リチウム電池争奪戦の裏で進む「回収」競争。日本発技術で資源の中国依存を崩せるか

量子科学技術研究開発機構発のスタートアップLiSTieが、使用済みリチウムイオン電池からリチウムを回収するベンチプラントの完成を発表した。
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リチウムイオン電池だ。
日本はその原料となるリチウムを資源としてほぼ持っておらず、調達の多くを海外に依存している。特に電池材料に加工する精製工程では中国の存在感が大きい。
リチウムイオン電池の需要を背景に、リチウム市場は2021年段階の約1兆円規模から、2030年には約11兆円規模にまで成長すると期待されている。直近では日本も中国依存からの脱却を目的に輸入国を分散させるなど対応を進めているが、原料調達は経済安全保障上の大きな課題であることに変わりはない。
実はそんな中、国内にある「使用済みリチウムイオン電池」からリチウムを「回収」し、再利用する技術の開発が、着々と進んでいる。
99.99%の高純度リチウム回収、実証へ

LiSTieの星野毅代表。
3月26日、国の研究機関である量子科学技術研究開発機構(QST)発のスタートアップLiSTie(リスティ)が、使用済みのリチウムイオン電池などからリチウムを高純度で回収するためのベンチプラント(実証設備)の完成を発表した。同社の星野毅代表によると、回収できる水酸化リチウムの純度は99.99%。リチウムイオン電池の材料として十分に堪えられる水準だという。
一般的に、再利用できなくなったリチウムイオン電池は、回収され分別、加熱、粉砕といった工程を経て、ニッケルやコバルトなど、さまざまな金属が含まれた「ブラックマス」という細かい粉状に加工される。処理メーカーは、これを材料に含まれた金属を再資源化するわけだ。
リスティでは、このブラックマスからリチウムを含んださまざまな金属イオンなどが含まれた原液を作製。セラミックス製の分離膜を用いた独自のシステム(LiSMIC:リスミック)を通じて、リチウムを高純度で回収する。

リスティのベンチプラントで実証する流れ。
リスティの技術の強みは、「リチウム選択性の高さ」だ。
リチウムの回収に使われるセラミックス膜は「イオン伝導膜」と呼ばれるもので、特定のイオン(電気を帯びた原子)だけが通過できる性質を持つ。全固体電池の素材などとしても知られており、星野代表も「素材自体はそこまで新しいものではない」と話す。
リスティでは原液の濃度やpHを調整した上で、セラミックスの膜の表面をうまく加工することで、セラミックス膜に電圧をかけると原液中に含まれるリチウム「だけ」が膜を通過できるようにしたという。
星野代表は
「既存の他の技術でもリサイクルリチウムを作れないわけではありません。ただ、銅やアルミニウムなど、電池の原料にするなら絶対に入ってはいけないものが不純物として入ってしまうところが課題でした。LiSMICであればそれを含まないリサイクルが可能です」
と、高純度のリチウムの精製に適していると説明する。

セラミックス膜が入ったセル。セルの左右にあるチューブは原液や分離したリチウムが含まれた液体の流路。原液を流すと、反対側にリチウムだけが流れていき、分離回収される。
実証設備は、大きさが数メートル程度。手のひらサイズのセラミックス膜を9枚使用している。1日24時間稼働を前提に設計されており、1日あたり約1.5キログラム程度の水酸化リチウムを回収できる仕様だという。2026年5月から実証運転を開始し、回収量や運転安定性、量産・事業化へ向けたデータ取得を進めていく。
水酸化リチウムの製造原価は、2025年12月段階で1キログラムあたり2500円程度。リスティの試算によると、年産570トン規模の装置なら、1キログラムあたり500円程度にまで原価を下げられるとしている。

リスティが建設を目指している大規模なコンテナ型のリチウム回収装置。回収量は年間570トンで、全長は12メートル程度を想定している。
まずは素材提供。将来は「現地」で精製も視野
リスティの創業は2023年7月と、設立から間もない。ただ、星野代表が所属していたQSTでの研究成果を起点としており、技術的な蓄積は深い。
資金面では、2024年7月にシードラウンドで素材・化学系に特化したVCのUMI(ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター)から第三者割当増資で1.5億円調達しているほか、文部科学省中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR事業フェーズ3)にも採択。最大15億円の助成金が交付される見込みだ。
ほか、2025~2026年度の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のディープテック・スタートアップ支援事業にも採択され、2億円の助成金の交付が決まっている。
事業面では、2026年度中に今回完成した実証設備で製造したリチウムのサンプル販売を進めていく計画だ。

実際にリスティが作った水酸化リチウムのサンプル。
2027年度には大型の装置を整備して製造量を増やし、自社製造した水酸化リチウムを電池メーカーなどに販売して本格的に売り上げを立てていきたいとしている。将来的には、塩湖などのリチウム埋蔵量の多い地域に装置を販売し、現地で生産したものを日本に輸入することも目指す。
大きな商用の設備を自社で用意して、再資源化したリチウムを販売していくビジネスを目指す上では、ブラックマスをどう調達するかもポイントとなる。星野代表は、ニッケルなど他の金属を再資源化している事業者との連携も視野に、必要量を確保していきたいと考えを語った。