BYDではプラグインハイブリッド車に特化したハイパフォーマンス系やオフロード系など、応用技術を搭載した多様なモデル群の量産に向けた開発が進んでいる。

25年12月に都内で開催した「シーライオン6 DM-i」記者発表会で、本社の技術統轄者が詳細を示した。

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コンパクトなPHEVとして日本導入が予定されるBYD「ATTO 2」(写真:BYD)

では、プラグインハイブリッド車は今後、日本市場で広がっていくのだろうか。

25年時点で、日本の乗用車市場でのパワートレイン別の比率は、ハイブリッド車(60.39%)、ガソリン車(31.89%)、ディーゼル車(4.50%)、プラグインハイブリッド車(1.63%)、EV(1.57%)、そして燃料電池車(0.02%)という順だ。

そのうえで、プラグインハイブリッド普及のカギは「ブランド価値」だと思う。

プラグインハイブリッド市場を制するには?

ハイブリッド車が主流という国内市場の景色は、これからも簡単には崩れないだろう。そうなると、プラグインハイブリッド車は“付加価値の高いハイブリッド車”という現在の立ち位置が大きく変わることはないと思われる。

そんな中で、BYDが戦略的な価格設定をすることでプラグインハイブリッド車市場の間口は広がるはずだ。そうなれば、多様なパワートレインを併存させるマルチパスウェイ戦略をとってきた日系メーカーは、プラグインハイブリッド車の価格競争力を考慮せざるをえなくなる。

そのためには、プラグインハイブリッド車とEVで部品の共用化を進め、量産効果を得る必要が出てくるから、EVの販売促進にも注力することになるだろう。

そもそも、ハイブリッド車を世界に先駆けて市場投入したトヨタは、製造コストと新車価格の観点から、まずはハイブリッド車の母数を拡大し、そこからプラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車という、ユーザーにとっての“電動車のステップアップボード”をイメージしていた。

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トヨタでは「ハリアー」や「アルファード」などPHEVラインナップを拡充している(写真:トヨタ自動車)

ところが、テスラの台頭と中国政府の国家戦略、ヨーロッパでのEV普及施策により、10年代中盤から後半にかけて世界的なEVシフトが生まれ、トヨタのみならず日系メーカー各社は対応に追われた。

その結果、トヨタは国や地域の社会状況に応じた多様なパワートレインを並行して対応するマルチパスウェイ戦略を維持しながらも、EVへの対応を強化せざるを得なかった。

つまり、“電動車のステップアップボード”が大きく変わり、プラグインハイブリッド車の存在が想定よりも希薄になった印象がある。

EV再考のいまプラグインハイブリッドの役割は?

直近ではアメリカ・トランプ政権による自動車環境対策の大幅な見直しなど、電動車市場の先行きを判断するには難しい要素が増えている。

また、ホンダが中国市場でのEV戦略を「白紙に戻す」(貝原典也副社長)という発言があるなど、EVシフトは新たなる局面を迎えている。

そうした中、今回の試乗で感じたような市場の現実を鑑みると、プラグインハイブリッド車は各メーカーにとって電動車の「ブランド価値の象徴」になるのではないか。今後もプラグインハイブリッド市場の動向を注視していきたい。

【写真】今回、試乗したプラグインハイブリッド車3台の内外装をもう一度見る(26枚)