軽自動車に「安全支援システム」が普及しないのはなぜか? 国内最多2349万台でも、搭載率「4割未満」という現実
軽自動車安全技術の現状
本田技研工業が100%出資する子会社「ホンダアクセス」は、2025年8月25日、家族での長距離ドライブに関する調査結果を公表した。同社は四輪車の純正用品を開発・生産・販売している。
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今回の調査は、片道100km以上の長距離ドライブを経験した20~59歳の自家用車運転者1000人を対象に、インターネットで実施された。男女比は半々で、調査期間は2025年6月27日から30日まで。
保有車の内訳は、軽自動車が37.1%で最も多く、次いでミニバン33.6%、コンパクトカー19.3%、スポーツタイプ多目的車(SUV)16.8%、セダン7.1%だった。自動車検査登録情報協会によると、2025年5月末時点で軽乗用車の保有台数は
「約2349万台」
に達し、普通車や小型車を上回っている。乗用車全体に占める割合は37.7%で、今回の調査の軽保有比率とほぼ一致する。
調査結果では、安全運転支援技術の普及がSUVやステーションワゴンなど車格の大きい車種に偏る一方、軽自動車では依然として低水準にとどまることが明らかになった。本稿では、軽自動車への安全運転支援システムの必要性を調査結果から検証し、ユーザーの利用実態や潜在的ニーズを深掘りする。また、その普及が自動車産業に与える影響も考察する。
長距離家族車の実態

「家族での長距離ドライブに関する調査2025」(画像:ホンダアクセス)
家族での長距離ドライブに最も使われているのはミニバンで32.4%を占める。次いで軽自動車19.1%、コンパクトカー15.7%、SUV15.0%、セダン6.4%だった。軽自動車は室内が狭いにもかかわらず、一定割合の利用が確認された。
安全運転支援システムの搭載率は、車線維持支援システムが32.8%で最も高く、次いでクルーズコントロール(ACC除く)31.1%、追従型クルーズコントロール(ACC)17.5%だった。
車種別ではSUVの搭載率が全体平均を10ポイント以上上回る。特に車線維持支援システムはSUVで半数以上、ステーションワゴンでも44.2%に達した。
一方、軽自動車やコンパクトカーの搭載率は低く、いずれのシステムも搭載されていない割合は6割を超える。軽自動車は長距離ドライブに不向きで車両価格も抑えられているため、安全支援システムの搭載が進まない現状が明らかになった。
コストと安全の両立策

「家族での長距離ドライブに関する調査2025」(画像:ホンダアクセス)
軽自動車やコンパクトカーは、
・高速走行での安定性
・車体重量の制約
から、衝突時の被害が大きくなりやすい。事故時の被害が大きい車ほど支援システムの効果は相対的に高く、軽自動車は恩恵を最も受けやすい車格である。
一方、軽自動車ユーザーは支出に敏感だ。今回の調査では、日帰り長距離ドライブの平均支出額は1万2633円で、前年より910円減少した。宿泊をともなうドライブでも節約志向は鮮明だ。安全支援システムなどの装備を充実させれば車両価格は上昇し、購入意欲の低下は避けられない。
このため、軽自動車への支援システム搭載には、
「安全性とコストのトレードオフ」
が存在する。経済的なメリットと利便性を両立させるには、今後のコスト削減が不可欠となる。
ACC利用の限定傾向

「家族での長距離ドライブに関する調査2025」(画像:ホンダアクセス)
各システムの利用状況を確認すると、ACCを使うドライバーの約4割は「状況次第で使用」と答え、常時利用は少ないことがわかった。
一方、車線維持支援は約半数が「常時利用」しており、運転負荷の軽減に寄与している実態が見える。
また、クルーズコントロールの利用率は前年の32.1%から21.2%に低下した。信頼性の問題に加え、操作のしづらさも利用を妨げている。
支援システムの必要性は理解されているものの、信頼性や使いやすさがユーザーの課題となっている。
支援システムの潜在需要

「家族での長距離ドライブに関する調査2025」(画像:ホンダアクセス)
ドライバーはどのような場面で安全運転支援システムを使いたいのだろうか。調査によると、疲れた際に車線維持支援を求める傾向が強く、35.9%が利用していた。また、交通量が少ない場面やノロノロ渋滞でのACC利用も3割を超え、渋滞や高速移動での負担軽減ニーズが一定数あることがわかった。
・長距離ドライブ
・渋滞
など、運転の負荷が大きい場面で支援システムが求められる傾向は明確である。
年齢別では、若年層の男性が長距離ドライブ中にトラブルを経験する割合が高く、20代から30代男性では75%に達した。この層には安全運転支援システムの潜在需要があり、普及を広く促す対象となり得る。
軽自動車への支援システム普及は、センサーや制御ユニットなど部品の搭載増加を通じて、
・部品需要の拡大
・サプライチェーン拡張
など経済的波及効果を生む可能性がある。またリセールバリュー(再販価値)の差別化要因ともなり得る。システムの有無が中古車市場の価格に影響し、先行投資としての購入動機を生む可能性もある。
一方、グローバル市場では欧州NCAP評価などで安全技術が進展している。日本でも2025年から自動車関連法の改正が始まり、安全運転支援技術の評価比重が高まった。軽自動車も例外ではなく、システム普及が遅れると長期的な競争力の低下を招くおそれがある。
コスト制約と普及課題

渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)(画像:本田技研工業)
軽自動車はコスト制約が大きいため、高額な安全運転支援システムはオプションでも選ばれにくい。しかし、ドライバーの安心と安全を確保する観点から、こうした制約を維持する限界は近づいている。
今回の調査では、ドライバー教育の不足も浮き彫りになった。高速道路の電光掲示板に表示される「三角マーク」を理解している人は1割未満で、基礎的な運転リテラシーが不足していることがわかった。このため、支援システムを十分に使いこなせるドライバーが少なく、普及を妨げる要因になっている可能性がある。
今後は、徹底したコストダウンと規模の経済を活かして、軽自動車に安全運転支援システムを標準装備することが望ましい。無線アップデート(OTA)によるソフト更新やソフト型支援機能の拡大により、大きな費用負担を避けつつ、後付けに近い形で提供できる余地もある。
2025年にはホンダや日産の一部軽新型モデルでACCを標準装備し、販売力を高めた例もある。将来的には
「軽 = 低コスト・低安全性」
という固定観念を崩せる可能性があり、支援システムの普及で軽自動車の価値を大きく向上させられる。
市場変革と軽の安全

軽自動車(画像:写真AC)
今回の調査で明らかになったのは、軽自動車は国内で最も多く使われているにもかかわらず、安全運転支援システムの搭載が限られていることだ。しかし、事故リスクが相対的に高いことを考えると、軽自動車こそ支援システムの恩恵を最も受けやすい車種である。
今後の普及拡大には、
・低価格化
・ユーザー教育
・中古市場でのリセールバリュー評価
という三つの施策を一体で進める必要がある。支援システムの搭載拡大は、交通事故削減にとどまらず、モビリティ市場の構造変化にも直結する課題だ。
調査結果から導かれる現実的な結論は、これからの軽自動車には安全運転支援システムが不可欠であるという点である。その実現には、官民が一体となった迅速な取り組みが求められる。