働き続けるとごっそり"減額"される「年金の盲点」 定年後の再雇用で損しない働き方とは?

働きながら年金をもらうと年金がカットされる?, 年金+月収が50万円を超えたら超過分の半分がカット, 在職老齢年金は繰り下げ待機中も年金減額の対象!, 年金を満額もらえる方法とは……?

在職老齢年金として受け取れる金額は、給与と年金の合計額が「50万円」を超えるか、超えないかで決まります(写真:Luce/PIXTA)

今や高齢者の約4人に1人が働き、就業者全体の約7人に1人を占める時代となっています。少子化で労働力が減る中、シニアの意欲や能力を生かす観点から注目される高齢者雇用。そんな中、働くことで年金が減ってしまう「在職老齢年金」という仕組みに、関心を持つ人も多いのではないでしょうか。
チャンネル登録者数50万人を超えるマネー系YouTuberで『マンガでかんたん! 定年前後のお金の手続き ぜんぶ教えてください!』を書いた「節約看護師りょう」さんが、この在職老齢年金の仕組みや課題、さらには年金が減額されずに働くための対策方法について解説します。

働きながら年金をもらうと年金がカットされる?

60歳以降、厚生年金に加入して働きながら受け取る年金のことを「在職老齢年金」といいます。在職老齢年金として受け取れる金額は、給与と年金の合計額が「50万円」を超えるか、超えないかで決まります。

【図解】働きながら年金をもらうと損する人、しない人の境目

下の図にあるように、在職老齢年金には「50万円」のボーダーラインを超えてしまうと、「年金の一部または全額が支給停止される」というルールがあるため、どちらかというと働く高齢者からは批判の対象です。働いて稼ぎがよくなるほど、本来もらえるはずの年金が減ってしまう仕組みなので、悪い印象を持たれてしまうのも当然でしょう。

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あなたの在職老齢年金は、全額支給になる?ならない?(図表:『マンガでかんたん! 定年前後のお金の手続き ぜんぶ教えてください!』より)

ちなみに、在職老齢年金の年金カットのボーダーライン「50万円」は2024年度現在のもので、今後、物価の変動などに合わせて改定される可能性があります(実際、2022年度以降、毎年、ボーダーラインの金額が改定されています)。

なお、在職老齢年金の対象になるのは、一部の人だけがもらえる特別支給の老齢厚生年金はもちろんのこと、60~64歳で繰り上げ受給した老齢厚生年金や65歳以降の老齢厚生年金も含まれます。

年金+月収が50万円を超えたら超過分の半分がカット

ここで、在職老齢年金によって、年金がいくらカットされてしまうかの計算式について見ていきましょう。前ページの計算式がそれになります。

まず、Aの「年金」ですが、在職老齢年金の計算に用いられるのは「基本月額」です。これは加給年金(『申請しないと「1円ももらえない」年金の"正体"』)を除いた厚生年金の月額のことを指します。

なお、会社員の場合、老後に受け取る年金の中には老齢基礎年金と老齢厚生年金がありますが、在職老齢年金の計算には老齢基礎年金は含まれません。つまり、関係がある年金は「老齢厚生年金」のみ、ということになります。

次にBの「月収」ですが、これは正式には「総報酬月額相当額」のことで、1カ月の各種手当を含む給与に、1年間のボーナスを12で割ったものを足すことで求めます。なおこの場合、税金が引かれる前の金額で計算します。

そして、Aの「基本月額(年金)」とBの「総報酬月額相当額(月収)」を足してみて50万円を超えると、超えた分の半分の年金がカットされます。これが在職老齢年金の計算方法です。

年金がカットされるなんて、本当に悲しくなりますね。とはいえ、この在職老齢年金の年金カットのボーダーラインは、2022年に大きく改正されました! 2022年3月までは「28万円」でしたから、当時は今よりもカットの対象になる人がたくさんいたようです。今の「50万円」はこれでもまだマシなほうかもしれません。

ここで、具体的な数字を入れて在職老齢年金を計算してみましょう。高橋さん(独身・仮名)は65歳で月収40万円、ボーナスが年間120万円、老齢基礎年金が月額6万円、老齢厚生年金が月額14万円だとします。

計算式の「基本月額」は「老齢厚生年金の月額」を指しますので、高橋さんの場合、14万円です。「総報酬月額相当額」は、1カ月分の給与に、1年間のボーナスを12で割ったものを足したものですので、高橋さんの場合、総報酬月額相当額は50万円となります。

つまり、高橋さんの「A基本月額+B総報酬月額相当額」は64万円。年金カットのボーダーラインである50万円を超えています。そのため、残念ながら年金の一部が支給停止となります。

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年金を受け取りながら月収40万円の高橋さんのケース(図表:『マンガでかんたん! 定年前後のお金の手続き ぜんぶ教えてください!』より)

では、年金の支給停止額はいくらかというと、「50万円を超えた分の半分」ですから、計算すると(64万円-50万円)×1/2=7万円。ということは、本来受け取れた老齢厚生年金14万円から7万円が支給停止になるわけです。一方で、老齢基礎年金については、給与にかかわらず全額受給できますので、老齢基礎年金の6万円はそのまま支給されます。

まとめると、高橋さんは本来なら、「月収+ボーナス+年金」で月70万円(平均)を受け取れるはずでしたが、収入が年金カット基準の50万円を超えたため、毎月の年金が7万円カット。その結果、収入が月63万円(平均)に減ってしまう……ということになります。

在職老齢年金は繰り下げ待機中も年金減額の対象!

そのほか、在職老齢年金には、年金減額につながる注意点がもう2つあります。

1つ目は、年金が全額支給停止になった場合に限り、加給年金(『申請しないと「1円ももらえない」年金の"正体"』)も全額支給停止になる、ということです。

2つ目は、年金を受け取る時期を遅らせる「繰り下げ」待機中も年金減額の対象になる、という点です。つまり、年金を実際に受け取っていなくても、繰り下げ受給の増額分から在職老齢年金によってカットされたと想定される年金額が除かれてしまうのです。

たとえば、繰り下げ待機中に在職老齢年金の計算によって全額支給停止になると、年金の増額を狙ってせっかく繰り下げ受給にしたにもかかわらず、年金は1円も増額されない、ということになります。

年金を満額もらえる方法とは……?

ここまでの説明からもわかるとおり、年金の受給額を減らさず働くためには、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が50万円を超えないように働く必要があります。

頑張って働いても年金がカットされるなんて、正直悔しいものです。しかし、ここであきらめないでください。どんなに稼いでも年金を満額受け取れる方法があるのです。

それは、厚生年金に加入しない働き方をする、です。そもそも在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働きながら受け取る年金のことです。したがって、厚生年金に加入しなければ在職老齢年金とはいわず、そもそも年金カットのルールが適用されないのです。

厚生年金に加入しない働き方とは、会社の社会保険に加入しないで働くことです。具体的にはフリーランスや個人事業主になることです。個人事業主というと、起業をイメージする人も多いでしょうが、業務委託契約を結ぶと個人事業主になります。

こうした働き方であれば、どんなに稼いでも年金は1円もカットされず、満額受給できるというわけです。ボーダーラインを超えそうな人は、ぜひ検討してみてください。