近所の外国人が「気にならない若者」と「不安な高齢者」…外国人14%の新宿で見えた意外な現実

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外国人が増えれば、トラブルも増えると感じている人は少なくないだろう。だが、人口の7分の1を外国人が占める東京・新宿区では、共生は着実に進み、街には活気も生まれている。それでも、高齢住民の間には消極的な拒否感が残る。この“反対ではないが受け入れきれない”感覚は、どこから生まれているのか。※本稿は、関西国際大学客員教授の毛受敏浩『移民1000万人時代 2040年の日本の姿』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
東京・新宿区の事例は
日本の将来に何を示すのか
人口減少が厳しい日本で外国人受入れが正面から議論されない理由の1つは、社会の高齢化があると考えます。一般的に高齢化した社会では、未知のことへのチャレンジより、現状維持が好まれる傾向があります。
本来必要であると分かりながらも、外国人を受入れるという経験値の少ないことをやるよりも、現状維持で何とかやり過ごしたいという気持ちが勝っているのではないでしょうか。しかし、それでは日本の未来が閉ざされるのは先に見た通りです。
外国人の増加によってさまざまな問題が拡大する懸念が広がっていますが、東京・新宿区のケースを取り上げたいと思います。新宿区の人口は2025年8月1日現在で35万5871人。うち外国人5万634人と総人口の14.2%を占めており、その国籍は134カ国地域に及びます。
図表12は全国と新宿区の年齢別人口構成を比較したものですが、新宿区では最も多い年代が20代となっており、極めて若い年齢層が多いことが見て取れます。

同書より転載

同書より転載
共生は進むが課題も残る
新宿区のリアル
筆者は2012年に、新宿区の条例で設置された「新宿区多文化共生まちづくり会議」の初代会長を務め、現在も副会長を務めています(2025年11月現在)。
新宿区多文化共生まちづくり会議は、外国人住民と日本人住民の調和を図ることを目的としており、30名近いメンバーの約半数は多国籍からなる外国人住民、残り半分は地元の町内会長や商店街の会長、一般住民、学識経験者から成ります。
ここでは、多文化共生に関する区長に対する提言を行うことを目的に、2年程度を目途に数カ月おきにメンバーによる議論が行われます。2時間の会議では発言者が途切れることなく、極めて活発な会議が毎回行われます。
この場で各国の住民を代表して地域で暮らす外国人の実情や課題が提示される一方、日本人住民からは本音での外国人に対する意見が出されます。外国人と日本人が共に対立することなく、また地域を盛り上げていきたいとの共通認識が十分に醸成されており、建設的な議論が行われています。
さて、新宿区の外国人に関して、メディアで国民健康保険への未加入が、問題として取り上げられるケースがあります。国保加入世帯のうち、外国人は3割を占めるものの、納付率は52.7%にとどまるのです(「国保滞納、悩める自治体」2025年11月2日、日本経済新聞)。
新宿区には日本語学校が全国で最も多く50校以上あると言われており、外国人学生が極めて多い地域です。
国民健康保険未加入は、アルバイトで得た賃金を外国人学生が学費、生活費に回して保険料を払うのを怠るケースが考えられる一方、国民健康保険の仕組みについて十分な説明を受けておらず、理解していないことも考えられます。学生であっても加入は必須である、という認識を徹底させる必要があります。
こうした問題がある一方で、新宿区において外国人はなくてはならない存在です。日本語学校や大学、専門学校で学ぶ外国人は高度人材の卵でもあり、また日本語が一定程度、理解できる人たちです。
新宿区の新大久保駅周辺は外国人の起業家による商店やレストランが軒を並べており、東南アジアのような生活力を感じさせる混沌とした街の様子が、多くの日本人の若者をひきつけ、平日でも混み合うほど活気にあふれています。
こうした状況について眉をひそめる日本人住民がいる一方、新宿の活気、活力の源泉には外国人が欠かせないという認識も定着しているとも考えられます。
外国人が多くても
トラブルは少ないという事実
図表13は新宿区が実施した「令和5(2023)年度新宿区多文化共生実態調査報告書」から抜粋したものです。

同書より転載
このグラフは日本人に対する質問項目として、「近所に外国人が生活することについての考え」を聞いています。日本有数の外国人の多い新宿区ですので、読者の多くは外国人とのトラブルが多発し、外国人に対して否定的な意見を持つ日本人住民が多いと想像されるでしょう。
しかし、結果は逆です。外国人が近所に住むことが好ましいと考える人が、好ましくないと考える人より圧倒的に多い結果となっています。「好ましい」と「どちらかといえば好ましい」を合わせると38.9%、一方の「好ましくない」「どちらかといえば好ましくない」の合計は10.8%に過ぎません。
すべての年代において「好ましくない」より「好ましい」が上回っているのです。
さらにこの図表で注目すべきは、若い世代ほど「好ましい」と答える世代が多いことが明確なことです。20~29歳では「好ましい」と「どちらかといえば好ましい」を合わせると52.9%と過半数を超えています。一方、70歳以上では26.9%に留まります。
この数字を見る限り、年齢の高い世代より若い世代の方が外国人受入れに肯定的です。
若い世代ほど外国人を
当たり前に受け入れている
若い人ほど外国に対してアレルギーが少ない傾向は、新宿区の調査だけではなく、法務省出入国在留管理庁が実施した調査でも同様の傾向が見られます。

『移民1000万人時代 2040年の日本の姿』( 毛受敏浩、朝日新聞出版)
2023年10~11月に実施された全国を対象とする「外国人との共生に関する意識調査(日本人対象)」では、地域社会に外国人が増えることに対する感情に関して、「好ましい」が28.7%、「好ましくない」が23.5%、「どちらともいえない」が47.3%の結果となっています。
この調査においては5歳刻みで統計をとっていますが、新宿区の報告と同様に若い世代ほど「好ましい」が多い結果となっています。
若い世代は、学校や近所に外国人がいるのが当たり前の時代に育っており、高齢者が持つような外国人に対する強い抵抗感がありません。
「失われた30年」の後の現在の社会に育つ若者の生活は必ずしも豊かではありませんが、彼らにとって外国人は特別な存在ではもはやありません。
日本の未来を担うのは若い世代であることを考えれば、彼らの意識こそが外国人の受入れの方針を決める際に重要視されるべきであり、客観的な事実をもとに外国人受入れについて未来志向の議論が行われることが必要です。