健康不安?85歳あの人へ警告?定年制は?相次ぐ大物の引退発表で政治家の「引き際」について考えた
突然の衆院解散を前に大物政治家の引退発表が相次いでいる。一部の政党を除き「定年」が存在しない議員稼業。国民に奉仕するためには一定の体力も必要に思えるが、民間のように定年制を設けてもいいのではないか。(中川紘希)
◆「やれることはやったという判断ではないか」
「喜寿を迎える中で後進に道を譲ることを真剣に考えていた」
自民党の菅義偉元首相(77)=衆院神奈川2区=は17日、衆院選に立候補しないと正式表明した。1996年の衆院選で初当選し10期目。2012年12月、第2次安倍晋三内閣の官房長官に就任した。2020年9月から約1年間首相を務めた。

長嶋茂雄さんお別れの会に参列した時の菅義偉元首相=2025年11月21日、東京ドームで(戸田泰雅撮影)
首相退任後も党の副総裁を務めるなど政治活動に尽力してきたが、近年は健康不安がささやかれてきた。菅氏を20年以上取材するジャーナリストの鈴木哲夫氏は、「やれることはやったという判断ではないか。政治家でいることを目的とせず手段と考え、陰の実力者としての立場は続けなかった」と評価した。
政治ジャーナリストの泉宏氏も「以前から体調の不安があり、引退を決めたのだろう」とみる。
一方、同じ首相経験者で距離があると指摘されてきた麻生太郎衆院議員は85歳で15期目。「麻生氏に『引き際を考えるべきだ』と警告する意味もあるのではないか」
◆「早い機会に次の方にバトンタッチ」
共産党前委員長の志位和夫議長(71)=衆院比例南関東=も16日に衆院選への不出馬を表明した。1993年の衆院選で初当選し、約23年間党委員長を務めた志位氏。「できるだけ早い機会に次の方にバトンタッチすることを考えていた」と話した。

記者会見する共産党の志位和夫議長=16日、国会で(佐藤哲紀撮影)
同党が連携を模索してきた立憲民主党は、公明党と新党「中道改革連合」を設立した。泉氏は「立憲民主と政策や選挙で協力する道はほぼ絶たれた。支持率が低迷する中で新しい党に生まれ変わるため、判断したのでは」と語った。
ただ志位氏は党議長として活動を続け、党内での影響力を保持する可能性があるとみる。
◆自民党73歳、公明党69歳…定年ルールは形骸化
国会議員には民間企業と異なり定年退職はなく、一部の党がルールを設けているだけだ。例えば、公明党には「任期中に69歳を超える場合は原則公認しない」とする内規がある。地域政党ではあるが、東京・生活者ネットワークでは「議員は職業化、特権化させない」として任期を原則3期と定めている。
自民党でも衆院比例代表候補に「73歳定年制」があるが、前出の鈴木氏は「なし崩しとなって守られていない。国会で議論された記憶もない」と首をかしげる。
現役世代が望む少子化対策も、高齢議員には「ほったらかしにされて進まなかった」として、「世代交代を促すために定年制を導入すべきだ。10年先、20年先を考えるのが政治で、そのときの主役たちが担うべきだ」と提案する。
◆年齢制限より、未経験者や若者が出馬しやすい環境づくりが大事
一方、泉氏も公明党代表の斉藤鉄夫衆院議員が73歳であることに触れて「新党設立に取り組み引退する状況にない。定年は形骸化していくのではないか」とみる。

夕暮れの国会議事堂(資料写真)
ただ、議員が何歳まで務まるかは人によって異なるとし「一律の年齢制限は望ましくない。高齢議員がきちんと活動しているか、有権者が注視することが必要ではないか」と話した。
千葉商科大の常見陽平准教授(労働社会学)も、高齢を理由に引退させることは「民主主義に参加する権利を失わせかねない」として議員の定年制には慎重だ。
「新陳代謝を促すためには年齢制限より、未経験者や若者が出馬しやすくなる環境づくりを考えるべきだ」として、議員の仕事の負担軽減策の検討や、企業が政治経験者を雇用するなど、政治家と他の職業とを行き来しやすい社会を目指す必要性を強調した。

菅義偉元首相㊧と、共産党の志位和夫議長
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