【習近平「一強」が招くジレンマ】中国経済は「日本イジメ」で自壊が加速している

全人代での習氏。好転しない経済情勢に、心なしか表情が冴えないように見える
中国のGDP成長率が低下中
中国政府は労働者の雇用を安定させると明言しています。一方で、AI(人工知能)やロボットなど先進的な技術開発の強化も重視している。これは矛盾します。AIやロボット開発が進めば、労働者の仕事を大幅に奪いかねませんから。
こう分析するのは、国際情勢分析の第一人者で、キヤノングローバル戦略研究所上席研究員・中国研究センター長の峯村健司氏だ。いま中国経済は沈みつつある。’00年代後半には10%前後だった国内総生産(GDP)実質成長率は、近年5%程度まで低下。不況打開への解決策が見えない状態が続いているのだ。峯村氏が解説を続ける。
3月12日まで開かれた全国人民代表大会(日本の国会に相当)で驚いたのは、’26年のGDP成長率目標を「4.5〜5.0%」に引き下げたことです。’90年代以降で最低の水準になります。昨年までは「5%前後」の目標を掲(かか)げていましたが、強気の姿勢を続けられなくなったのでしょう。現実をみれば「2%ほど」が適当と予測する米国のシンクタンクもありますから。
高い目標を設定すれば歪(ゆが)みが出ます。とくに地方の疲弊がひどい。ノルマを達成しようと、地方政府は採算度外視の不動産開発を続けざるをえません。しかし不動産投資率が50%にまで達した’00年代前半ならいざ知らず、バブルが崩壊した現在では買い手などいない。「在庫」となった大量の不動産が不良債権となり、地方経済を圧迫しているんです。
地方では失業率50%!?
背景には習近平(しゅうきんぺい)国家主席「一強」のジレンマがあるという。’18年3月に、それまで「2期10年」だった国家主席の任期を撤廃した習氏は絶対的存在だ。
「成長率目標」は実質的に習氏の命令です。絶大な権力を持った人間が「やれ」と指示すれば、周囲はやらざるをえないでしょう。とくに習氏は「反腐敗」を推(お)し進めています。命令に逆らえば「汚職」とみなされパージされかねません。行き詰まる中国経済は、習氏の「超一強」体制の弊害だと思います。
全人代で採択された「5ヵ年計画」が、目標の一つに掲げるのがAIやロボット、量子技術など新ビジネスへの投資だ(「主なポイント」は表参照)。中国政府は3月6日、AIの関連産業を’30年末までに229兆円規模にまで拡大させると発表している。
AIやロボット技術の向上は中国経済にとって諸刃(もろは)の剣です。人間の仕事が奪われる可能性がありますから。「5ヵ年計画」では失業率が悪化する地方からの出稼ぎ労働者や若者の雇用を創出し、収入を増やすことで消費能力を高めるとしています。彼らの多くが従事するのは製造業です。しかし、製造業でこれまで人間が行っていた仕事は、AIやロボットが請け負い始めています。中国政府は若者(16〜24歳)の失業率は16〜18%程度と発表していますが、地方では50%を超えるとの見方もあります。
一方で中国は日本の「軍事力向上に関与」するという名目で、軍民両用品の輸出審査を厳しくする監視リストを発表しました。輸出禁止や監視対象としてリスト化された日本企業や団体は40にのぼる(表参照)。最近は「日本叩き」が加速していますが、中国経済にとっては逆効果です。多くの日本企業は中国に工場を持ち、地元の人たちを雇用しています。なかには何十年も地元に根付き、労働者へ技術教育をしている企業もあるんです。日本への制裁を強めれば、ますます労働者の雇用が失われることになる。中国経済の自壊につながるでしょう。
「5ヵ年計画」では、’35年までに一人当たりのGDPを’20年比で2倍に拡大するという長期目標も掲げている。
中国政府は自動車や家電などを買い替えれば、1万円超から44万円程度の補助金を出すとしています。低迷する内需を刺激したいのでしょう。しかし、そう多くの人が頻繁に自動車を買い替えるとは思えません。裏を返せば、効果的なアイディアがないことの表れと言えます。根本的な対策を打ち出さなければ、’35年までにGDPを’20年の2倍にするという目標は達成できないでしょう。
中国は共産党による計画経済に縛られ、長期目標を立てたがります。ですが、2月末に米国とイランの紛争が勃発するなど、未来のことを誰が予測できるのでしょうか。中国の不況は、超一強の習近平体制の弊害による当然の帰結(きけつ)です。

中国各地で建設の遅れている不動産が続出。写真は東部・江蘇省南京市のビル群

『FRIDAY』2026年4月10日号より