「日本車を再び偉大に!」 トップ10に国内メーカーわずか3社、EV後塵と中国勢急伸 復権のカギは何か?
日本車競争力再生策
かつて日本車は、高品質と革新性の象徴として世界中で広く支持されていた。しかし、モビリティ環境の大きな変化にともない、日本車の存在感は低下しつつある。
【画像】ホンダとトヨタの「年収差」を見る!(14枚)
日本経済新聞が2025年8月に報じた「2025年上半期の世界新車販売ランキング」によると、上位5社はトヨタ、フォルクスワーゲン、現代自動車・起亜、GM、ステランティスだった。トップ10には、トヨタ、ホンダ(9位)、スズキ(10位)の3社が入るにとどまる。トヨタ以外の2社は前年実績を下回った。一方、比亜迪(BYD)が7位、吉利汽車が8位と、中国勢は前年から約3割の伸長を遂げている。
電気自動車(EV)へのシフトも進み、米中欧や韓国の自動車メーカーはシェアを急速に拡大している。日本勢はハイブリッド車(HV)では優位を保つが、EV領域では後塵を拝しており、新興勢力の成長とは対照的である。この状況下で日本車が復権するには、単にEVシフトに追随するだけでは不十分だ。独自の強みを生かした別軸の戦略が不可欠となる。本稿では、トランプ大統領の「Make America Great Again」に便乗し、
「Make Japanese Cars Great Again(日本車を再び偉大に)」
を掲げる。すなわち、日本車を再び世界市場で競争力ある存在に戻す具体的要件を検証する。各項目を順に分析し、日本車再興の戦略的方向性を明らかにする。
軽自動車のグローバル戦略

現在の軽自動車規格(画像:軽自動車検査協会)
まず注目すべきは、軽自動車市場のグローバル展開である。
国内市場は長年、約4割を占める軽自動車に依存してきた。輸出される軽自動車のほぼすべては中古車で、輸出先はパキスタンや香港など限られた国にとどまる。国内軽市場はガラパゴス化しており、
「ガラ軽」
とも呼ばれる。排気量660cc以下の軽規格は世界標準と合致せず、日本独自の規格として発展してきた。そのため、国際競争力を発揮できる領域ではないのが現状だ。
この閉鎖的市場を転換するには、排気量や車両サイズを1.0リッター未満まで拡張することが有効である。新興国市場での需要創出につながるからだ。中国の小型車規格に合わせれば、輸出の可能性も広がる。
東南アジア、インド、アフリカなどでも新たな需要を喚起できる。日本が誇るコストパフォーマンスと高品質を武器に、新たな軽自動車戦略を展開できるだろう。
日本発のAI交通インフラ

神奈川県平塚市が実施した自動運転バス実証実験の様子(画像:平塚市)
日本国内では、政府主導による自動運転実証実験が年間50か所程度で行われている。実施地域は限定されるが、その頻度は高い。しかし課題も多い。
・自動運転に必要な機材を搭載した車両のコスト採算性
・現行道路交通法への規制組み込み
が検討課題である。さらに、実運営が地方自治体に大きく依存している点も見直す必要がある。
今後は全国規模での導入が求められる。実証実験で得られた膨大な走行データを蓄積し、制御システムをパッケージ化できれば、自動運転バス事業を輸出産業として展開する道が開ける。
海外市場で事業を拡大すれば、高齢化が進む国や公共交通弱者が多い地域で、自動運転バスが社会インフラとして広がる可能性がある。これが実現すれば、日本の自動車産業にとって新たな輸出事業の柱となるだろう。
日本独自技術の挑戦

ウェイモのロボタクシー(画像:ウェイモ)
ロボタクシー事業では海外勢が先行している。アルファベット傘下のウェイモや、中国企業の百度、Pony.AI、WeRideが市場に参入済みだ。テスラは2025年6月からテキサス州オースチンでサービスを開始しており、ロボタクシー用車両の販売も含め事業拡大を計画している。
日本では4月、ウェイモが東京で実証実験を開始した。ホンダもGMと共同で2026年から都内サービス開始を予定していたが、中止となった。今後もさまざまな企業の参入によって、事業化はさらに進むと期待される。
課題は多い。自動運転を前提とした法規制の整備に加え、EV主体であることから充電インフラの整備も急務である。採算性も課題で、旧来のタクシー運賃と比較されるため、限られた予算内で利益を生み出すビジネスモデル構築が求められる。
将来像としては、自動運転バスの実証実験で得られた走行データや制御システムの応用が考えられる。さらに、日本独自の技術で一般道を主体とするロボタクシーを展開すれば、先行する海外勢との差別化が可能となる。高精度制御、耐久性、コスト効率の実現が求められるが、米中に対抗する新たな競争軸を築くことが不可欠である。
エンタメ融合の新車戦略

