住友商事、核融合で「異質」な動き。「フュージョンはもうビジネスに」総合商社が見つけた商機と戦略

筆者はこれまで核融合に関する多くの取材を積み重ねてきたが、住友商事は常に気になる存在だった。
明らかに国内他社とは「目線」が違う——。脱炭素の切り札として、欧米を中心に研究開発が加速する核融合(フュージョンエネルギー)。ここ数年この分野を取材してきた筆者が、核融合産業に対する投資スタンスで異彩を放つ存在として注目してきた企業がある。総合商社の住友商事だ。
「フュージョンエネルギーは、もうすでにビジネスになっています」
同社で核融合関連事業をけん引するエネルギーイノベーションイニシアチブ(EII)の西辻陽平さんは、こともなげにそう語る。
原子同士を衝突(核融合反応)させ、そこで生じる膨大なエネルギーを利用することをコンセプトに研究開発が進むフュージョンエネルギー。世界が熱狂する一方で、「人工的に太陽を作る技術」とも例えられるほど技術的ハードルは高く、実用炉を完成させた企業はいまだ現れていない。
そんな中、住友商事はどうやって「核融合の商機」を見極め、総合商社のビジネスへと落とし込んでいるのか、取材した。
住友商事は明らかに「何か」を狙っていた

2025年9月、都内では三菱商事や三井物産ら国内12社のコンソーシアムから資金調達を発表した米MIT発核融合ベンチャーのCFSらによる記者会見が開催されていた。国内でも大きな話題となったが、ここに住友商事の姿はなかった。
住友商事の核融合業界への関わり方の「異質さ」は、他の総合商社をはじめとした事業会社の動きと比較すると理解しやすい。
総合商社でいえば、2025年8月には三井物産、三菱商事を中心とした国内計12社のコンソーシアムがアメリカのMIT発・核融合ベンチャーCommonwealth Fusion Systems(以下、CFS)への出資を発表したことが大きな話題となった。CFSへの出資者の大半は、2023年5月に京大発の核融合スタートアップ、京都フュージョニアリングにも出資している。

三菱商事や三井物産のほかにも、丸紅が京都フュージョニアリングに。伊藤忠商事が、青色LEDでノーベル物理学賞を受賞した中村修二博士が創業したレーザー核融合ベンチャーのBlue Laser Fusionへの出資を発表している。
技術を持たない非メーカーの事業会社にとって、CFSや京都フュージョニアリングへの出資は業界のフロントラインと関わるための「チケット」的な側面が少なからずある。
2027年までに稼働を目指す実証炉「SPARK」を建設しているCFSは、世界的に業界をけん引する存在だ。多数の企業が出資している京都フュージョニアリングも、周辺設備の開発で英米両政府や世界の主要スタートアップと密な連携を取る業界のハブ的存在だ。
核融合がまだ実現性を検証しているフェーズであることを考えると、CFSや京都フュージョニアリングの近くでリスクを取るタイミングを見極める、という選択は納得できる。実際、三菱商事の担当者は、かつてBusiness Insider Japanの取材に対して、京都フュージョニアリングへの出資は「業界動向を広く知る目的」が大きかったと初期段階での考え方を語っている。
一方で、住友商事だ。
上の図表の通り、住友商事が核融合業界と関わり始めたのは2022年6月。20年以上の歴史を持つ米TAE Technologies(以下、TAE)への出資が最初だ。これは、日本企業が初めてアメリカの核融合関連企業に出資した事例でもある。
住友商事はその後、2023年7月に英Tokamak Energy(以下、トカマク・エナジー)と協業契約を結ぶと、2025年4月には米SHINE Technologies(以下、SHINE)と戦略的業務提携を締結。続々と手を広げてきた。
特筆すべきは、2022年という国内の事業会社(CVCなどを除く)としては最も早いタイミングで核融合業界への出資に踏み切ったこと。加えて、住友商事が関係を持つ3社が、核融合炉の実現に向けてそれぞれ異なる技術的アプローチをしている企業であるという点だ。
多くの国内企業が「核融合とは何か」「業界にどう関わるべきか」を悩んでいる間に、住友商事は明らかに何らかの狙いを持って、戦略的に核融合業界に関わろうとしている。少なくとも、筆者にはそう見えていた。