頭のいい上司が部下に質問する前に考えていること【質問で部下が動く人と動かない人の決定的な違い】

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同じことを聞いているはずなのに、ある質問では会話が弾み、別の質問では沈黙が広がる。そんな経験はないだろうか。実は、問いの「趣旨」が同じでも、質問の仕方を少し変えるだけで、相手が返す反応は大きく変わる。記憶を呼び起こすのか、知識を探させるのか、それとも価値観を内省させるのか。「問いかけ」の使い方次第でチームの対話はまったく別のものになっていく。※本稿は、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOの安斎勇樹『新 問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。
チームの眠っていたポテンシャルを
発揮させる「問いかけ」とは
チームの眠っていたポテンシャルを発揮する処方箋となる「問いかけ」について、基本的なメカニズムを理解しましょう。
問いかけとは、チームのポテンシャルを照らす「スポットライト」のようなものです。その光の当て方ひとつで、相手の反応の仕方は大きく変わります。
問いかけの基本的な性質を理解すると、チームメンバーの意見を引き出しやすくするためのいくつかのルールが見えてきます。
実際にあなたのチームのミーティングで実践する場面を想像しながら、問いかけの基本を押さえていきましょう。
問いかけとは、仕事のさまざまなコミュニケーション場面において、「相手に質問を投げかけ、反応を促進すること」です。
相手とは、1人の場合もあれば複数名の場合もあるでしょう。これまでは仕事はオフラインでひとつの場所に集まって進めることが一般的でしたが、オンラインにおける同期型のコミュニケーションもここに含めます。
アンケート、インタビュー、学校の試験、クイズ番組などを思い浮かべればわかる通り、「質問」は、投げかけられた相手に何かしらの「反応」を促します。
選択肢を選ぶ、意見を述べる、解答を記入する、首を傾げる、わからず降参する、など。あなたが質問することで、相手は何かしらの反応を返してくれる。問いかけとは、たったこれだけのシンプルなコミュニケーションです。
なぜこの「問いかけ」に工夫を凝らすことが、チームのポテンシャルを活かす結果につながるのでしょうか。
それは、あなたの「質問」に対して、相手が返す「反応」のメカニズムに秘密があります。
質問の仕方によって
相手の反応が変わる
少し身近な質問を例に考えてみましょう。たとえば、「昨晩、何を食べましたか?」という質問を思い浮かべてみてください。
あなたはおそらく昨晩の記憶を振り返って、実際に食べたメニュー(あるいは食事を抜いてしんどかった記憶)を想起するでしょう。
この質問は、あなたに「記憶を思い出す」という反応を起こすことに成功しました。

同書より転載
もしこれが、「1年前の今夜、何を食べていましたか?」という質問だったらどうでしょうか。
よほど記憶力に自信がない限り、正確な記憶を思い出すことはできないでしょう。困ったあなたは、スマホのカメラロールを辿ることで、手がかりを探すかもしれません。
先ほどと同じような質問でも、「1年前」という制約が加わることで、「記録を調べる」とか「お手上げ」といった反応に変わりました。
他にも「この近くに、評判の良い和食の店はありますか?」と質問されたら、心当たりの名店を紹介して「知識を披露する」かもしれませんし、その場でスマホを取り出して「情報を検索する」かもしれません。
このように、投げかける「質問」の仕方によって、相手の「反応」は、まったく別のものになります。
「問いかけ」ひとつで相手は
自身の価値観をも内省する
このメカニズムは、「問いかけ」の奥深さについて理解するうえで、とても重要です。もう少し別の例も交えて、その原理を探っていきましょう。
たとえば「これまでの人生で、最も『豊か』に感じられた食事はなんですか?」と質問されたら、いかがでしょうか。ずいぶん壮大な質問ですから、すぐには答えられないかもしれませんが、せっかくの機会ですので、考えてみてください。
これまでの質問のように、単に「記憶」「記録」「知識」「情報」を手がかりにするだけでは、答えられそうにありません。
そもそも、自分にとって、「豊かな食事」とは、どんなものだろうか。自分の価値観について深く内省しなければ、納得のいく結論は出せないでしょう。
もしかすると、すっかり悩み込んでしまったかもしれません。そんなあなたに、「助け舟」となる追加の質問を投げかけましょう。
「無理に一番を決めなくてもかまいません。いま頭に浮かんでいる、これまで『豊か』に感じられた食事の思い出を、いくつか教えてもらえませんか?」
このように聞かれたら、あなたは少し気が楽になって、ちょうど頭に浮かんでいた2つか3つの候補について、語ることができるかもしれません。
今の時点ではまだ納得のいく結論には辿り着けていないかもしれません。それでも、あなたから語られるいくつかの思い出は、あなたのこだわりが詰まったエピソードになっているはずです。
こうして、この質問はあなたが「価値観を内省する」機会をつくり出すことができました。
問いかけはチームの未知数を
照らす「ライト」である
以上のように、同じ「食事」に関連する問いかけひとつとっても、質問の仕方を変えることで、相手の「記憶」を喚起したり、「知識」を引き出したり、「価値観」を表出させたりなど、さまざまな反応を引き起こすことができる。これが、問いかけの基本的なメカニズムです。

