「保健所→殺処分も」飼い主亡き後「猫」の深刻問題

まさかの事態は誰にでも起こりうる(画像:ネコリパブリックHPより)
いつまでも猫と暮らしたい……猫好きなら誰でもそう考えるだろう。一方で、老後を意識すれば、自分が病気になったら、施設に入ったら、死んでしまったら、という可能性も視野に入ってくる。いま猫を飼っている人なら「そのとき」が心配だし、飼っていない人なら、猫との暮らしを諦めることが多いのではないだろうか。
【写真】多頭飼育崩壊現場から保護された猫。動物保護指導センターで半年過ごしたがおうちが見つからずネコリパにやってきた
実際、今の日本で老後も猫と暮らせる可能性はどれだけあるのだろう。
どこで出会えるか?
まず高齢者が猫を飼いたいと思った場合、猫探しのハードルが一段上がる。保護猫施設・団体から譲渡してもらおうとすると、60歳以上の場合は後継者が必要になる場合が多い。猫の一生は長ければ20年以上にもなるので、終生飼育できるかどうかという観点から見れば当然だろう。
ただ、大人の猫なら譲渡対象になるなど、相談に応じているところも増えている。NPO法人猫と人を繋ぐツキネコ北海道では、譲渡でなく預かる形で猫と暮らせる「永年預かり制度」を設けている。そのほか、猫と出会うルートとしてはペットショップ、知人からの譲渡、捨て猫に出会う、などもある。
とはいえ、高齢者に限らず、まさかの事態は誰にでも起こりうる。飼えなくなった場合どんな解決策があるのか。飼えなくなった場合の猫の行き先を含めて仕組みを設けている団体もある。
例えば、2008年設立で1万匹以上の譲渡実績があるNPO法人東京キャットガーディアンの「ねこのゆめ〜成猫のお引き取りと再譲渡事業〜」、ネコリパブリック(以下、ネコリパ)の「猫生たすけあい制度」など、さまざまな取り組みが出てきている。
飼い続けるという選択肢もある。「みんなの介護」によると、全国には500件以上のペット可施設があり、料金の平均は入居一時金525.4万円、月額利用料20.6万円となっている(26年1月27日時点)。ペットと暮らせる特別養護老人ホームとして、神奈川県横須賀市の「さくらの里山科」が有名だ。また熊本県にも21年に地域密着型特別養護老人ホーム「音ねの森」が開設している。
今回は上記の一つとして、保護猫活動を行っているネコリパブリックの「猫生たすけあい制度」を取材した。

保護猫カフェネコリパブリック東京お茶の水店にいる猫ちゃん(画像:ネコリパブリックHPより)
ネコリバは、保護猫団体や愛護団体ではなく、ビジネスとして自走しながら、保護猫活動を進めている会社だ。同制度は月額480円を支払うことで、万が一飼えなくなった際もネコリパが猫を引き取り、新しい家族も探してくれるシステムだ。
どういう仕組み?

(画像:ネコリパブリックHPより)

(画像:ネコリパブリックHPより)

(画像:ネコリパブリックHPより)
所有権放棄で保健所に持ち込まれる猫たち…
ネコリパは14年に保護猫カフェとしてスタート後、物販、イベント、ふるさと納税、企業との共同事業など、多彩な事業に手を広げてきた。代表の河瀬麻花氏は「保護猫活動を継続していくためには資金を回す仕組みが必要」との考えから事業化した。

保護猫カフェネコリパブリック東京お茶の水店にいる猫ちゃん(画像:ネコリパブリックHPより)
「山あり谷ありながら、拠点・売上ともに増え、企業として成長してきている」と言う。
最近でもっとも経営が厳しかったのはコロナ禍だ。保護猫カフェなどの店は閉めざるを得ないが猫の居場所や世話のための運営費はかかる。
危うく立ち行かなくなるところだったが、ネット通販で発売した「猫も救うマスク(SAVE THE CAT MASK)」の売り上げによって救われた。3カ月待ちになるほどの人気となり、売り上げは約5000万円に。融資制度も利用しながらではあるが、全拠点の運営費を賄えたそうだ。
そのネコリパが猫生助け合い制度を始めたのは、飼い主に何かがあって保健所等に持ち込まれた猫が、ネコリパにやってくるケースが多いことからだ。

