FRB議長の“異例”発言でよみがえる「ITバブル崩壊」の記憶…不穏な兆し重なる10月、予想レンジ〈146~152円〉の根拠【国際金融アナリストが解説】

10月の「FX投資戦略」ポイント, 長く続いた小動きから一転、米ドル「上放れ」の9月, 米ドル安・円高要因への反応が鈍い「3つ」の理由, 10月の注目点…自民党総裁選、月末には日米の金融政策発表, 円高要因の反応が鈍いまま、円は一段安へ向かうのか?, FRB議長“異例”の株価言及…「怒涛の株高」の変化にも注目, 10月の米ドル/円予想レンジは「146~152円」, 今週の米ドル/円予想レンジは「147~152円」

(※画像はイメージです/PIXTA)

長く続いた小動きから一転して、1ドル=150円台へと上放れする展開となった9月の米ドル/円。日本は利上げ、米国は利下げ再開と、ドル安・円高要因となる“逆向き”の金融政策が進んでいるにもかかわらず、なぜ相場はドル高・円安方向に動いているのでしょうか。マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が、先月の為替相場を振り返るとともに、今月の市場展開について予想します。

10月の「FX投資戦略」ポイント

<ポイント>

・9月の米ドル/円は、日米金利差縮小など米ドル安・円高要因への反応が鈍いまま、下旬には小動きのレンジを上放れたことで、目先上値試しが続きそう。

・ただ日米の逆向きの金融政策は変わらず、米ドル高・円安が拡大する可能性にも疑問。米国株高や米景気回復の変化にも注目。

・10月の米ドル/円予想レンジは「146~152円」(第1週予想は文末を参照のこと)。

長く続いた小動きから一転、米ドル「上放れ」の9月

9月の米ドル/円は、前月から146円台半ば〜148円台半ばの狭いレンジ内で小幅な値動きが続いていましたが、月末にかけてこのレンジを上抜ける展開となりました(図表1参照)。

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[図表1]米ドル/円の日足チャート(2025年7月~) 出所:マネックストレーダーFX

相場は、狭い値幅での小動きが長く続くほどエネルギーを蓄積し、その停滞が終わると、たまったエネルギーが一方向に放出され大きく動く傾向があります。

そうした観点からみると、今回のレンジ上放れによって、これまで上限となっていた148円台半ばを割り込まずに推移する限り、さらなる上値を試す展開が続く可能性が高いです。

それにしても、8月以降は日米金利差(米ドル優位・円劣位)が比較的大きく縮小しました。これは、日本が利上げの方向性を示す一方で、米国は利下げを再開するなど日米で逆向きの金融政策が進んでおり、それにともなう金利差の変化によるものでしょう。

この8月の日米金利差の状況を踏まえると、米ドル/円は145円を大きく割り込んで下落してもおかしくありません。ところが、こうした米ドル安・円高要因に対する反応は鈍く、むしろ米ドル高・円安方向へと動き出しています。いったいなぜなのでしょうか(図表2参照)。

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[図表2]米ドル/円と日米2年債利回り差の推移(2025年7月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

米ドル安・円高要因への反応が鈍い「3つ」の理由

考えられる理由の1つは、ヘッジファンドなどの投機筋が空前規模で円買いポジションを抱えていたことです。その結果、日米金利差縮小をはじめとした米ドル売り・円買い要因に対して、市場の反応が限られた可能性があります。

実際、CFTC(米商品先物取引委員会)の統計によると、投機筋による円買い越しは4月末時点で17万枚を超え、過去最高を大きく更新しました(図表3参照)。

むしろ、四半期末となる9月末にかけては、含み損を抱えた円買いポジションの整理にともなう米ドル買い・円売りが、金利差の変化以上に米ドル高・円安を後押しした可能性もあります。

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[図表3]CFTC統計の投機筋の円ポジション(2005年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

もう1つ考えられるのが、日本の政治情勢の影響です。

石破総理の退陣表明を受け、日本は次期政権を模索していますが、現在衆参両院ともに少数与党となっていることから、次期政権では多くの野党が主張する消費税減税などの財政拡張策が焦点となる可能性が高いとみられます。

こうした政策への期待が財政赤字の拡大懸念につながり、円売り要因となっている可能性があります。

また、米ドル/円と日本の長期金利の関係にも変化が見られます。3月頃までは「日本の金利上昇=円高」といった順相関が基本でしたが、5月以降は「日本の金利上昇(=債券価格の下落)=円安」といった逆相関の傾向が目立つようになりました(図表4参照)。

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[図表4]米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

これは、金利上昇が円買い材料ではなく、債券価格の下落を通じて円売り要因として作用している可能性を感じさせるものです。

10月の注目点…自民党総裁選、月末には日米の金融政策発表

円高要因の反応が鈍いまま、円は一段安へ向かうのか?

