「AIを使わないと時代に捨てられる」外資系IT社員が見た日本とアメリカの“決定的な意識の差”

外資系IT企業のアメリカ本社でプロダクト・マネージャーとして働く福原たまねぎさん。日本に一時帰国した際、元同僚から聞いた一言に、日米間のAI活用の"決定的な差"を痛感したという。著書『世界の一流が休むためにやっていること』(朝日新聞出版)を発売する福原さんに、米国オフィスのリアルな活用事例を聞いた。
※取材は2025年12月に行いました
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■ツールの利用率が数値化
「文章は自分で書かないでください。大事なポイントを箇条書きでまとめて、あとはAIに作らせてください」
ある日、上司からそんな指示が飛んできた――外資系IT企業のアメリカ本社で働く福原たまねぎさんは衝撃を受けたという。
「僕のようなプロダクト・マネージャーをはじめ、営業、ファイナンスなどビジネス系の職種は『文章を書く、整理する』ためにAIをバンバン活用するようになりました。営業資料、マーケティング案、社内報告書、メール、提案書、企画書など、すべてAIに命令して作るスタイルに変わっています」
米国オフィスでは、AIを使うのは個人の工夫というレベルではなく、経営戦略の一環になっているという。たとえば福原さんが勤める会社では、チームごとに毎月「AIでどう生産性を上げたか」を報告する会が開かれ、成功事例は称賛と共に全社に共有される。
エンジニアに至っては、AIツールの利用率が数値化され、利用率が低い場合は「ツールの機能が悪いのか、ツールそのものの周知が足りないのか」という改善の議論に発展するという。
■社内メールも自動化
なかでも福原さんが驚いたのは、ファイナンスチームの事例だ。
「以前は、プロダクトチームの僕たちが都度ファイナンスにお願いして、異なるデータベースに散らばる情報を手作業で集計してもらっていました。ところがある日から、彼らは毎月のデータをAIで自動集計し、送信してくるようになりました。メールの末尾には、『Generated by Gen AI(生成AIで生成)』と堂々と書かれています。しかも、それを主導したのはプログラミング経験のない文系出身の同僚だったんです」
そんなAI活用の最前線から、福原さんは2025年の夏、日本に一時帰国した。そこで、日米間の「決定的な意識の差」を目の当たりにする。
■「温度差に驚きました」
「日本で働く元同僚に、カジュアルに聞いてみたんです。『AIってどのくらい仕事で使ってるの?』と。すると、返ってきたのは『"AIを使おう"という動きはあります』という言葉でした。つまり、『使うモチベーションはあるけど、使ってない』ということです。その温度差に、正直かなり驚きました」

なぜ、こういった差が生まれているのだろうか。福原氏がまず挙げるのは、文化的な違いだ。
「日本は『便利なもの』よりも『慣れているもの』を優先してしまう傾向があるのではないでしょうか。もちろん、新しい技術に対して慎重になるスタンスは素晴らしいので、それが一概に悪いことだとは思いません。
ただアメリカでは、世代や年齢に関係なく、便利で合理的ならそれを使うという考え方が根強い。プライベートでAIを使っている人も多いから、仕事にも活用するという切り替えがスムーズなのかもしれません」
■資料づくりは「7割」でOK
もう一つ、日本の職場のAI活用で懸念されるのが「精度」の問題だ。AIが生成したアウトプットは、結局は人間の手で調整する必要があり、かえって「検品作業」が増えるだけなのではないか?
これに対し、福原さんは2つの視点から見解を述べる。
「まず、日本では『資料づくり』に求められるレベルが高いという点があると思います。アメリカでは、クオリティよりもスピードを重視し、正しく伝わるなら7割の完成度でもいいから早くアウトプットしようという意識があります。これは文化的な許容度の差ですね。
もう一つ指摘できるのが、AIの成長スピードは本当に速いという点です。僕も正直、2024年の段階では、AIは『検品作業』が多すぎて使い物にならないと感じていました。しかし、検品にかかる時間はどんどん減っています。日本でも数ヶ月後には、今感じている不満の多くが解消されている可能性が高いと思います」
■「時代に捨てられる」緊張感
「AIの性能は黙っていても向上します。僕らは、自分たちが作り上げてきたシステムや使い続けてきた道具を捨て去ることに抵抗を感じてしまう。でも、今のやり方を『捨てる力』がなければ、自分が時代に『捨てられる』。そんな緊張感が、日本にはまだないように感じます」
時代に捨てられる。アメリカではすでに、そのようなことが起きていて――。
※【後編】<AIが仕事を奪うアメリカで、外資系IT本社の彼が訴えたいこと 「仕事にやりがいを持ってはいけない」>に続く
(文/書籍編集部 白石圭)
※インタビューの内容は個人の意見であり、所属会社・団体を代表するものではありません。

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