【自転車の青切符】「歩道走行は即罰金」の誤解。「指導」と「取り締まり」を分けるポイントと制度の本質

この4月から自転車を対象に青色切符制度が始まった。

この4月から、自転車に対する交通反則通告制度、通称「青切符制度」が始まっている。

SNS上では、同制度に対してさまざまな情報が飛び交っているものの、その中には不正確なものも多い。例えば「自転車が歩道を走ると反則金が科される」といった情報も、実は正確とは言えない

NPO法人自転車活用推進研究会理事の疋田智氏に、本当に青切符を切られる行動と、青切符の導入で露呈した日本の道路インフラの問題について聞いた。

Business Insider JapanのYouTube番組「インサイダ」に出演した疋田氏。

「歩道走行は即罰金」は誤解。警察庁の方針は

青切符を理解するには、まず「赤切符」との違いを押さえておく必要がある。赤切符は「刑事処分」であり、起訴されると前科がつく可能性がある。一方で、青切符は比較的に軽い違反行為を対象とした「行政処分」で、手続きが比較的簡便だ。

青切符制度が導入されるまで、自転車の交通違反に対する処分は赤切符を適用するしかなかった。しかし、違反内容に対して処罰内容が重すぎたこともあり、実際に起訴されることがほぼなく、「実質的に有名無実化していた」と疋田氏は指摘する。

行政が自転車の交通違反に対して有効な対策が打てない中、2016年頃から全交通事故に占める自転車の事故件数が増加に転じ、2024年に23.2%に達した。青切符制度はこういった実態に対して、実効性のある取り締まりをするために導入されることになったわけだ。

警察庁の統計をもとに編集部作成

こういった経緯もあって、2025年4月に警察庁は青切符の対象となる113項目の違反行為を発表。ただ、パブリック・コメント(意見公募手続き)で意見を募集したところ、その内容には多くの批判も寄せられた。

特に批判されたのは、「自転車の歩道走行に対して6000円の反則金を科す」という項目だ。自転車専用道路が十分に整備されておらず、車道も混雑しがちな都市では、自転車が歩道を走るのはよく見る光景だ。これを全て取り締まることは現実的ではない。一定条件下では歩道走行は認められていることもあり、ルールとして規定できてもその通り運用することは難しいとの声も目立っていた。

反対意見を受け、警察庁は2025年9月に「自転車ルールブック」を発表した。「自転車ルールブック」によると、自転車の歩道走行に対して指導・警告は行われるが、「基本的に取り締まりの対象となることはありません」と明記されている

歩道通行だけではなく、実は113項目のほとんども指導・警告が行われるだけで済む。

「法の規定ということで言うと、確かにそう(青切符を切られる)なんだけど、実際にそれを切るかどうか、取り締まるかどうかはまた別だ」(疋田氏)

本当に青切符を切られる6つのシナリオ

では、実際に何をしたら青切符を切られるのか。疋田氏は「自転車ルールブック」を精査し、基本的に青切符を切られるシナリオは6つに絞られるという。

即座に青切符を切られる6種類の行為

携帯電話使用等

自転車の運転中にスマホを操作すると、青切符が切られ、1万2000円の反則金が科される。

自動車制動装置不良

ブレーキがなく、主に自転車競技で使用される「ノーブレーキピスト」が該当する。一部の若者の間で流行っていたが、公道を走ると青切符が切られ、5000円の反則金が科される。

遮断踏切立入

遮断桿(しゃだんかん)が下がっているのに無理に踏切を通過しようとするという違反。いわゆる「開かずの踏切」で発生しがちだが、青切符が切られると7000円の反則金が科される。

複合違反

二つ以上の違反行為を同時に行うことを指す。例えば、傘さし運転だけなら指導・警告で終わるが、一時不停止(「止まれ」の場所で停止せず通過するという違反)が加わると「悪質」と判断され、青切符の対象になる。「2つ以上の違反を同時にやった場合は取り締まる」というのが基本方針だ。

警察の指導警告に従わない

警察が違反行為に対して注意したのにまた同じ違反行為を続けると、悪質と判断され、青切符が切られる。

反則行為で歩行者や車の回避措置を引き起こす

例えば、信号無視だけなら指導・警告で済む可能性が高いが、信号無視の結果として車が急ブレーキをかけるような回避措置をとると、青切符が切られる。あるいは、歩道で危険なスピードで走り、歩行者が立ち止まらざるを得ない状況になると、青切符が切られる。ただし、どこまでの反応が「回避措置」と言えるかは、警察官の裁量によると疋田氏は言う。

東京都の警視庁の交通相談コーナーに確認したところ、この6つ以外は青切符が絶対に切られないかというと、法律にどこも書いていないことなのでなんとも言えないが、切られる可能性が低いとの回答を得た。

半世紀前から放置されてきたルールの欠陥

今回の青切符制度の背景には、より深刻な問題がある。

例えば、今回の法改正で議論を呼んだ「自転車の歩道走行」でいえば、実は1970年に道路交通法が改正されるまでは「自転車も車道を通っていた」(疋田氏)。しかし、高度経済成長期に自動車が急増し、車道での自転車事故が相次いだため、暫定措置として一定条件を満たした自転車の歩道通行を許容するようになったという

「『いつかは車道に戻っていただきます』と決めた法律が、もう半世紀以上続いている」(疋田氏)

理想は歩道、自転車専用道路と車道が分かれ、自転車が歩道を走らずに済むような道路設計だ。しかし、現実は自転車専用道路が十分に整備されていない。仮に整備されている場所でも、路上駐車によって自転車専用道路が「駐車場化」しており、使えなくなっているケースも多いと、疋田氏は指摘する。

路上駐車が多い東京の青山通り

むしろ、日本社会は自転車の歩道走行を前提に発展してきたと疋田氏。疋田氏は、自転車メーカーに「どこを想定して設計しているか」と聞くと、「歩道」と答えてくるという。重心が低く、足が地面につき、速度が出にくいママチャリは、歩道走行に最適化されている。

結果、本来は自転車は軽車両として車道を走るべき存在であるにもかかわらず、日本人の多くは自転車を「歩行者の仲間」(疋田氏)だと認識するようになった。