「ハイエース」2月に改良も7月に生産停止の真意

「ジャパンキャンピングカーショー2026」で見たハイエースキャンパーの一例(筆者撮影)
商用車のベストセラー、トヨタ「ハイエース」の未来はどうなるだろうか?
トヨタは、2月2日にハイエース(バン・ワゴン・コミューター)を一部改良して発売した。新たに、「レーダークルーズコントロール」などを新搭載するなど、一部改良といっても大きく手が入っている。
その一方で、ハイエースの販売に関わる各方面から「7月末でいったん生産(販売)を終えて仕切り直す」という話も聞かれるのだ。
また、次期モデル(通称400系)へのフルモデルチェンジがいつになるのかも、大いに気になるところである。
そこで、ハイエースの現状とこれからについて、1月30日〜2月2日に幕張メッセで開催された「ジャパンキャンピングカーショー2026」を巡りながら考えてみた。
第14回「キャンピングカーアワード」中村獅童さん
主催者のジャパンキャンピングカーショー2026実行委員会によると、今回のショーには185社、車両は過去最多の452台が出展されたという。
オープニングセレモニーでは「キャンピングカーアワード」授賞式が開催され、俳優の中村獅童さんが第14回アワードを受賞。第13回の受賞者でタレントの田村淳さんから引き継ぎが行われ、田村さんは新たに日本RV協会公認 2026キャンピングカー親善大使に任命された。

田村淳さんから中村獅童さんへと引き継がれた「キャンピングカーアワード」(筆者撮影)
そのまま2人のトークショーへ。中村さんは、島根県出雲地方に家族でキャンピングカー旅行を楽しむなど、キャンピングカーのヘビーユーザーで、年間走行距離は1万6000kmに及ぶという。「キャンピングカーを通じて家族との時間を大切にしたい」と話した。
また田村さんは、キャンピングカーを通じてさまざまな人との交流が生まれたことを楽しんでいると語った。
日本のキャンピングカーは、1970年代の初期普及以降に何度かのブームがあり、需要は変動したが、2010年代以降は市場全体が安定的に成長している。
特にコロナ禍では三密が重視され、さらに人々のライフスタイルの多様性が一気に拡大したこともあって、キャンピングカー市場は確固たるものになったと言えるだろう。
ところが、国内キャンピングカーの販売総額は、昨年対比で減少した。理由は、ベース車両の供給不足だ。

トラックの荷台を仮想するキャブコンは、トヨタ「カムロード」をベースとするものが多い(筆者撮影)
代表的なベース車は、キャンピングカー市場の中核にある「バンコン」分野向けのハイエースである。
今回のオープニングセレモニーでも、日本RV協会の荒木賢治会長が、会場内にハイエースの出展数が例年と比べてやや少ない状況を指摘。「早く平常(の状態)に戻してほしい」と、ベース車としてのハイエースの安定供給を自動車産業界に求めた。
キャンピングカーは、自動車メーカーが生産・卸売販売した車両(ベース車)を、キャンピングカービルダーが新車の正規販売店を介して購入して架装するのが一般的だ。
また、正規販売店がキャンピングカーを仕立てるケースも少数だが存在するほか、ステランティスがB2B(事業者間取引)としてフィアット「デュカト」を扱う。

フィアット「デュカト」は「ハイエース」よりも大型の商用バン(写真:Stellantis)
最大の要因はハイエースの「未定」納期
会場内で複数のキャンピングカービルダーに話を聞いたところ、その多くが「ハイエース(ベースのキャンピングカー)の納期は未定」という。
その理由としては、ベース車を扱うトヨタ系販売店から2月発売の一部改良モデルは、販売店向けの振り当て台数がすでに埋まっており、また今年7月目処で生産が一旦終わり、その後の生産開始と納期が未定だからだという。
一旦生産が止まる理由は、「法規対応と聞いている」という声がほとんどだった。
では、近年のハイエースに関するトヨタ側の動きを整理してみよう。
型式から「200系」と呼ばれる現行モデルは2004年に登場し、今回のマイナーチェンジによって200系として「9型」となる。
Bi-Beam LED ヘッドライト(メーカーオプション)、レーダークルーズコントロール(先行車追従機能、コーナーでの速度抑制機能付き)、ダッシュボードでのカラーデジタルメーター採用など、いわゆる先進装備が拡充したが、車体やエンジンなどクルマの中身に大きな変更はない。

