食料品の消費税ゼロ化「やると決まったわけではない」と政府高官は語った…当の自民党内でも「実現しない」と
自民党は21日、2月8日投開票の衆院選で掲げる公約を発表した。「責任ある積極財政」を通じ、投資と成長の好循環を生み出すと明記した。飲食料品を2年限定で消費税の対象外とすることについて、社会保障と税の一体改革を議論する「国民会議」で財源やスケジュールの検討を加速するとした。
◆税収減が見込まれる5兆円の手当ては進展がない
自民党が食料品の消費税を2年間ゼロにすることについて「検討を加速する」と踏み込んだのは、高市早苗首相(自民党総裁)の強い意向があったからだ。実現するには年5兆円とされる税収減を穴埋めする必要があるが、財源のめどはついていない。
そのため、政府・自民党内には「実現できない」との見方が早くも広がっている。税を巡る問題は国民生活に直接影響するだけに、過去の国政選挙では、首相発言が選挙期間中にぶれて与党の大敗を招いたこともある。

自民党の衆院選公約を発表する小林政調会長(右)と武部政調副会長=21日、東京・永田町の党本部で(潟沼義樹撮影)
党公約には食料品の消費税減税について「『国民会議』において、財源やスケジュールのあり方など、実現に向けた検討を加速する」と盛り込まれた。これは、首相が衆院解散を正式に表明した19日の記者会見で述べたのと同じ文言だ。
食料品の消費税減税の検討自体は、日本維新の会との連立合意に盛り込まれているが、首相自らが会見で「私自身の悲願」と表現したことで、選挙戦での位置付けは高まった。
◆自民党は消費税の減税に一貫して慎重姿勢をとってきた
首相の方針は、これまでの自民党のスタンスと真逆といえる。自民は昨夏の参院選で、正反対の訴えをしていた。当時の石破茂首相は「医療や年金、介護、子育てのための貴重な財源を傷つけてはいけない」と強調し、党幹部も税率変更にかかる時間や事業者負担の大きさを問題視していた。

自民党の全国幹事長会議であいさつする高市首相(中)。左は麻生副総裁、右は鈴木幹事長=21日、東京・永田町の党本部で(佐藤哲紀撮影)
現在の鈴木俊一幹事長や麻生太郎副総裁も、高市政権発足前は「インフレ下で消費税率を下げて消費が増えた例はない」「一度下げると元に戻すには相当な政治的エネルギーが必要」と慎重姿勢を示してきた。
今回、こうした課題は解決していない。首相自身も具体的な財源や実施時期は示していない。それでも政府・与党内に表だった反発がないのは、文言が「検討の加速」にすぎないためだ。
政府高官は「やると決まったわけではない」と実施しない可能性に言及。自民重鎮は「2年後には参院選がある。一度、引き下げたら税率を戻せるわけがない」と実現性を疑問視する。
◆できないことをできると言うと…
税を巡る歴代首相の発言は、時の政権の命運を左右してきた。1998年参院選では、橋本龍太郎首相の恒久減税を巡る発言の迷走などで自民が惨敗。
民主党政権下の2010年参院選では、菅直人首相が消費税率引き上げを表明した後、年収に応じた「還付」を打ち出した対応が場当たり的と批判され、大敗につながった。

今回の選挙戦でも自民の「変節」が野党の追及を招き、首相が説明に追われる場面が増えるのは確実だ。首相の発言内容次第では、自民のアキレス腱(けん)になりかねない。(井上峻輔)
【関連記事】"「高市解散」で4月から物価がキツいかも 牛肉、チーズ…「優遇関税」が年度末で切れてしまう品目がこんなに
【関連記事】"「食料品の消費税0%」4人家族で6万4000円負担減? 与野党やる気だけど、年5兆円減る税収の穴埋めは
【関連記事】"出入国・在留管理厳格化 難民が抱えるそれぞれの事情 〈社会時評〉安田菜津紀