ベテラン記者コラム カッレ・ロバンペラ転向のニュースに見る一般とファンの温度差 「日本自動車会議所モータースポーツ委員会」の検討に望み

昨年11月1日、レッドブルF1のテスト走行に臨んだカッレ・ロバンペラ(レッドブル提供)
東京ビッグサイトで開催されている「ジャパン・モビリティーショー」(9日まで)。かつては「東京モーターショー」と呼ばれたが、さまざまな「動く」機械とその産業の展示会として前回23年、名称が変更された。モータースポーツに関する展示や発表も多く、毎回取材に訪れている。
今回注目したのは、国内モータースポーツ関連団体のトップが参加して行われた「日本自動車会議所モータースポーツ委員会」の公開会議。音頭をとったのは同会議所の豊田章男会長(トヨタ自動車会長)で、スーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA)の坂東正明代表、スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーション(JRP)の近藤真彦会長、スーパー耐久未来機構の桑山晴美副理事長に、国内統括団体として日本自動車連盟(JAF)の坂口正芳会長と日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)の鈴木哲夫会長も出席した。

日本自動車会議所モータースポーツ委員会の公開会議で語り合う(左から)豊田章男トヨタ自動車会長、坂口正芳会長、坂東正明GTA代表、近藤真彦JRP会長、スーパー耐久の桑山晴美副理事長、鈴木哲夫MFJ会長、加地雅哉同委員会委員長=東京・江東区
実質的にはトークショーだったが、日本のモータースポーツを盛り上げ、文化として定着させようという目的でこれだけのメンバーがそろう会議体が設立されただけでも画期的なことだ。
議論はいくつか課題を挙げて行われたが、最も大きいのは、やはりサーキットでの観戦者をいかに増やすか。そして「遠い」「公共交通機関で行けない」「宿泊が必要」といった問題点が指摘された。これは私がモータースポーツ担当となった30年以上前から何も変わっていない。一時は東京や大阪の市街地でのスーパーGTやフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)のレース開催が検討されたが、実現しなかった。

WRC今季第12戦の中欧ラリーで報道陣の質問に答えるカッレ・ロバンペラ(TGR提供)
その後、国内での本格的公道レースはフォーミュラE東京大会の開催で実現したが、これは電気自動車の世界選手権を環境対策のアピールに利用しようとする、小池百合子都知事による多分に政治的な動きだ。実現自体は喜ばしいが、国内シリーズの市街地開催によるファン層拡大には現状、つながっていない。
結局、さまざまなメディアを通して知ってもらい、興味を持ってもらってサーキットへ足を向けさせるしかない。SNSの発達で旧来のメディアの影響力は落ちたとされるが、「地上波テレビの力は大きい。地上波で、いい時間帯でモータースポーツが皆さまの目に留まるようになれば…」と豊田会長。ただ、この点では〝旧来メディア〟に属する者として忸怩(じくじ)たる思いもある。
前回の当欄で取り上げた、カッレ・ロバンペラ(フィンランド)のサーキットレースへの転向。世界ラリー選手権(WRC)史上最年少王者が25歳の若さでラリーを引退し、来季は日本のスーパーフォーミュラに参戦するという大ニュースに、発表された10月9日、モータースポーツ専門媒体は大騒ぎだった。だが新聞社で報じたのは私が調べた限り弊紙のほか1紙だけ。テレビも全て確認したわけではないが、今週のWRC「ラリー・ジャパン」を紹介する中で取り上げた社があった程度と認識している。
発表当日に共同通信がニュースとして配信しなかったので、モータースポーツに関心がない社は価値が分からなかったのか、気づきすらしなかったのかとも思うが、逆に言えば、これほど大きなニュースでも日本での一般の受け止めは、その程度ということだろう。
F1や二輪のモトGPなど世界選手権のドライバーやライダーは、来日する度に日本のファンの熱を称賛するが、これだけの自動車大国でありながらファンと一般の温度差は大きい。「日本自動車会議所モータースポーツ委員会」には、その差をいかに埋めていくかをご検討願いたい。(只木信昭)