9型「ハイエース スーパーGL」Bi-Beam LED ヘッドライト装着車(写真:トヨタ自動車)
実は、9型が登場する前の時点で、ハイエースはすでに長納期だった。
トヨタは自社ホームページに「工場出荷時期・納車時期の目処について」として定期的に情報をアップデートしているが、記載がある34車種のうち22車種について、具体的な納期を明記せず「詳しくは販売店にお問い合わせください」と記している。ハイエースもそのうちのひとつだ。
そのため、キャンピングカービルダーは取り引きのある地元のトヨタ販売店に問い合わせるのだが、現状では「(9型は)7月末で一旦、生産が終了。その後の詳細がわからない」という回答が戻ってくる。
フルモデルチェンジ(通称400系)はいつに?
では、なぜハイエースを含めた多くのトヨタ車が長納期になっているのか。
トヨタ関係者らの話をまとめると、各種の認証工程に十分に時間をかけており、そこでの遅れが生産や物流などに段階的に影響を及ぼしていると見られる。
ハイエースについては2月に9型としてマイナーチェンジするも、再び認証など法規対応で一旦生産を止める必要があるのだろう。ただし、それがどのような内容なのかについては明らかになっていない。
では、ハイエースのフルモデルチェンジ(通称400系)はいつなのか?

300系と呼ばれる「ハイエース」はボディが大きく、海外向けのみ販売されている(写真:トヨタ自動車)
キーポイントは、三重県にあるトヨタ車体・いなべ工場の生産体制だ。
トヨタ車体は、トヨタグループで商用車やSUVなどを企画・製造している企業で、25年6月27日に「トヨタ車体、将来の商用車開発・生産を強化」を発表している。
その一環として、いなべ工場(三重県いなべ市)を商用車専用工場とすることを明らかにした。これにともない、27年度末をめどとして、いなべ工場で生産している「アルファード」「ヴェルファイア」をトヨタの田原工場(愛知県田原市)に移管することでトヨタと合意したという。
トヨタ車体は、将来の物流ビジネスを支える「次世代商用バン」の開発と生産を進めるとしており、その拠点がいなべ工場になる。
現時点で、トヨタの次世代商用バンといえば、「ジャパンモビリティショー2025」に出展された、「ハイエースコンセプト」や「KAYOIBAKO(カヨイバコ)」がある。
「ハイエース群」として200系も併売か?
筆者が関係者に話を聞いたところ、「KAYOIBAKOは思想だ」との説明を受けた。
トヨタでは近年、「クラウン」と「ランドクルーザー」を「群(ぐん)」と呼び、駆動方式や車体構造を超えたブランド戦略を打ち出している。
そうした群戦略を商用車に広げるのがKAYOIBAKO思想なのだと、筆者は腑に落ちた。

「ジャパンモビリティショー2025」に出展された「ハイエースコンセプト」(筆者撮影)
つまり、ハイエースコンセプトもこの思想の中にある存在であり、構造として見ればガソリン車/ハイブリッド車/プラグインハイブリッド車/EV/カーボンニュートラル燃料などへの対応が可能となる。
アルファード/ヴェルファイアの田原工場移管が2027年度末めどであることから、ハイエースのフルモデルチェンジは2028年度と見るのが妥当だろう。
一方で、トヨタ車体を通じて200系ハイエースやマイクロバスの「コースター」を生産する岐阜車体工業(岐阜県各務原市)での今後の生産体制について、ニュースリリースはない。

筆者所有の「ハイエース」で岐阜車体工場を訪れたときのカット(筆者撮影)
日本での交通事情、住宅事業、また個人事業主や前述のキャンピングカーでの需要などを考えると、現行200系は生産体制を維持する可能性が高いと筆者は見る。つまり、200系と400系の併売である。
そうなれば、200系も「ハイエース群」またはKAYOIBAKO思想の中に組み込まれることになるだろう。いずれにしても、まずは9型の安定した供給が望まれる。