以上を踏まえると、10月の米ドル/円の行方を見通すうえでの焦点は、日米金利差の縮小といった米ドル安・円高要因に対する市場の反応が引き続き限定的なままなのか、そして仮にその状況が続いた場合、日米金利差の再拡大などを背景に、米ドル高・円安がさらに進行する可能性があるかどうか、という点にあると考えられます。

米ドル安・円高への反応が鈍かった理由のひとつである、ヘッジファンドなどによる円の“買われすぎ”状態は、現在も続いているとみられます。したがって、円買い材料に対する市場の反応が鈍い状況も、今後しばらく続く可能性がありそうです。

そしてもうひとつの理由である、日本の財政赤字拡大への懸念にともなう円売りについても、自民党総裁選の結果を受けて次期政権の模索が続くなか、こうした懸念はくすぶり続ける可能性があるでしょう。

では日米金利差が縮小から拡大に転じ、米ドル高・円安を後押しすることになるでしょうか。日米は10月末に金融政策発表を予定しています。日銀の追加利上げについては、政局の先行き不透明な状況が続くなかで、10月についてはまだ微妙との見方が基本ではないでしょうか。

また、9月に続くFOMC(米連邦公開市場委員会)の2回連続利下げについても、10月に発表される米経済指標の内容しだいでは、依然として判断が難しい状況が続くとみられます。

ただし、NFP(非農業部門雇用者数)の急減などが示す労働市場の急速な悪化が、短期間で改善するとは考えにくいでしょう(図表5参照)。

その意味では、米国の利下げ、そして日銀による利上げという方向性そのものが大きく変わるとは考えにくく、そうであれば日米金利差の拡大にも自ずと限界があると考えられます。

10月の「FX投資戦略」ポイント, 長く続いた小動きから一転、米ドル「上放れ」の9月, 米ドル安・円高要因への反応が鈍い「3つ」の理由, 10月の注目点…自民党総裁選、月末には日米の金融政策発表, 円高要因の反応が鈍いまま、円は一段安へ向かうのか?, FRB議長“異例”の株価言及…「怒涛の株高」の変化にも注目, 10月の米ドル/円予想レンジは「146~152円」, 今週の米ドル/円予想レンジは「147~152円」

[図表5]NFPの推移(2022年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

FRB議長“異例”の株価言及…「怒涛の株高」の変化にも注目

また、最高値更新で怒涛の展開が続く日米株価にも注目したいと思います。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は23日、「株価はかなり割高になっている」などと発言しました。

FRB議長が株価について言及するのは珍しいことですが、この事例で思い出されるのが、1996年12月に当時のグリーンスパン議長が発した「この株高は根拠なき熱狂なのか」という発言です。もっとも、このグリーンスパン発言のあとも米国株は上昇を続け、米国株が暴落に転じたのは2000年に入り、ITバブルが崩壊してから。つまり3年以上もあとのことでした。

ただし、「根拠なき熱狂か」という発言があった当時と現在では、いくつか顕著な違いがあります。そのひとつが、NYダウに対するナスダック総合指数の相対株価です。

「根拠なき熱狂か」との発言があった当時、ダウに対するナスダック指数の割高感はそこまで極端なものではありませんでした。しかし現在では、ITバブル期を上回る水準にまで達しています(図表6参照)。

10月の「FX投資戦略」ポイント, 長く続いた小動きから一転、米ドル「上放れ」の9月, 米ドル安・円高要因への反応が鈍い「3つ」の理由, 10月の注目点…自民党総裁選、月末には日米の金融政策発表, 円高要因の反応が鈍いまま、円は一段安へ向かうのか?, FRB議長“異例”の株価言及…「怒涛の株高」の変化にも注目, 10月の米ドル/円予想レンジは「146~152円」, 今週の米ドル/円予想レンジは「147~152円」

[図表6]NYダウに対するナスダック総合指数の相対株価(1990年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

つまりこの指標は、グリーンスパン議長が「根拠なき熱狂か」と発言した1996年ではなく、むしろITバブルが崩壊し始めた2000年頃に近い状況にあることを示していますから、そうしたなかでFRB議長が株高に言及したことは、やはり注目すべきところです。

10月の米ドル/円予想レンジは「146~152円」

すでに見てきたように、米ドル/円は長く続いたレンジ相場を9月下旬に上放れたことから、元のレンジ以下に戻らない限り、当面は上値を試す展開が続く可能性が高いでしょう。ただし、一段の米ドル高・円安を正当化するほど日米金利差が拡大するかについては懐疑的です。

10月といえば、1987年の「暗黒の月曜日」や世界恐慌の幕引き役となった1929年の「暗黒の木曜日」など、歴史的な株価暴落が起きた時期としても知られています。そうしたなかで、パウエルFRB議長が“異例”の株価への言及を行ったこともあり、米国株高や景気回復の流れに変化が生じるかどうか、注目されます。

以上を踏まえ、10月の米ドル/円は「146円〜152円」と予想します。

今週の米ドル/円予想レンジは「147~152円」

今週は水曜日から10月に入り、ISM(米供給管理協会)による製造業・非製造業の景況感指数や9月の雇用統計など、注目度の高い米経済指標の発表が予定されています。これらは総じて、前回より改善するとの見方が一般的なようです。

一方で、米議会では予算審議が難航しており、政府機能の一部が停止する「シャットダウン」に陥る可能性も取り沙汰されています。その場合、雇用統計をはじめとする経済指標の発表が見送られる可能性もあるでしょう。

こうした不安定な状況のなかで、米国株高に変化が生じるかどうかには注意が必要です。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は「147円〜152円」と予想します。

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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