AIが仕事を奪うアメリカで、外資系IT本社の彼が訴えたいこと 「仕事にやりがいを持ってはいけない」

■AIを使うか、死ぬか, ■若手から代替されていく, ■タクシー運転手も奪われる, ■「やりがいの持ちすぎ」はあまりにも危険

 エンジニアからタクシードライバーまで――急速に進化するAIにより、大幅な人員削減が行われているアメリカ。その苛烈な環境が、今、「ある哲学」を生んでいるという。外資系ITの米国本社で働き、著書『世界の一流が休むためにやっていること』(朝日新聞出版)を発売する福原さんに、過酷な現状を聞いた。

※【前編】<「AIを使わないと時代に捨てられる」 外資系IT社員が見た日本とアメリカの“決定的な意識の差”>から続く

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■AIを使うか、死ぬか

「アメリカのIT企業では、すでにAIを活用することが前提の業務量を割り振られています。手作業では到底、完遂不可能な量とスピードが求められる。これは、AIを使うことが好きでなければ本当に厳しい状況です」

 外資系IT企業のアメリカ本社でプロダクト・マネージャーとして働く福原たまねぎさんは、現地の変化をそう語る。きっかけは、2025年夏ごろ。GoogleがGemini 2.5シリーズを、OpenAIがChatGPT-5をリリースした頃だという。

「その前から、語学学習用アプリ『デュオリンゴ』のCEOが、全社メールで『AIファースト』を掲げたというニュースなどが大きな話題になっていました。経営者たちのトップダウンの号令は、『推奨』ではありません。『AIを使うか、死ぬか』というレベルのプレッシャーとして現場に伝わっています」

■若手から代替されていく

 統計によると、2025年1月~11月におけるアメリカの人員削減数は117万人に上った。これはリーマン・ショック時の2008年(約122万人の削減)に匹敵するレベルの雇用喪失だ(米チャレンジャー・グレイ&クリスマスの12月4日のリポートより)。

 特にAIの影響を強く受けているのがITエンジニアだと、福原さんは言う。

「我々が普段扱う言葉、つまり自然言語は、まだAIの出力が不安定なところもあります。しかし、ロジックの構築物であるプログラムの出力は、AIが最も得意とする分野の一つです。これにより、エンジニアは若手から順に仕事が代替されはじめています」

 当然、自然言語の処理能力も向上を続けている。福原さんが日常の業務で感じているのは、音声理解の精度だ。

■タクシー運転手も奪われる

「Zoomが会議終了後に、ミーティングサマリーを自動出力してくれるようになったことで、議事録を作るという作業がなくなりました。

 日本では、若手の社員が議事録を書いて仕事の基本を学ぶという文化もあったと思います。しかしこれからは、AIが作ったサマリーを読むことで、どうやって項目を分け、どのように結論をまとめるかなどを学んでいくのではないでしょうか。コンサルタントのような、話の要点をすばやくまとめる能力も代替されていくのではないかと感じます」

■AIを使うか、死ぬか, ■若手から代替されていく, ■タクシー運転手も奪われる, ■「やりがいの持ちすぎ」はあまりにも危険

 代替の波はエンジニアやコンサルにとどまらない。

 福原さんが仕事で訪れるサンフランシスコなどでは、最新のAIを搭載した自動運転車によるタクシーが街を走っている。これまでは、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)などライドシェアサービスのドライバーとして働くことが、会社を辞めた人々の受け皿の一つとなっていた。その仕事も、AIに奪われ始めているという。

「影響を受けるのはホワイトカラーだけではないんです。アメリカ全体で“社会の再構築”が始まっているという感覚があります」

■「やりがいの持ちすぎ」はあまりにも危険

 このような苛烈な環境が、アメリカで働く人々の間に一つの哲学を生んでいる。それは、「仕事のプライオリティを下げ、仕事に自分のアイデンティティを置きすぎない」という考え方だ。

「レイオフ(一時解雇)の恐怖と常に隣り合わせの状況で、会社や仕事にやりがいを持ちすぎるのはあまりにも危険です。だからこそアメリカの人たちは、仕事は人生の一部にすぎないと割り切っています。仕事から適切な距離を保つことで、自身のメンタルを守っている。そういう価値観が自然に生まれているんです」

 仕事はいつなくなってもおかしくない。投資のように、何事も分散することが大事な時代なのかもしれない。

※福原たまねぎさんの書籍『世界の一流が休むためにやっていること』(朝日新聞出版)では、アメリカの天才エンジニアやエリートビジネスパーソンたちがどのように仕事から距離を取っているのか、そのメンタルの保ち方や具体的な働き方などを詳しく解説しています

(文/書籍編集部 白石圭)

※インタビューの内容は個人の意見であり、所属会社・団体を代表するものではありません。

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