テスラが落ちた深い穴

テスラが発表した直近決算は不振が際立つ
米電気自動車(EV)大手テスラのトップは多忙で知られているが、本業に割く時間を間もなく大幅に増やすようだ。それが吉と出るかは不明だ。
イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は22日の1-3月期(第1四半期)決算説明会で、「政府効率化省立ち上げの主な作業が完了した」ため、5月からテスラに割く時間を増やすと述べた。これに先立ち同社が発表した四半期決算は、ここ最近ではまれにみる低調ぶりだった。売上高(前年同期比)はこの13年で最大の落ち込みとなり、営業利益は市場予想を約65%下回った。
発表がこのタイミングだったことで、マスク氏の脇見運転がテスラの苦境の主因のように聞こえるかもしれない。だが今回の決算で明らかになったのは、トランプ米政権におけるマスク氏の仕事ぶりが物議を醸し、購入者になっていたかもしれない多くの人にとってテスラのイメージが悪くなったということだ。同社は22日の株主宛て書簡で、需要を左右する要因に「政治的雰囲気の変化」を挙げた。マスク氏は決算説明会の冒頭で「反発」に言及し、「無駄な大盤振る舞いの受益者」が同社に抗議していると述べた。また、引き続き週に「1~2日」を政府の事案に割く意向を示した。
首都ワシントンで過ごす時間が多少減ったとしても、マスク氏の政治色が弱まることはなく、テスラの先行きに影を落とし続ける可能性がある。貿易戦争は同社のコスト上昇や消費者信頼感の大幅な悪化をもたらしかねず、消費者は新車購入を控えるようになるかもしれない。
こうした要因の多くは、1-3月期にはまだ本格化していなかった。それでもテスラの自動車事業の売上高は前年同期比21%減の約129億ドルとなり、下方修正後の市場予想を13%下回った。同事業の粗利益率も11.3%と大幅に低下し、2012年以来の低さとなった。同社は3カ月前、今年の年間売上高がプラス成長に回復するとの見通しを示していたが、これを取り下げるとみられる。プレスリリースで「4-6月期(第2四半期)の決算発表時に改めて25年の見通しを示す」と述べた。
それでもテスラ株は22日、引け後の時間外取引で約5%上昇した。米国株が総じて買われた流れを受けたほか、同社が十分罰を受けたとの見方も追い風になった。同日の終値はドナルド・トランプ大統領が関税を発表した4月初めの水準を16%近く下回り、年初来では41%下落。ファクトセットのデータによると、S&P500種指数構成銘柄で年初来下落率がこれより大きいのはわずか5銘柄だ。
値下がりしたとはいえ、テスラ株は依然として割高だ。予想株価収益率(PER)は現在88倍で、年初の120倍超からは低下したものの、他の自動車メーカーのみならず米画像処理半導体(GPU)大手エヌビディアといった巨大テック株さえ大きくしのぐ。テスラのこの高い評価は、人工知能(AI)や自動運転車、ロボティクス分野における同社の取り組みへの期待によるところが大きい。
マスク氏は22日、来年半ばごろから自動運転車への取り組みが「目に見える形で」事業に貢献し始めると述べた。ただ、同氏が自ら掲げた予想を達成できなかったことは一度や二度ではない。特に今は、こうしたベンチャー事業の成否は、マスク氏が自身のイメージをうまく管理できるようになるかどうかにもかかっているかもしれない。テスラ車を買おうとしない人が同氏のロボットを家に置くとは考えにくい。