みずほ銀行が示す、今後5年間"需要が伸びる"業種

石破首相「1丁目1番地」の政策である地方創生, 外国人投資家の関心が低い「地方創生関連銘柄」, 自民党総裁選の論点になった「解雇規制の緩和」, 「日本産業の中期見通し」に基づくセクター判断, 期待できるのは半導体、情報サービス、医療関係

「地方創生関連銘柄」は外国人投資家の関心が低いという(写真:FUTO/PIXTA)

昨年11月以降、石破総理は「地方創生」を加速させる取り組みを矢継ぎ早に表明してきましたが、みずほ証券エクイティ調査部チーフ株式ストラテジストである菊地正俊氏は、それに関連する「地方創生銘柄」に外国人投資家からの関心が集まっていないと指摘します。
総理肝いりの政策が株価の上昇に期待できない中、菊地氏が注目する業界はどこなのか。同氏の著書『アクティビストが日本株市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方』から一部を抜粋・編集する形で解説します。

石破首相「1丁目1番地」の政策である地方創生

石破首相は2024年11月の所信表明演説で、

【年表で振り返る】失敗だらけの「地方創生」政策

「30年前、日本のGDPは世界全体の18%を占めていたが、2023年は4%に低下した。1位だった国際競争力(IMD世界競争力ランキング)は、いま38位に落ちた」

と危機感を募らせた一方、

「いまこそ賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現し、我が国を世界をリードするイノベーションが常に生み出される豊かな国としていく」

と、岸田前政権の経済政策を引き継ぐ姿勢を見せました。

石破首相のライフワークである地方創生については、「『地方創生2.0』を起動し、我が国の社会や経済の起爆剤とするため、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増する。地方の皆様が希望と幸せを感じていただくことも重要だ」と語りました。

石破首相は2024年11月に地元の鳥取市で開かれた「日本創生に向けた人口戦略フォーラム」で、人口減少対策として①男女間と地域間の賃金格差の解消、②女性や若年層に多い非正規雇用の正規化、③出産などを機に女性の正規雇用率が下がる「L字カーブ」の解消、④男女ともに希望どおり育休を取得できるよう、職場の慣行や意識を変革することなどを挙げました。

いずれも目新しい施策ではなく、人口減少対策に妙案はないことを示唆しました。

外国人投資家の関心が低い「地方創生関連銘柄」

政府の「新しい地方経済・生活環境創生本部」が2024年11月に開催した第1回有識者会議の事務局資料は、基本目標として、①地方における安定した雇用の創出、②地方への新しい人の流れをつくる、③若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶える、④時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守り、地域と地域を連携することを挙げました。

地方創生の3本の矢として、①財政支援の矢~地方創生関係の交付金等、②人材支援の矢~地方創生人材支援制度等、③情報支援の矢~地域経済分析システム(RESAS)等を挙げました。

2015~2020年に全国1741自治体のうち、317市区町村で人口が増加したとして、人口減の自治体ばかりでないことを示しました。2023年も東京圏への転入超過数が11.5万人と、東京一極集中が止まらないなか、政府は2024年11月に「二地域居住促進法」を施行しました。地方に移住してもらうのがむずかしいため、都市と地方の二重生活を促す意図があります。

歴代政権の地方創生策は失敗の歴史といえますが、石破政権は今後10年間集中的に取り組む「地方創生2.0」の基本構想を2025年夏までに策定するとしています。

石破首相は2024年12月に、地方は経済的に決して貧しいわけでないのに、若者の流出が止まらないのは、地方に楽しさがないからだとして、「楽しい地方」を目指す、2025年1月には「令和の日本列島改造」に位置づけると述べました。

地方創生関連株には地銀、地方本社企業、ふるさと納税関連株などがありますが、外国人投資家の地方関連株への関心は高くありません。

石破首相「1丁目1番地」の政策である地方創生, 外国人投資家の関心が低い「地方創生関連銘柄」, 自民党総裁選の論点になった「解雇規制の緩和」, 「日本産業の中期見通し」に基づくセクター判断, 期待できるのは半導体、情報サービス、医療関係

(出所:『アクティビストが日本株市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方』より)

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自民党総裁選の論点になった「解雇規制の緩和」

2024年9月の自民党総裁選で、小泉進次郎元環境相は、

「私は長年議論されながら、決着のついていない問題を解決する。1年以内に行うアジェンダとして、労働市場改革、政治改革、選択的夫婦別姓を挙げたい。とくに労働市場改革とライドシェア解禁が2本柱だ。

労働市場改革が、スタートアップ支援にもつながる聖域なき規制改革を進める。日本の雇用慣行は昭和時代のままだ。解雇規制の緩和で、正規雇用が増えるはずだ。

解雇規制の見直しに関して、大企業へのリスキリングや再就職支援の義務化と併せて、解雇から再就職までの生活支援を検討する。正規・非正規社員の格差を是正し、もっと多くの人が正社員で働ける環境をつくる」

と主張しましたが、当選できませんでした。河野太郎前デジタル担当相も、

「トップダウンで改革スピードを上げる。正社員と非正規社員の格差を是正する。リスキリングにより、賃金が高いところへの労働移動を促す。中小企業の不当解雇に対して、金銭的補償ができるようにすべきだ」

