高市政権「メガソーラー支援廃止」の不可解な理屈

(写真:show999/PIXTA)
高市政権は、事業用太陽光発電に対して宣戦布告をした。
【グラフで見る】火力・風力との違いは歴然、太陽光は安価なエネルギーとなった
自民党は、2027年度からメガソーラーおよび10kW以上の地上設置型太陽光発電へのすべての補助金を打ち切る方針を発表。さらに政府は今後、新規プロジェクトに対して安全性の認定を義務付ける。
山地にある一部のメガソーラーで発生した土砂崩れを考えれば、これは適切な対応に見えるが、それが太陽光発電を阻止するための口実として使われない場合に限る。
情報筋によれば、こうした動きは経済産業省(METI)ではなく、高市早苗首相とその国会内における盟友たちから出たものだという。経産省の官僚たちは補助金の削減や廃止の是非を議論してはいたが、結論は出していなかった。
AIによる電力需要の急増にどう対応?
太陽光発電への“攻撃”は、日本の1人当たり成長率と生活水準にさらなる打撃を与えることになるだろう。また、日本の2030年までの再生可能エネルギー目標と排出削減目標の達成を事実上不可能にする。
電力会社はすでに、人工知能(AI)による電力需要の急増に伴う将来の電力不足を警告している。太陽光エネルギーの成長鈍化はそのリスクを高めるだろう。さらに悪いことに、以下に詳述するように、補助金撤廃の理由は薄弱に見える。
政府は太陽光への支援を打ち切る一方で、化石燃料への巨額の補助金を維持しようとしている。「クライメート・インテグレート」によれば、2025年のエネルギーおよび「脱炭素」関連の政府支出のうち、38%がガソリン補助金、炭素回収・貯蔵(CCS)、ガス・石炭火力発電所での水素やアンモニアの混焼など、化石燃料の使用を延命させるプロジェクトに充てられた。これに対し、再生可能エネルギーに充てられたのはわずか4%であった。
振り返ってみると、太陽光発電が急増したのは、福島第一原発事故後、民主党政権が「固定価格買い取り制度(FIT)」を通じて手厚い補助金を導入したためだった。
太陽光の年間導入容量は2015年に10.8ギガワット(GW)でピークに達したが、その後、安倍晋三氏がFITをより効果の薄い「FIP(フィードインプレミアム)」に置き換えた。その結果、新規導入容量は着実に減速し、2024年の増加分はわずか2.5GWにとどまった。

太陽光発電
太陽光だけで毎年3.5〜5.4GWの増加が必要とされる中、このペースでは日本は2030年の再エネ目標(全電力の36〜38%)に届かない。高市氏の動きは太陽光の成長をさらに縮小させ、ひいては排出削減目標の未達も招くだろう。
補助金廃止が発表される前でさえ、電力各社で構成される電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、加盟企業の2029年の再エネ比率はわずか30%にとどまり、2034年になっても石炭が25%を供給し続けるとの予測を示していた。
太陽光への攻撃は経済を損なう
経済へは2通りの道筋で悪影響を与える。第一に、政府がコストが高く排出集約的な石炭やガスへの転換を強いることになる点だ。政府が予測するほどの数の原発を再稼働できると信じる専門家はほとんどいない。
すでに日本でも、新規の太陽光発電所の建設・運営コストは、既存の石炭火力発電所の運営コストを下回っている。太陽光が24時間安定してエネルギーを供給できるように蓄電池のコストを加えても、既存のガス発電所を動かすだけのコストより安く済む。