同書より転載
なぜ質問によって相手の多様な反応を引き起こせるのでしょうか。
それは、問いかけに「スポットライト」のような機能があるからです。問いかけが放つライトの光は、チームにおける「未知数」を照らします。
しかしチームで進める日々の仕事においては、未知数は当然ひとつではありません。
いま向き合うべき課題は何か。最適な手段は何か。会社のトップはいま何を考えているのか。あのメンバーはなぜあんなに熱心にアイデアを語っているのか。それを聞いているあのメンバーは、何を思って黙っているのか。最近は忙しいのか、余裕があるのか。何にこだわって働いているのか。何が得意で、何が苦手なのか。そもそもなぜこの仕事に就いたのか。今後、どうなっていきたいのか。
挙げればキリがないほど、チームには「まだ明らかになっていないこと」が無数にあります。

同書より転載
問いかけは
相手の感情を刺激する
忙しい日々の中で、私たちは周囲の1人ひとりの未知数をいちいち気にかけようとはしません。しかし、質問の工夫によってひとたび未知数にスポットライトを当てると、あなたと相手の間で関心が共有されて、「未知数を明らかにしよう」というエネルギーが生まれます。
ライトの当て方次第で、そのエネルギーは「記憶を想起すること」に活用されるかもしれないし、「価値観を内省すること」に活用されるかもしれません。うまくいけば、相手の衝動をくすぐり、固定観念に揺さぶりをかけ、深い対話的なコミュニケーションを促進できるかもしれません。
ねらい通りの「反応」を引き出すために、どの未知数に、どのようにライトを当てるとよいか、「質問」を工夫する。これが、問いかけの本質なのです。
もうひとつ、問いかけが持っている重要な特徴として、覚えておかなければならないものがあります。それは、投げかけられた質問は、相手の何かしらの反応を引き起こす過程でさまざまな「感情」を刺激する、ということです。
もしあなたが、食に対して一定のこだわりを持っていたのであれば、前述した「これまでの人生で、最も『豊か』に感じられた食事はなんですか?」という質問を考える時間は、前向きで楽しい時間であったはずです。
チームのポテンシャルを活かす
「良い問いかけ」を会得する
むしろ、こだわりが強いあまりに「一番が決められない」と、悩み込んでしまったのかもしれません。
他方で、もしさほど食に関心がなかったのであれば、「『豊か』な食事と言われてもなぁ」と、モチベーションがあがらなかったかもしれません。最初に頭に浮かんだ食事のエピソードを適当に話して、質問をやりすごしたくなったかもしれません。
逆に、もし質問が「これまで最悪だった食事、ワースト30はなんですか?」だったとすれば、あなたの食への関心の強さにかかわらず、「なぜそんなことをわざわざ考えなくてはならないのか」と、文字通り「最悪な気持ち」になっていたかもしれません。

『新 問いかけの作法』 (安斎勇樹、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
このように、「質問」は、相手の気持ちを前向きにも後ろ向きにもさせます。
終わったプロジェクトをチームメンバーで振り返るときにも、「特によくできた、こだわりのポイントはなんですか?」とポジティブな面を問いかけるのと、「なぜこんなやり方でやってしまったのですか?反省点はなんですか?」とネガティブな面を問いかけるのとでは、相手の「反応」はまったく別のものになるはずです。
チームのポテンシャルを活かす「良い問いかけ」とは、この反応のメカニズムを使って、メンバーの「こだわり」をうまく引き出していくことに他なりません。
うまくいかなかったことを反省する機会はもちろん必要ですが、相手が前向きな気持ちになれる質問を、意識的に投げかけたいものです。