と主張しましたが、石破首相をはじめ他の候補者は労働市場の改革について積極的な発言を行いませんでした。安倍政権下でも解雇規制の緩和が議論されましたが、労使双方から反発の声が上がり、先送りされました。

現在、労働契約法は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定しており、「整理解雇の4要件」は判例によって、①必要性、②回避努力義務、③人選の合理性、④手続きの合理性とされています。

ただし大企業は世の中の悪評を恐れて、整理解雇を行うことがほとんどなく、人員削減はほとんどの場合、割増退職金による希望退職者募集で行われます。

たとえば、第一生命HDは2025年1月から、50歳以上で勤務期間が15年以上の社員等を対象に、1000人の早期希望退職者の募集を始めました。退職金に加えて、基本給の最大48カ月分の支援金を支払い、再就職も支援するとしました。

解雇が容易な米国ではコロナ禍期に失業率が一時15%に急上昇しましたが、その後の景気回復局面で、労働者が旧来産業から成長産業に移り、産業競争力が一層強まりました。

一方、解雇がむずかしく、労働移動が少ない日本では旧来産業に優秀な人材が埋没していることが産業の新陳代謝を遅らせています。

日本の企業経営者は外国人投資家からリストラや事業ポートフォリオの見直し等を求められたときに、社員を解雇・異動させることが容易でないことを、やらない理由に挙げることが少なくありません。

外国人投資家から労働市場の改革を求める声が長年続きながら、なかなか実施されないことが、外国人投資家を日本株投資から遠ざける要因になっています。

「日本産業の中期見通し」に基づくセクター判断

みずほ銀行産業調査部は2024年12月に、「日本産業の中期見通し-向こう5年(2025-2029年)の需要動向と求められる事業戦略-」という100ページにおよぶレポートをリリースしました。

人口減少等を背景に、電子部品、石油、化学、鉄鋼、非鉄金属、自動車、住宅、物流などで国内需要が減少すると予想されています。

物流では宅配便個数が年率+0.7%で増えるものの、国内トラック輸送量は同▲1.2%で減ると予想しています。2024年はC&FロジHDを巡って買収合戦が起きましたが、みずほ銀行は物流業界が、人手不足が深刻化する一方、輸送量の減少が進むため、プレーヤーの協調、集約・淘汰の動きが出てくると予想しています。

データセンター向けなど電力需要の増加期待は強いですが、みずほ銀行は国内電力需要の年平均伸び率が+0.7%とそれほど高い伸びを予想しているわけではありません。

新規住宅着工戸数は2023年82万戸→2029年75.5万戸と減りますが、三大都市のオフィス床需要は同期間に1060万坪→1130万坪、名目建設投資額は71兆円→75兆円と好調に推移する見通しです。ストックの増加を背景とした建築補修の増加等が予想されるためです。

石破首相「1丁目1番地」の政策である地方創生, 外国人投資家の関心が低い「地方創生関連銘柄」, 自民党総裁選の論点になった「解雇規制の緩和」, 「日本産業の中期見通し」に基づくセクター判断, 期待できるのは半導体、情報サービス、医療関係

(出所:『アクティビストが日本株市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方』より)

2025年は団塊世代が後期高齢者に入る「2025年問題」が起き、政府は医療・介護費用の抑制姿勢を強めるでしょうが、高齢者の増加を背景に、国民医療費は2023年48兆円→2029年54兆円(年率+2.1%)、介護費用は同期間に12兆円→14兆円と増えると予想しています。

ただ、政府は医療・介護業者の利益を削ぐような仕組みを導入する可能性があるため、関連業者はマネタイズのための経営手腕が重要でしょう。医療提供体制の再構築に向けたDXが必須となります。

期待できるのは半導体、情報サービス、医療関係

国内外で需要の高い伸びが期待できるのは半導体、エレクトロニクス完成品(スマホ・PC・白物家電等)、情報サービス、メディアサービス、医療機器、医薬品など数少ない業種です。足元では国内外の半導体株は調整していますが、中長期的な観点からは買い場といえましょう。

みずほ銀行は白物家電が生活必需品として、人口・世帯成長なりの成長に回帰すると予想していますが、エレクトロニクス完成品(スマホ・PC・白物家電等)は日本企業が世界シェアを落としているので、なかなか業績につながらないでしょう。

情報サービス市場はグローバル市場が年率+9.9%、国内市場も+8.2%と高い伸びが続き、国内外企業の好業績の継続が予想されます。2024年のデジタル赤字(日本人がAWS利用等に支払う費用)が6兆円超に上ると予想されていますが、日本のDX化の進展は国内企業より海外企業の業績の追い風になっています。

医薬品については、トランプ政権の医薬品政策の不透明性がありますが、みずほ銀行は医療機器のグローバル市場が年率+5.1%の高い伸びを続けると予想しています。

建機は中国不動産市場の低迷やトランプ大統領による資源掘削政策の不透明性がありますが、みずほ銀行は建機の世界需要が年率+2.2%の増加と予想しています。

訪日外客数については、2024年予想の3678万人から、2029年には4749万人に増えると予想していますが、政府目標の2030年6000万人にはとどかない見通しです。