ランボルギーニ「重くなる社会的責任」への対応

1台1台ほぼすべて仕様が異なる「ウルス」の生産ライン(写真:Automobili Lamborghini)
サステナビリティとスーパースポーツカー。まったくもって水と油のような関係に思われるが、そこで成果を上げているのがランボルギーニだ。
【写真】ランボルギーニ生産の現場はいま、こうなっている!
最高出力747kW(1015HP)の「レヴエルト」をはじめ、677kWのパワーにドリフトモードを組み合わせた「テメラリオ」、そしてスーパーSUVを標榜する「ウルス(SE)」が、いまのラインナップ。
注目してほしいのは、3つのモデルはすべて、プラグインハイブリッドシステムを搭載している点だ。近い将来、ピュアEVも計画されている。

左から「テメラリオ」「ウルスSE」「レヴエルト」という現在のラインアップとともにニッコリ氏(写真:Automobili Lamborghini)
規模が拡大していくにつれ、企業の社会的責任は重くなる。ランボルギーニは、この2つの相反しがちな課題を、どう解決しようというのか。
もうひとつ、課題がある。ランボルギーニには、顧客一人ひとりのニーズに合わせた仕様を作ることが求められている。1台として同じランボルギーニはない、といわれるゆえんだ。
サステナビリティを含めた効率性のみを追求することが難しいのは、容易に推測できる。
製造部門の最高責任者、ニッコリ氏に聞く
スーパースポーツカーメーカーのランボルギーニが、この先、環境適合性をどう高めていくのか。
その興味に応えてくれる最適の人物が、同社でチーフ・マニュファクチャリング・オフィサーを務めるラニエリ・ニッコリ氏だ。製造部門の最高責任者である。
2025年11月のインタビューで、いかにランボルギーニがサステナブルなクルマづくりを進めているのか。現状と近い将来の計画を語ってもらった。
「私たちは温室効果ガス削減の取り組みを09年に始め、14年にカーボンニュートラルを達成しました。そこから10年を超えました」
1968年にボローニャで生まれたニッコリ氏は言う。

ニッコリ氏は08年からランボルギーニで生産、物流、生産技術、インフラの責任者を務める人物(写真:Automobili Lamborghini)
ローマで修士課程を終えたあと、フィアットに就職。トリノのミラフィオリ工場で主要なポジションに就くなどしたあと、18年にランボルギーニに転職した。
規模拡大とともに重くなる社会的責任
ランボルギーニは62年にボローニャ近郊で創業。当初はほぼ手作りのように生産され、65年の年産台数は67台。
当時のスポーツカーは、車体の塗料もラッカー系といって有機溶剤を使っていた。排ガス浄化装置もなし。パワーと引き換えに、窒素化合物をまき散らしていた。

70年に「クンタッチ」が生産されていたころはほとんど手作くり的な製造だった(写真:Automobili Lamborghini)
ランボルギーニも、環境適合性は低かった。でも年産67台なら環境へのインパクトはさほど大きくない。
その後、販売台数は伸び、71年には425台へ飛躍。途中で不況の影響などを受けたものの、00年代には2000台を超えた。
SUV「ウルス」が18年に発売され、セールスに大きく寄与。25年のランボルギーニの販売台数は1万0747台に達した。
そうなれば当然、社会的責任は大きくなる。ニッコリ氏が言うカーボンニュートラル化への取り組みは、台数の伸びを見越したランボルギーニ社の活動だったのだ。
10年代に入ってすぐ、同社はサンタガタの敷地内に「ランボルギーニパーク」を開設。オークの植樹と、加えて、養蜂。

公園としても開放されているランボルギーニパークでは養蜂も行われている(写真:Automobili Lamborghini)
「サステナビリティと、その土地の生態系(に企業活動が与える影響)の調査。CO2削減も同時に目指すもの」
ランボルギーニが属するアウディグループでは、上記のように説明している。同時に公園として公開され、その意味でも地域への貢献度は高い。
「当時は、企業のサステナビリティ活動がSNSや新聞の主要テーマになっていたわけではありません。それでも私たちはこの方向に進むと決めました」
ニッコリ氏は誇らしげに言う。
イタリア初の「ネットゼロ」ビル、太陽光発電の設置
続いて12年には、カーボン排出量が「ネットゼロ」になるよう設定された新しい自社ビルを建てた。
ネットゼロとは、CO2など温室効果ガスの総排出量と、森林などによる吸収量(除去量)の差し引きが正味(ネット)ゼロの状態になること。企業の多層ビルとして、イタリアでは初だった。

太陽光発電システムのためのソーラーパネルがはめこまれた本社ビル(写真:Automobili Lamborghini)
「企業活動が地域や街に与える影響は、常に低減していかなければなりません。私たちはこの周辺に暮らしている人間でもあるので、それが重要だと信じています」
企業規模の拡大とともに、責任も重くなっていくのだ。
「25年は、フォトボルタイク(太陽光発電)設備を拡張しました。敷地内の設備はこれまで約1万5000m2でしたが、現在はほぼ倍になっています。さらに複数のエネルギー設備に投資しています」
ランボルギーニでは、現在、3つのプラグインハイブリッド・モデルにフォーカスしている。それでもエンジンは8気筒もあるし12気筒もある。

1963年に作られ「ウルス」導入時に8万m 2 から16万m 2 に拡張されたサンタガタの本社工場(写真:Automobili Lamborghini)
スポーツカーであるレヴエルトとテメラリオでは、キャラクターも違うし、市場のターゲットも微妙に異なる。かつ、準備中の第4のモデルはBEVといわれる。
「クルマのつくりはより複雑になっています。ハイブリッド車は電動要素と内燃機関要素の組み合わせですから、アーキテクチャの複雑性が増します。これは製造プロセスにも反映されます」
生産技術も統括するニッコリ氏は、真剣なまなざしで語る。
「しかし、電動化そのものが、生産プロセスに大きな混乱を起こすとは考えていません。現時点ですでに私たちの生産ラインは柔軟で、ハイブリッド車と内燃機関車を同じラインで生産でき、BEVにも対応できるからです」
ニッコリ氏はそう述べ、「私たちは成長したいし、より大きな存在のランボルギーニとして成長していきたい」とつけ加えた。
「とはいえ、私たちは“同じクルマを大量に作る”のではなく、1台1台が異なるクルマを作らなければなりません。そのためには複雑性を管理する必要があります」

革をはじめ、あらゆる工程に熟練した職人を導入し最新鋭の技術とクラフツマンシップを融合させる(写真:Automobili Lamborghini)
「私たちが必ず守る価値がクラフツマンシップ」とニッコリ氏。顧客が“夢”を買い、満足することがすべて、と言う。
「他のメーカーに比べて自動化の比率は低く、手作業が多い。これはお客様に提供できる価値です。一方、手作業が多いほど製品のばらつきも増えるため、訓練や検査などで品質を担保する必要があり、その点ではチャレンジでもあります」
生産の自動化への考え方
ユニークなのは、自動化についての姿勢だ。ランボルギーニでは「マニファットゥーラ・ランボルギーニ」なるコンセプトを大事にする。
「全面的に生産ラインを自動化することはないと考えています。マニファットゥーラ・ランボルギーニは、常に人の手によるクルマづくりを中心とした考え方です。自動化やデジタル化は、作業者がより良い仕事をするための支援として導入します」
もう一度、ニッコリ氏は繰り返すように語る。
「ランボルギーニにおけるクルマづくりとは、常に私たちの価値観とDNA、つまり、クラフツマンシップ、柔軟性、個別仕様、そして低ボリューム生産を前提に考えたものなのです」