高市さんは頑張りすぎ? 人となり浮かぶ首相動静の分析で見えてきたのは…閣僚で最も会っていたのは片山さつき財務相、会食はホテルのイタリアンや中華で

会合であいさつする高市首相=2025年12月4日午後、首相官邸

 まさに働いて、働いて、働いている―。高市早苗首相の日々の行動を分刻みで記録した「首相動静」を分析すると、そんな姿が浮かび上がってくる。記録されている1日の活動の始まりから終わりまでの時間の長さは9時間半ほど。近年の歴代首相と比べても、長いわけではない。ただ、議員宿舎や公邸に帰った後も、資料を読み込んでいる姿がうかがえ、本人も国会で「睡眠時間は大体2時間、長くても4時間だ」と答弁するほど。息抜きにつながる私用の外出もほとんどない。

 疲れは体と心にたまっているはず。一国のリーダーとして、内政や外交の難題、災害など、いざという時に集中力を高め、“ゾーン”に入って仕事をするためには、めりはりの効いた「ワークライフバランス」も必要。休息も十分に取ってほしいものだ。(共同通信=データ分析取材班)

さまざまな新聞に掲載されている「首相動静」

▽どこで、だれと、分刻みで

 首相動静とは、首相がいつ、どこで、誰と会ったかを分刻みで記録した短い記事のこと。新聞社によっては「首相の一日」「首相日誌」などの見出し(タイトル)を付けているところもある。新聞を1面から開くと、2面か3面の下の方に載っている、あれだ。

 例えば、イタリアのメローニ首相との首脳会談が行われた1月16日の首相動静の一部(午後)を見てみよう。

 【午後】0時20分、(メローニ首相と)共同記者発表。34分、ワーキングランチ。1時37分、片山財務相ら女性閣僚を交えたメローニ首相との少人数懇談。40分、メローニ首相を見送り。2時32分、小野田紀美外国人共生担当相、阪田渉官房副長官補、松島みどり首相補佐官、丸山秀治出入国在留管理庁長官。3時、日本医療研究開発大賞表彰式。31分、「水戸の梅まつり」関係者の表敬。56分、市川恵一国家安全保障局長、原和也内閣情報官。4時7分、原内閣情報官。5時6分、「東南アジア青年の船」事業参加者の表敬。6時43分、公邸。

 メローニ首相を見送ると、小野田氏らと面会し、取りまとめつつあった外国人対応策を話し合っていたとみられる。また、閣僚や官僚との会合の合間を縫うように、さまざまな表敬訪問を受けていたことも分かる。

 これらの記録は、すべて「総理番」「番記者」などと呼ばれる記者たちの取材に基づいている。首相官邸のホームページにも「総理の一日」というコーナーがあるが、表敬訪問や外部団体との会合など官邸外の人たちとの接触を短く伝えることが多く、時間の記載はあまり見られない。

 記者たちは、首相と面会した人たちを取材し、氏名や肩書、面会目的などを確認した上で、首相の動きを記録している。首相が外出すれば、同行するし、外遊すれば、海外にも一緒に行く。首相が誰と会ったか。面会時間はどれくらいだったのか。首相動静をつぶさに読み解くことで、政権が抱えている課題、解決に向けた方向性、首相を取りまく人間関係も推察することができる。

 今回は、生成人工知能(AI)の一種・大規模言語モデル(LLM)でプログラムを作り、高市首相が就任した昨年10月21日から3カ月間にわたり、共同通信が配信した首相動静の記事を分析した。

「水戸の梅まつり」の関係者と面会した高市首相(中央)=1月16日午後、首相官邸

▽面会回数最多は…

 就任から3カ月間で、最も多く面会したのが、外交・安全保障政策の総合調整を担う市川恵一国家安全保障局長だ。尾崎正直、佐藤啓の両官房副長官が続く。ただ、注意しなければならないのは、記者たちが全ての面会相手を把握できていない可能性があることだ。

木原稔官房長官は首相動静に登場する回数は官房副長官より少ないが、記事中で出てくるのは、面会者と同席しているケースが目立つ。首相と官房長官の執務室は官邸の同じフロアにあり、行き来を全てチェックできるわけではない。官房長官が首相と個別に会っている回数はさらに多いとみられる。

