【フィリピン】原油高騰、インフレ率4%も[経済] 消費に打撃、経済開発省見通し

国内の石油元売り各社は今週、過去最大規模の値上げを実施している=11日、マニラ首都圏マカティ市(NNA撮影)
フィリピン経済企画開発省は10日、中東情勢悪化の影響による原油価格の高騰が長期化した場合、2026年のインフレ率が前年比4%を超える可能性があるとの見通しを明らかにした。原油輸入の9割以上を中東に依存する状況下、物価高が広範に及び消費も減速すると指摘。26年の経済成長率が最大0.3ポイント押し下げられるとの試算も示した。
バリサカン経済企画開発相が10日、下院エネルギー委員会で原油価格の高騰が国内経済に与える影響に関する試算を発表した。「石油価格の高騰は生産コストと物価を上昇させ、結果的に消費者の購買力が低下する」と危機感を示した。
経済企画開発省は原油価格の高騰について、◇3月に1バレル100米ドル(約1万5,800円)に上昇し、5月まで同80米ドル超が継続(シナリオ1)◇3月に1バレル140米ドルに上昇し、9月まで同80米ドル超が継続(シナリオ2)——という2つのシナリオに基づき影響を試算した。
シナリオ1の場合は国内の1リットル当たりのガソリン価格が3月に70.2ペソ(約188円)に上昇した後、4月には64.59ペソに落ち着くと試算。シナリオ2では3月が88.79ペソ、4月が84.17ペソになると予測している。
この結果、26年のインフレ率は、シナリオ1の場合が4.0~4.2%、シナリオ2では4.5~4.8%と、現時点の政府見通しの3.6%や、従来の目標レンジの2~4%をともに上回る可能性がある。特に非食品の上昇が顕著で、当初見通しの3.9%を大幅に上回り、5.4%になるケースもあるとの見方を示した。

■出稼ぎ者55万人以上に影響

中東情勢の悪化は、本国への送金で経済を支えるフィリピン人海外出稼ぎ労働者(OFW)にも影響を及ぼしている。経済企画開発省は、政府による中東への就労規制や派遣先からの退避により55万人以上が影響を受ける可能性があるとし、その場合は送金額が2,200億ペソ以上も目減りすると試算している。
インフレと海外からの送金減による国内総生産(GDP)成長率の押し下げ効果は、シナリオ1の場合はインフレ起因が0.06~0.08ポイント、送金減起因が0.12ポイントの最大計0.2ポイント、シナリオ2の場合はインフレ起因が0.13~0.17ポイント、送金減起因が0.14ポイントの最大計0.3ポイントになるとみている。
政府は26年のGDP成長率の目標を5~6%に設定している。バリサカン氏は、26年の成長率について、5月に発表される1~3月期の結果を見て状況を評価するとしつつも、「5%を下回る可能性がある」との見方を示した。
■燃料減税で歳入1059億ペソ減も
政府は燃料価格の上昇を抑制するため、石油製品の物品税課税を一時停止する方針を示しており、マルコス大統領は9日、石油製品の減税に関する緊急権限を自身に付与することを正式に議会に要請した。下院歳入委員会は10日に権限委譲に関する法案を承認している。
経済企画開発省によると、石油製品の物品税停止により、4月までのガソリン価格を1リットル当たり11.2ペソ、軽油は6.7ペソ下げることができる見通し。3月と4月のインフレ率を約1ポイント抑制できる効果があるとみている。
一方、物品税停止による税収減は避けられず、シナリオ1(3カ月間の停止)の場合で433億ペソ、シナリオ2(7カ月間の停止)の場合で1,059億ペソの歳入減が生じると試算している。
政府は原油価格高騰の影響軽減に向け、◇国民の交通費負担軽減◇社会的弱者向けのセーフティーネットプログラム◇段階的な価格引き上げ◇低コストのバイオエタノールの使用拡大◇省エネプログラム——を実施している。長期的には再生可能エネルギー発電や原子力発電の推進により輸入石油への依存度軽減に取り組む方針だ。