新卒一括採用をやめた富士通で何が起きているのか。時田社長が語る人事改革の現在地

Business Insider Japanの単独インタビューに応じた富士通の時田社長が、人事制度改革の意義を語った。

「ヘッドカウント(人員数)ベースの事業はもう持たない」

富士通の時田隆仁社長は、人事制度改革の意義をこう語る。新卒一括採用を事実上廃止し、採用権限を各事業部門に委ねた同社。人事主導の採用から脱却し、事業部門の裁量で人材確保を進める体制へと転換した。

また、ジョブ型(職務を明確にした)人材マネジメントの推進によって人材流動性は向上したが、知識の蓄積や組織の一体感、ロイヤリティーといった新たな課題も浮き彫りにしたという。

前編に続くインタビュー後編では、大胆な改革の先に見据える、連結従業員11万人を抱える大組織の未来像を聞く。

(聞き手・三ツ村崇志 文、構成・松本和大)

「新卒一括採用の廃止」の影響と今後

富士通は、新卒一括採用を廃止した。

—— 2025年の春、CHROの平松さんに人事制度改革の話を聞きました。新卒の一括採用をやめるという話でしたが、それによる変化は感じていますか。

時田隆仁社長(以下、時田):新たなスタイルでの採用が始まって、(その人材が)入ってくるのは来年からですから、それを見てみないとわかりません。

社内からも「それで大丈夫か」という声は当然ありますよね。だって何十年も続けてきた(新卒)一括採用をやめると言ったわけですから。それは抵抗感というよりも「どうなるんだろう」という不安感かもしれません。

一方で、もうこの何年も、いわゆる中途採用のサイズ感をどんどん増やしていったことも事実なので。だから「急激に人がいなくなってどうするんだ」みたいな危機感には至っていません。

—— ただ、新卒採用のホームページはまだ残っていますよね。完全に振り切って「入口はキャリア採用も新卒も一緒です」という形にはならなかったのでしょうか。

時田:外からの見え方がまだ違っているというのはあります。

やっぱりあまりラジカル(急進的)になるといろいろ言われるから、人事サイドも広報サイドも少し抑え気味なのかもしれない。実際に狙っているところというか意図としては、もはや新卒だろうが何だろうが関係ありません。

博士人材など、大学でしっかりと専門性を高めた人の処遇については、当社もご多分に漏れず、過去に問題があったと思っています。年功序列の慣習に重ねていて少しおかしかったなと。

今回の取り組みで、そういうことをなくしていく効果を期待しています。

あとはマッチングの問題です。最初から目的意識を持った人、もしくは長期インターンを通して富士通への理解を深めた人が入ってくれるほうがいいんだろうなと、単純に思います。

—— 最終的に、外から見ても入口はひとつしかないような形に落ち着いていくイメージでしょうか。

時田:入口という言い方がちょっとあれですけど、もはや人事(主導)で採用しているということはないんですよね。

人事も人件費も含めて各事業部門の采配の中でやっているので、事業部門がどう動くか。もうそれだけです。

ヘッドカウントベースの事業は「もう持たない」

富士通が目指す人材ポートフォリオ。

—— 面白い採用の形だと思いますが、人材は問題なく確保できていますか。

時田:さっきも言ったように、各部門の中でしっかりと経営ができていれば何人採ってもいいということですよね。ある意味、逆に採らなくてもいい。

業績をしっかり達成して利益を出しているのであれば、報酬面は全員マネージャー級でも構わないと。要はそういうことです。

だから今までは「人員はここに何%(配置する)」みたいなことをしていましたが、もう全くこだわっていません。本来的には、そんな割合を示すことが人事の仕事ではないですから。

逆に、そういうことが仕事だった富士通の人事を思い切り変えるということで(新たな採用の形を)始めています。

—— 世間では人手不足といった課題もあります。

時田:残念ながら、やっぱり世の中の労働人口は減っていく流れがあります。だからヘッドカウント(人員数)ベースの事業モデルというのはもう持たないという前提のもとで、AIの活用などやるべきことはまだたくさんあると思います。

最も安易なのが「今まで通りのヘッドカウントベースの事業を続けるから、ヘッドカウントを増やしたいんです」と。「退職者が5人出たら5人補充します」と。こんなことをやっている人間は、サクセッション(社長の後継者)プランには上がってきていないと思いますよ。

人材流動性が高まったことで生まれた弊害

富士通はポスティング(社内異動)を推進してきた。

—— 採用後に入った人材のマネジメントとして、ジョブ型のマネジメントへの移行を推進していますよね。人材の流動性が高まるという効果はありましたか。

時田:人材の流動性が低すぎて、それを高めなければいけないということは、かつての富士通の大問題でした。人材の流動性が確保できたかどうかは、業績データと照らし合わせた分析をしっかりするべきだと思います。