保護猫カフェネコリパブリック東京池袋店は22時まで開いている(画像:ネコリパブリックHPより)
「ネコリパブリックがレスキューしている保健所では、所有権放棄で持ち込まれる猫の9割以上は、飼い主が高齢者であることが多い。また高齢猫である場合、譲渡対象にならず殺処分対象にされてしまう」(ネコリパブリック代表 河瀬麻花氏、以下同氏)
1年半前からは年金暮らしの人でも払えるよう、月額を1580円から480円に引き下げた。実際にはこの料金で運営するのは厳しいが、何かあったときの猫たちの安心のため、多くの人に入ってもらうことで活動を支える「寄付」の位置付けにしているという。そのため、猫を飼っていない人からも加入を受け付けている。
現在、利用者は700名弱。すでに亡くなった、事故に遭って飼えなくなったなどで、猫を引き取ったケースも出てきている。
ただ、もともとネコリパの客層が比較的若めのため、加入者の年齢は若めで、主に一人暮らしの人。それでも、高齢者と限らず猫を飼うすべての人に、本来は必要な仕組みだと考えているという。事故、病気など、突如猫の世話ができなくなってしまう可能性は誰にでもあるためだ。
実際、筆者は一人暮らしではないが、「家人もろとも事故にあって死んだら、猫はどうなるんだろう」という不安を外出時に抱えている。誰かにマンションの鍵を預けておけばよいのだが、家族も遠方に住んでおり、そこまで親しい知人もおらず、対策できていないのが現状だ。
猫生助け合い制度に入っておくと、何かあったとき「猫生たすけあいカード」や「ステッカー」などからネコリパブリックに連絡が行き、同時に、事前契約によって自動的に所有権がネコリパブリックに移行する。ネコリパブリックはマンションの管理者や警察などに対し所有権を主張して、マンションに入ることができる仕組みなのだという。
確かに、加入すれば外出時の不安はなくなりそうだ。ただしネコリパから引き取った保護猫などの卒業猫以外は1匹あたり入会金2万5000円(分割も可能)がかかるほか、継続3年未満の場合や即時引き取りの場合は35万円が別途必要となる。
高齢者への認知度アップが課題
若い人には広がりつつある猫生たすけあい制度だが、ネコリパとしては高齢者にこそ知ってもらい、人と猫双方の幸せを広げていきたいそうだ。
「猫ホーム、互助会といったサービスの中には、猫を引き取った後、一生ケージで多数の猫と一括管理するようなものもある。人と一対一で暮らすのが猫にとっては一番の幸せだ。飼い主が変わると猫はショックでしばらく餌を食べなくなったりするが、必ず立ち直る。新しい家族を見つけて幸せになる猫を増やしていきたい」

千葉市内の多頭飼育崩壊現場から保護された猫。千葉市動物保護指導センターで半年過ごしたがおうちが見つからず、ネコリパブリックちばにやってきた(画像:ネコリパブリックHPより)
そこでネコリパの仕組みをより広げていくために、医療福祉法人向けサポートサービスの企業ニューメディーとともに共同出資で立ち上げたのが「ネコリパウェルフェア」だ。保護猫活動と医療福祉を組み合わせた事業を行っていく。まだ具体的な形になったものはないが、①医療福祉事業者向けのイベント②猫生助け合い制度@シニア③保護猫カフェ運営のフレンドリーチェーン運営を事業として検討している。
②猫生助け合い制度シニア版は65歳以上が対象で、現在は大阪府限定で募集しているサービス。万が一の場合の猫の引き取りや家族探しのほか、猫の健康診断(1万5000円/回)、入院などの際の最大1週間の預かり、365日飼育相談などがサービス内容となっている。費用はネコリパ卒業猫で月額2222円と、一般版より高めに設定されている。
③就労継続支援B型事業として猫カフェを運営するというビジネスモデルだ。障がいのある方の社会参加を支援するいわゆるB型事業である。事業所には自治体から「訓練費給付」が給付される。ニューメディー代表取締役/ネコリパウェルフェア取締役の花山翔氏によると、B型事業としての猫カフェが近年増えているが、保護猫を置いているだけで譲渡を行っていないなど、運営に問題のあるところも多いという。
「B型事業は利用者の社会参加や経済的な自立が本来の目的だ。また障がいのある方にとって猫との触れ合いは癒しになり、心身状況の改善にも役立つ。しかし実情では、利益がなくても給付金が出るため、本気でビジネスを行っていない。支払われているのは平均して月額2万円程度というデータがある」(ニューメディー代表取締役・花山翔氏)
ネコリパウェルフェアでは、ネコリパですでに実績のあるフレンドリーチェーン(ネコリパが展開するフランチャイズの保護猫カフェ事業)の仕組みをB型事業に応用し、猫と人双方が幸せになる形での運用を目指すという。
猫問題の根幹には人の問題がある
以上、ネコリパでは保護猫活動にとどまらず、福祉や医療、地域の問題に包括的に取り組んでいる。それはなぜか。
「猫カフェから始まり、保護猫活動を持続させるためのさまざまな取り組みを行う中で、『猫の問題の根幹には人の問題がある』ことに気づいた」(河瀬氏)

保護猫カフェネコリパブリック1号店の岐阜店の様子(画像:ネコリパブリックHPより)
具体的には、高齢者や障がいのある人に何かあって、飼っていた猫が保健所に収容されてしまう、という例が多いのだという。多頭飼育で地域の問題になっている場合もある。
とくに地方において殺処分数が劇的に減らない要因の一つになっていると考えているそうだ。
そこでネコリパでは、数年前からソーシャルビジネスへの取り組みを始めた。岐阜市、飛騨市からスタートしており、岐阜市においては取り組みを始めた21年から殺処分数が大きく減少している。

(画像:ネコリパブリックHPより)
高齢者、障がいのある人、メンタルに問題を抱える人、そういったいわゆる弱者にこそ、動物との絆や愛情は必要だ。それらの人々が動物と暮らせるよう、サポートのある社会こそ豊かだと言えるだろう。猫を愛する者の一人として、問題意識を持っていきたいと感じた。