太陽光発電
今後10年間で、太陽光のコストはさらに3分の1下がり、蓄電池のコストは半減すると予測され、太陽光の優位性は増大する。政府が推進するアンモニア混焼やCCSといった高コストで疑わしい手法は、このコスト差をさらに広げるだろう。2024年に世界の電力容量の増加分の87%を太陽光と風力(主に太陽光)が占めたのは、その低コストゆえである。
現在、日本産業界の電気料金は欧州並みであり、一般家庭の料金は(為替の歪みを避けるため購買力平価で比較すると)欧州より10%安い。太陽光の成長が阻害されれば、日本の電気料金は他国よりも割高になっていくだろう。
これは家計を圧迫するだけでなく、半導体、自動車、機械といった電力消費の多いセクターの競争力を削ぎ、成長を阻害する。自動車や半導体を重視する高市氏にとって、この政策は自己矛盾しているように見える。
さらに、AIやデータセンターの登場による膨大な電力需要の増加を考える必要がある。ソフトウェア分野での遅れにより、日本はすでにデジタルサービスの輸入に化石燃料以上の金額を費やしている。
OCCTOの予測では、電力需要は2040年までに最大25%、2050年までに40%増加する可能性がある。これには発電所、蓄電池、送電網のアップグレードへの巨額投資が必要だ。新規原発が法外に高価であることを考えれば、太陽光や風力を削ることは、より高コストな石炭などに頼ることを意味する。
電力容量を十分に拡大できなければ、AIやデータセンターなど経済成長に不可欠な資産の足かせとなる。一方で、再エネ不足のまま拡大すれば、排出量と電気料金の両方が高騰する。
世界の大手企業は再エネ利用のトレンド
また、世界有数の企業数百社が、2030年以降は100%再エネを使用する企業からのみ調達を行う「スコープ3」ルールの遵守を誓約している。
2020年当時、ソニー、ニッセイアセットマネジメント、花王、リコーは当時の河野太郎大臣に対し、2030年までに再エネ比率を40%に引き上げられなければ、拠点を海外に移さざるをえなくなると警告していた。
高市氏の前任者たちは、原子力や化石燃料ロビーからの圧力で太陽光推進に消極的だったかもしれないが、高市氏の場合は積極的な敵意さえ感じられる。「美しい国土が外国製(中国製)のソーラーパネルで埋め尽くされることに強く反対する」と彼女は宣言した。
高市氏は、太陽光は日本を中国依存にさせるため安全保障上の懸念があると主張する。しかし、日本は中国からのレアアース輸入を避けるために自動車産業を止めたわけではない。代わりに経産省は代替調達先の開拓を支援した。
インドは太陽光モジュールの主要な生産・輸出拠点になりつつあるが、依然として上流工程の部品は中国に依存している。ならば、インドのさらなる発展を支援すればいいのではないか。
政府関係者は屋根置き型太陽光が不足分を補えると主張するが、それは必要ではあるものの、事業用太陽光よりもコストがはるかに高く、パネルを輸入に頼る点では同じだ。
新技術の活用は現時点では幻想にすぎない
経済へのダメージを軽視するため、高市氏は幻想も振りまいている。彼女は2030年代の核融合発電の実用化を語るが、専門家はこれを鼻で笑っている。また、ペロブスカイト太陽電池が2030年代半ばまでに商業的に実現可能だとも主張する。窓やビルの外壁に塗布できるこの薄膜電池について、エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)などの専門家は、2040年になっても大量普及にはコストが高すぎると指摘している。
また、政治家は、日本の9200の太陽光発電サイトの2割が、土砂崩れの起きやすい森林伐採地に建設されているという環境破壊を指摘する。こうした場所では230件以上の事故が発生しており、そのうちの1件は120棟の家屋を破壊した。
しかし、太陽光がなくても日本には毎年1000件以上の土砂崩れが発生している。200人の死者を出した2018年の西日本豪雨は、気候変動によって悪化した集中豪雨が原因だ。太陽光のために森林を伐採することは確かにリスクを高める。
有権者の反応は複雑だ。自治体の12%が設置を制限する条例を制定している一方で、74%は再エネを推進する条例を制定している。また、東京都や川崎市は新築建物への太陽光設置を義務化している。
では、なぜ危険な場所に太陽光発電所が建設されるのか。日本の指導者たちは「平地が少ないからだ」と主張する。だが実際には、自然エネルギー財団が2020年に、耕作放棄地だけで112GWの再エネ容量(日本の全電力容量の3分の1に相当)を発電できる十分な土地があると報告している。
農林水産省によれば、2030年までに耕作放棄地は全農地の30%まで3倍に増える可能性がある。にもかかわらず、ある政府高官は、「食料自給率が低いため農地転用を防ぐ農地法は変えられない」と私に語った。
しかし、放置された土地が食料を生んでいるとは到底思えない。河野太郎氏はこの農地法について繰り返し不満を漏らしてきた。
こうした農地法こそが、日本の太陽光や風力が他国より高価である主な理由の一つだ。森林の斜面に建設すれば、用地取得や建設コストが跳ね上がる。
最後に、太陽光にはもはや補助金は不要だという議論もあるが、彼らは化石燃料への補助金継続については擁護する。いずれにせよ、必要な送電網や蓄電インフラの整備コストを考えれば、あと数年は財政支援が必要だ。
2035年に再エネ70%は可能だ
福島事故後の補助金のおかげで、太陽光の容量は2010年のほぼゼロから、2024年には発電量の10%まで成長した。それでもなお、日本の再エネ比率はG7諸国の中で最低である。
いくつかの研究では、2035年までに日本の電力の80〜90%をゼロエミッション電源で賄えると推定している。例えばアメリカのバークレー研究所は、再エネで70%、原子力が20%、残りの10%を天然ガスで賄えると予測する。
石炭は完全に廃止される。原発が不足してもLNGで補うことが可能だ。これにより、電力部門の排出量は94%、国全体の排出量は約3分の1削減できる。さらに、必要なインフラ投資を行っても、電力コストは2020年比で6%削減される。
数年前、エネルギーを大量に消費する主要企業数百社が、自然エネルギー財団、日本気候イニシアティブ、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)といった組織を形成し、2030年までの再エネ比率50%や、その達成を支援する実効性のある炭素税の導入を求めていた。
しかし今日、彼らは目立たないようにしているほうが政治的に安全だと感じている。こうした有力なグループが抵抗を示さない限り、「太陽光への攻撃」を防ぐことは極めて困難になるだろう。