アフィーラの内装イメージ(画像:ソニー・ホンダ)
日本が世界に誇るエンタメ産業を基盤に、新たな体験価値の提供が期待される。今後のソニーやホンダの取り組みは、その先行事例となるだろう。2026年発売予定の新型EV・アフィーラは、移動空間を「感動空間」に変えることをコンセプトに掲げる。移動式シアターやゲーム機を彷彿させる機能を搭載するのが特徴である。
車両全幅に広がるデジタルディスプレイ、PS5リモートプレイ対応、ストリーミングサービスと連携したドルビーアトモスサウンドシステム、さらにAI音声アシスタントなど、エンタメ性能が際立っている。高度なマルチメディア環境により、他車との差別化を図る狙いだ。
エンタメ産業と自動車産業の融合は、今後さらに進展する可能性がある。自動運転時の操作デバイスにゲームコントローラーを活用したり、アニメIPとの連携など、日本ならではの発想力が活かせる。特に若年層やゲーマー層などの新世代ユーザーに向け、新たな体験価値を提供できれば、クルマ離れの歯止めにもつながる。
エンジン技術の延命策
日本車の強みは、製造ノウハウやカイゼン活動などの「現場力」に加え、古来から大切にされてきた「おもてなし」を商品に具現化できる点にある。細部に配慮した内装や直感的なUI設計により、
「痒い所に手が届く体験価値」
をグローバル規模で提供することがカギとなる。自動シート調整やパーソナライズ機能、健康モニタリングなど、日本独自の発想力によって新たな市場を切り拓くことも可能である。こうした体験価値によって、欧米メーカーとは別軸の差別化を図ることが求められる。
EVシフトでは中国勢が先行し、バッテリー技術や充電インフラでは太刀打ちが難しい。このため、日本勢は既存技術を活かした別軸の戦略で挽回する必要がある。そのひとつが合成燃料(e-fuel)の活用である。HVやエンジン車に応用することで、環境対応を実現しつつ、既存技術の延命も可能である。
発展途上国や商用車などで残存需要を狙うことも有効な手段だ。トヨタは6月下旬、エンジン関連部品の取引先を集めた決起集会を開催し、電動化時代においてもエンジンを主力と位置づける認識を共有した。バイオ燃料や合成燃料を活用しエンジン技術を磨き続けることで、EVシフトの世界潮流に対して多様性という別軸を提示できる。
若年層向けの移動手段革新

KGモータース・mibot(画像:KGモータース)
日本国内ではいくつかのベンチャー企業がマイクロモビリティの開発を進めている。しかし制度整備が追いつかない課題がある。
現行の道路交通法では、マイクロモビリティは第一種原動機付自転車(ミニカー)に分類され、最高速度は時速60キロ以下に制限される。加えて、マイクロモビリティに対する社会受容性も低い状況である。
一方、欧州では積極的にマイクロモビリティが開発・生産されている。車速制限を設けることで、14歳からの運転を認める国もある。日本でも運転免許年齢の引き下げにより、新たな需要を掘り起こすことが可能となる。
若年層向けの新しい移動手段が確保されれば、特に地方での生活交通の課題解決に貢献できる。観光利用などでも需要拡大が見込まれ、日本におけるマイクロモビリティ市場の成長余地は大きい。
シニアカー市場の拡大

ダイハツ・e-SNEAKER(画像:ダイハツ工業)
高齢化社会が進む日本では、高齢者の移動手段は必需性の高い商品である。スズキは1985年からシニアカーを手掛け、今年で40周年を迎えた。累計販売台数は32万台を超える老舗メーカーである。
ダイハツも新たにシニアカー市場に参入し、新モデル「e-SNEAKER」を発表した。今後、普及拡大が期待される状況である。
特に医療や介護との連携により、シニアカーの活用はさらに広がる。公共補助制度との組み合わせは普及促進の起爆剤となる可能性がある。
社会的にも交通事故削減や生活の質向上に貢献できる。こうした観点から、シニアカーは社会に役立つモビリティとして進展が見込まれる。
次世代日本車の挑戦

東京オートサロン2025の様子(画像:東京オートサロン2025)
近年の東京オートサロンは目覚ましい盛り上がりを見せ、カスタマイズの潜在需要の高さを示している。2025年1月に開催された第43回は来場者数25万人超で、第1回開催(1983年)の2倍以上に達した。課題は
「車検制度の硬直性」
にあり、緩和されなければカスタマイズ市場の拡大は限定的になるだろう。規制緩和による市場化は避けて通れず、新たな需要創出には制度見直しが必須である。
中国でも今年1月、改造車に関するガイドラインが設けられた。明確な基準を示すことで容認し、関連市場の消費を促す狙いがある。価格競争や電動化に偏りがちだった中国市場に変化をもたらす可能性がある。カスタマイズ市場は今後も増加が見込まれ、部品産業の拡大や若年層の車への関心回復、自動車産業全体への波及効果も期待される。クルマ文化を広げる意義も大きい。
日本メーカーには、内需依存から脱却し、輸出戦略を再構築することが求められる。単にEV偏重でシフトするのではなく、合成燃料やエンジン、自動運転など多様な技術を組み合わせることが現実解である。
社会課題である高齢化や若者の車離れを市場機会に転換する視点も重要である。技術・文化・制度の三位一体で「次世代の日本車」を再定義し、次世代にふさわしい新たな日本車像を世界に示すことが求められる。そして最終的に掲げるべきスローガンが、「Make Japanese Cars Great Again」だろう。