 閣僚で最も頻繁に会っていたのが片山さつき財務相。石破茂前首相が、米国との関税交渉に当たった赤沢亮正経済再生担当相(当時)と頻繁に会っていたように、閣僚との面会回数は、時の政権の重要課題が反映される。片山財務相との面会が多いことから、高市首相が経済政策を重視していることがうかがえる。

▽公邸へ引っ越しも

 動静記事に記されている高市首相の、その日の最初の活動から最後までの長さは平均約9時間半。前任の石破氏は約11時間、その前に首相を務めた岸田文雄氏は約10時間。記事中で確認できる執務時間は、高市首相の方が短い。

 また、来客がなく、終日、衆院議員宿舎や公邸で過ごした日数は就任3カ月で15日。在任期間が386日だった石破氏の19日とくらべると多い傾向がみられる。

 ただ、宿舎や公邸で過ごす時間が長いからといっても、休息しているとは言い切れない。昨年11月7日には、就任後初の衆院予算委員会を控え、午前3時過ぎに当時住んでいた議員宿舎から公邸に赴き、秘書官らと答弁準備に当たった。

 その頃の国会答弁では「睡眠時間もほとんど取れていない状況だ」「私も今、睡眠時間は大体2時間。長くて4時間だ。肌にも悪い」としていた。年末には東京・赤坂にある議員宿舎から官邸に隣接する公邸に引っ越し「職住近接」を実現させた。睡眠時間は改善されたのだろうか。

衆院予算委で片山さつき財務相(左)と話す高市早苗首相=2025年12月10日

▽会食は自民党関係者が多い

 自民党総裁選に出馬するようになるまでは、飲み会などには目もくれなかったとされる高市首相。就任してから1カ月半ほどは執務を終えると、議員宿舎にまっすぐ帰る日が続いたが、12月に入ると、会食の場を持つようになった。

 5日には、東京・紀尾井町のホテルニューオータニにあるグリル料理やパスタで名高い「ベッラ・ヴィスタ」で自民党の麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長ら役員と会食を持った。17日には会食とは記されていないものの、党内の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」の青山繁晴代表らと東京・台場のイタリア料理店「CARESS」で30分弱懇談している。

 26日にはホテルニューオータニの中国料理店「大観苑」で自民党の古屋圭司選対委員長、高鳥修一元衆院議員らと会食した後、六本木のバー「カスクストレングス」で尾崎正直官房副長官らと懇談。年が明けた1月7日には、出かけてはないものの、官邸で菅義偉元首相、馬場伸幸日本維新の会前代表と一緒に食事を取った。

▽息抜きや趣味の記録も

 首相動静には、時として、首相の息抜きや趣味、好きなものも記録される。例えば、よくゴルフを楽しんでいた故安倍晋三氏、秘書官らとパンケーキの店を訪れた菅氏、身だしなみにこだわりがあるのか岸田文雄氏はよく散髪に赴いていたし、石破氏は調べ物のために国立国会図書館を訪れたり、こだわりの名店を訪れ、ラーメンに舌鼓を打ったりすることもあった。

 しかし、高市首相の動静には、そうしたトピックが見られない。運転手やSP(警護官)に迷惑がかかるからとの理由で、髪は「自分で伸びた分だけ切っている」といい、ヘアサロン(美容室)に行った記録はない。歴代首相がよく通っていた歯科やクリニックを訪れた形跡もない。私的な用事と言えば、1月12日に日韓首脳会談を翌日に控え、地元奈良市に入った際に実家の墓参りを済ませたぐらいだ。

▽責任感の強さ

 昨年10月4日に自民党総裁に選出された際に「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と宣言した通り、仕事に根を詰めている様子がうかがえる。

 仕事一色のようにも読める首相動静は、責任感の強さ、生真面目な性格の表れなのだろう。仕事、仕事、仕事で息が詰まらないかと心配にもなる。2月8日の衆院選投開票までは、フルスロットルの日々が続くのは仕方がない。一挙一投足が注目される立場のプレッシャーは想像するしかないが、歴代の男性の首相がそうだったように、個人として当たり前のようにヘアサロンに行ったり、健康面をメンテナンスできたりするような日々を過ごせた方がいい。

 これから先も、女性が首相を務めることが当たり前のようになるためにも、高市首相にはリラックスできる一コマをスケジュールに挟み込む余裕を見せてほしい。