「学びたくない日本」アメリカとは8倍差。リスキリングブーム凋落の納得の理由

日本でもリスキリングという言葉を聞くようになってしばらくたつが、実際にスキル習得を望んでいる人は思いの外少ないようだ。
「日本人は勤勉」という考えはもはや過去の幻想にすぎないのかもしれない。
日本の労働者は、アメリカの労働者に比べて8倍「学ぶ気がない」——。Indeed Japan(以下、インディード)が実施した調査 から、そんな現実が明らかになった。
日本でも「人への投資」や「リスキリング」の重要性が指摘され始めて数年経つ。ソフト面では確かにさまざまなリスキリング関連サービスが広がってきたものの、調査結果からは、日本の労働市場における労働者・企業双方のスキル習得に対する意識の低さが露見した形だ。
どうすればスキル習得の意欲が高まるのか。企業はそのために何ができるのか。
新たなスキル「生かし方」が描けていない

日米の労働者の習得したいスキルに対する考え方の違い。日本はアメリカに比べて「スキルを習得したくない」という回答が約8倍になっている。
インディードが実施した今回の調査は、日本とアメリカの労働者(各国3096名)および採用担当者(各国1030名)を対象に、早稲田大学政治経済学術院 大湾秀雄教授の監修のもと実施した。
調査結果からまず明らかになったのは、日本人労働者のリスキリングへの消極性だ。
調査によると、日本の労働者は「スキルを習得したいと思わない」と思う人が全体の3割(29.7%)で、アメリカ(3.7%)の約8倍にのぼっていた。また、自社のスキル習得に対する取り組みが「特になし」と答えた日本企業も22.7%と、アメリカ(2.0%)の10倍以上だった。
大湾教授によれば、スキル習得意識の低さに加え、日本では「自己研鑽活動を何もしていない」と回答した人も全体の半数以上(50.5%)で、アメリカ(同9.7%)との差は歴然だった。
大湾教授によると、もともと日本では、雇用の流動性の低さや、会社主体の配置制度といった労働慣行の影響もあり、新たなスキルを習得するモチベーションが低い傾向があったという。調査では、リスキリング市場が盛り上がってきているなかでも、まだまだ根強い「日本的」な労働環境が残っている現実が可視化された形だ。

8月27日、今回の調査結果に関するセミナーが行われた。登壇者は写真左から、インディードリクルートパートナーズ リサーチ部 笠井 彰吾氏、Indeed Hiring Lab エコノミスト ⻘⽊ 雄介氏、早稲田大学政治経済学術院 大湾秀雄教授。
また、今回の調査では、個人の「キャリア意識」がリスキリングの意欲に強く影響することが分かってきた。
「調査では、明確なキャリア理想像を持つ人ほど、身につけたいスキルの数やスキル獲得のための活動数が多いことが示されました。その一方で、『明確なキャリアプランを持っている』と回答したビジネスパーソンが日本は全体の9.7%とアメリカ(48.9%)に比べ著しく低い。
日本の場合は、転職回数が多い人ほどキャリア意識が高く、獲得したいスキル数が多い。つまり、自分の市場価値を意識するということが、スキル獲得につながっていくということを表す結果になっています。」(大湾教授)
明確なキャリアプランを持つ人は、リスキリングを自分が望むキャリアを実現するための手段の一つとして捉えていることが伺える。

日本やアメリカを含む6カ国を対象に今年実施した調査においても、キャリア意識とリスキリングの関係性や、日本の意識の低さが示された、と笠井氏は語る。
インディードリクルートパートナーズ リサーチ部の笠井氏は、今回の調査とは別に、日本やアメリカを含む6か国を対象に2025年に実施した就業意識に関する調査 をもとに、日本人のスキル習得に対するモチベーションの低さを次のように分析する。
「リスキリングで学ぶ内容を選ぶ際の基準について聞いたところ、『現在の仕事の役に立つ』や『将来のキャリアチェンジに必要』との回答が日本は少ない。一方で、『わからない』との回答が諸外国に比べ最も多くなっています。
日本ではリスキリングをしたときに、仕事やキャリアにどういうメリットがあるか、どんな変化があるのか、イメージを持ちにくい状態にあるのかなと思っています。」(笠井氏)
企業の人材マネジメントが学びを加速する
労働者が自身のキャリアについて明確なイメージを持ち、リスキリングに取り組むためには何が必要なのか。
大湾教授は、
「これまでのさまざまな調査を踏まえても、日本はアメリカに比べて、会社による支援が、キャリア意識やリスキリング意欲により大きな影響を与えることが分かっています」
と、企業による支援の重要性を指摘する。
雇用の流動性が高く、個人のスキル習得が労働市場で生き残るために不可欠なアメリカと異なり、日本におけるリスキリングは、企業目線で見ると、従業員に成長を促すことで、事業戦略や外部環境の変化に適応していくための仕組みという側面も強い。
しかし企業側への調査結果を見ると、自社のリスキリング支援の取り組みについて「特になし」とする日本企業は22.7%(アメリカは2.0%)に達している。さらに会社からの支援について、労働者側は「特になし」とする回答が45.6%だった。日本では、アメリカよりも企業からの支援が少ないばかりか、実際に支援していても、それが従業員に伝わっていない状況にあるようだ。

リスキリング支援を実施する割合は、労働者・採用担当者共に日本はアメリカに比べて低い。また、アメリカでは「社員同士で知識・スキルを学び合う・共有し合う場」が提供されている割合も多く、スキル習得を従業員に委ねず、企業が積極的にコミュニケーションの機会を提供していることが伺える。