大阪国際女子マラソン 初マラソン日本記録の矢田みくに「応援団が『行け行け、みくに』って言ってくれた」ロス五輪は「夢じゃなく目標」

4位でゴールする矢田みくに=ヤンマースタジアム長居(撮影・中島信生)

「第45回大阪国際女子マラソン」(25日、大阪・ヤンマースタジアム長居発着=42.195キロ、サンケイスポーツなど主催、奥村組協賛)矢田みくに(26)=エディオン=が初マラソンの日本歴代最高記録を更新する2時間19分57秒で日本勢トップの4位に入った。終盤まで強豪アフリカ勢と競り合い、日本選手6人目の2時間20分切りを達成した。2025年9月の世界選手権東京大会は1万メートルで出場するも20位。そこからわずか4カ月で鮮烈なマラソンデビューを飾り、目標とする2028年ロサンゼルス五輪へ大きな一歩を踏み出した。

日本人トップでゴールし時計の前でポーズをとる矢田みくに=ヤンマースタジアム長居(撮影・宮沢宗士郎)

何度抜かれてもそのたびに抜き返し、最後の最後まで世界に食らいついた。矢田が浪速路の冷たい風を切り裂く快走で、初マラソンの日本最高となる2時間19分57秒をマーク。驚きの混じった笑顔から達成した成果の大きさが伝わった。

「沿道(の声援)が本当にうれしくて、笑顔で返して走りました。2時間20分を切るというのは予想よりすごく良い。23分台で走れたらと思っていたので、びっくりしています」

本番3日前の22日に「どうせなら、行けるところまで行こう」と、2時間20分を切るペースメーカーがつく第1集団で走ることを決断。未知の42・195キロに繰り出しても、周囲を見回し笑顔で手を振る余裕があった。「応援団が『行け行け、みくに』って言ってくれた」。ほかの日本選手が脱落していく中でペースメーカーについて30キロまで走ると、残ったアフリカ勢3人の前に出て先頭で引っ張った。

会見で涙ぐむ矢田みくに=ヤンマースタジアム長居 (撮影・山田喜貴)

35キロ過ぎで大会2連覇のエデサ(エチオピア)に一度は前を譲ったが、「ここまできたらタイムを狙っていこう」と再び加速して先頭へ。苦しい終盤も声援に背中を押され「幸せを感じながら走ることができた」。ヤンマースタジアム長居のトラックに戻っても激しい2位争い。最後は屈したが、日本歴代6位の好タイムで、同じ浪速路で日本記録を更新した前田穂南(天満屋)に続いて国内大会で2人目の2時間20分切りを達成した。

昨年はトラックの1万メートルでアジア選手権3位に入り、東京で行われた世界選手権の代表にも選ばれたが20位に終わった。涙と失意はあったが、気持ちを切り替えて〝未知の世界〟に飛び込むには十分な経験になった。

「『もう、やらなきゃだめだ』って。ねじを外したい、自分を変えたいと思った」

大会後、かねて沢柳厚志監督に何度も打診を受けていたマラソン挑戦を決断。短期間で40キロ走を2度こなすなど意欲的に練習に取り組んだ。2年前の名古屋ウィメンズで自己ベストを更新する姿を見て憧れを抱いた安藤友香(しまむら)と徳之島の合宿で出会い、ともに練習に取り組んだことでヒントを得た。

「それまでトラックのフォームが抜けきれず、ガツガツ行く走りになっていた。安藤さんと一緒に走ってこんなリラックスしていいんだと勉強になった。少しずつフォームも無理をしないコツがつかめてきた」

その安藤が持っていた初マラソン日本最高記録(2時間21分36秒)を塗り替えて一発でマラソン適性を示し、2027年秋開催予定のロス五輪代表選考会「MGC」の出場権もゲットした。

「今後も初心の気持ちを忘れず練習し、五輪に向けて頑張りたい。(ロス五輪は)夢じゃなく目標。トラックにも同じく力を入れながら、マラソンで出られたら」

初めてのフルマラソンで大きな結果を残し、最高峰の舞台に向けて一歩を踏み出した。(邨田直人)

■女子マラソン・2028年ロサンゼルス五輪への道

出場枠は3。2027年秋開催予定の代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の上位2人が内定し、その後の「MGCファイナルチャレンジ」(大阪国際、東京、名古屋ウィメンズの予定)で残る1人を決める。また「MGCファストパス」制度が新設され、25、26年度の2年間の対象レースで設定記録(女子は2時間16分59秒)を突破した最速選手を最初の内定者とする。その場合、MGCで決まるのは1人だけとなる。

■矢田みくに・アラカルト

★生まれ 1999(平成11)年10月29日生まれ、26歳。熊本県出身。

★身長 1メートル59。

★経歴 中学で陸上を始め、熊本・ルーテル学院高からデンソーに入社し、2022年にエディオンへ。25年5月アジア選手権1万メートルで銅メダル。同年9月の世界選手権東京大会1万メートル20位。1万メートルの自己ベストは31分12秒21。

★息抜き カフェ巡り。好きなコーヒーを探しに行くのが至福の時間だが「飲みながら練習を振り返っちゃったり、陸上がちらついてしまいます」。

★ルーティン レース前はまつ毛を上げるかネイルするかで気分を上げる。今大会に向けて、両手の親指に実家の猫2匹のネイルを施した。

★笑顔 練習中やレース中「いける」と思ったタイミングでペースを上げる。「たまに『今だ』となったとき、ニヤついているときがあるかもしれないです」。