日産の新型「リーフ」がクルマとして秀逸な理由! 公道走行して感じたEV普及の起爆剤となる可能性と、それを阻む業界の構造問題

千葉県・成田空港近くのホテルを起点に行われた新型「リーフ」の報道陣向け試乗会 Photo by Kenji Momota
日産自動車のEV「リーフ」が第三世代に進化した。リーフはグローバルでEV市場を開拓した、まさにフロントランナーだ。しかし、直近での国内EVシェアは2%弱にとどまる。海外では欧州のEVを普及する政策が一部修正され、米国では税制優遇措置が終了し、EV需要の先行きが見えない。そうした中、リーフはEV普及の起爆剤となるのか。公道試乗を通じて考えた。(ジャーナリスト 桃田健史)
EVとしてではなく、クルマとして良い出来栄え
「やはり、日産自動車としてのEV思想を貫き、『リーフ』らしく進化していた」
新型リーフを千葉県・成田空港周辺の一般道と高速道路で試乗して、そう感じた。
初代モデルと2代目モデルと比べると、3代目となる新型リーフはダイナミックでスポーティー性を強調した外観となり、どんな走りをするのか興味を持っている人が多い。
だが、実態はリーフとしての正常な進化である。ただし、その進化の度合いは極めて大きいといえる。
EVとしてではなく、グローバル市場で中型車に相当するC/Dセグメントでの新たなベンチマークといえる秀逸の出来栄えだ。
新型リーフに関して日産のこれまでの動きを振り返る。オンラインでグローバル向けに発表したのは昨年6月17日だった。実は、この少し前、横浜グローバル本社で報道陣向けに技術説明会が行われていた。日本仕様については10月8日に上級グレード「B7」の発売を発表。これに伴う発表会では、落語家が落語調で全体をリードするという奇策を講じて、報道陣やリーフユーザーの度肝を抜いた。一般向けの初公開はジャパンモビリティショー2025(10月31日~11月9日)。
日産によれば、2026年1月末時点で新型リーフ日本仕様・B7グレード(バッテリー容量78kWh)の注文台数は約5000台だという。
顧客からの声としては、大きく3つの分野がある。
一つ目は、デザイン、クルマのサイズ、先進安全機能など「クルマとしての魅力が向上した」という声。新規顧客では、こうした見た目から興味を持つ人が多い。
二つ目は、夏や冬など季節を問わず航続距離が伸び、急速充電時間が短くなるなど「EVの使い勝手の進化」。これは歴代リーフユーザーからの評価だといえる。
そして三つ目が、「試乗・商談を通じて」、EVとしての静粛性、乗り心地、コストパフォーマンスなどを実感したという声である。
では、実際に公道で走行するとどう感じるのか?
なぜ2トン超えのクルマが「軽い」と感じるのか?
「スーッと滑らか。ずっと乗り続けたくなるクルマ」
試乗前に聞いた、開発責任者らのプレゼンで強調された、新型リーフの開発コンセプトである。
なんとも抽象的な表現だが、試乗してすぐに日産が伝えたいことが分かった。パワーステアリングのフィーリングはマイルドだが、クルマ全体が軽い印象。軽いといっても車重は2195kgと堂々の2トン超え。ボディ寸法が全長4360mm×全幅1810mm×全高1565mm(運転支援システム「プロパイロット2.0」装着車)というサイズ感なので、もっとドッシリするかもしれないと思っていたが、クルマの動きに重ったるさは全くない。
クルマ全体に張りがあり軽快に動くので、ドライバーの感覚としては「軽い」と感じる。

千葉県・成田空港周辺の一般道を走る様子 Photo by K.M.
この「軽い」という感覚を技術的に紐解いてみたい。
まず、車体本体にCMF-EVプラットフォームを採用、バッテリーケースと前後サスペンションの結合の最適化、サスペンションメンバーの後側ブッシュの向きを最適化したことなどにより、ドライバーの操作に対するクルマの応答に遅れがなく、かつ音や振動を低減して静粛性が高い。
また、パワーステアリングのセッティングも効果的だ。新たにラックアシスト式を採用したことでハンドル操作に対するクルマの動きのスムーズさがあり、ハンドルをわずかに切り始めた領域で、ドライバーがパワーステアリングの適度な重さを感じる。
さらに、前後ショックアブソーバーの減衰力のバランスを変更したことで、路面の変化への対応や道路のつなぎ目の乗り越えなどで乗り心地の良さを実現している。
こうした車体型の進化に加えて、モーターの改良によるモーター自体の振動の低減や、パワートレインと車体との連結部の高剛性化にもこだわった。
さらに、1万分の1秒単位でのモーター制御によって、ギアの接触ショックを低減している。
こうした各種技術の積み重ねによって“スーッと滑らかな走り”が実現した。
つまり、筆者の場合は、クルマの動きのスムーズさを軽さとして捉えたといえる。
「ずっと乗り続けたい」と感じる穏やかな車内空間
しばらく一般道を走っていて、インストルメントパネルや操作スイッチがかなり低い位置にあることが、軽くスムーズな走りをより快適に感じさせるのだと思った。
シートの高さを最も下げた状態でも、インストルメントパネル全体がドライバーの胸の位置より下の、腰の位置に来る。

新型「リーフ」のインテリア。インストルメントパネル等の位置が低いのが特徴 Photo by K.M.
そのため、フロントガラスに投影されるヘッズアップディスプレイも少し上から見下ろす感じになる。
こうした乗員の配置位置により、前方や側方への見切りがとても良い。スタイリッシュなボディデザインにより全高を抑えているが、頭上の方向が息苦しいとは感じない。特に、試乗車はメーカーオプションの調光パノラミックガラスルーフを装着しており、頭上の開放感が大きかった。
次に、東関東自動車道に乗り、佐倉ICを出てUターンして大栄ICに向かった。
このルートでは途中、最高速度120キロ区間があるので、料金所での加減速、本線での車線変更や追い越し加速などを検証した。さらに、インターチェンジやサービスエリアへのコーナーなどでクルマの動きを確認してみた。
すると、一般道で感じたクルマの軽さやスムーズさがより鮮明になった。
インターチェンジの大きなコーナーや、サービスエリア出入り口で路面のアップダウンがあるコーナーなどでも、「あれ、こんな簡単にクルマ全体が素直に曲がっていくのか!?」と驚くほどだ。
クルマ全体に張りがあり、柔軟性があって軽く感じることで、車内空間がとても穏やかである。だから、ドライバーの精神的・肉体的な負担が軽減されて疲れにくい。
新型リーフはグローバル市場では小型・中型車であるCセグメントに属するが、EVとしてではなくガソリン車やハイブリッド車などを含むCセグメント全体の中で見ても秀作だ。
こうした感想に対して日産の開発者は「EVだからではなく、タイヤのグリップ力に頼るのではなく、4つのタイヤ(サスペンション)を最適に使うクルマづくりを目指した」と表現した。
そのために、車両の前後重量配分、モーターやパワーステアリングの制御などを最適化しアクセルやハンドルをゆったり操作してもクルマが素早く動くように仕立てた。
日産が目指す「スーッと滑らか」が見事に実現できている。
筆者はリーフ誕生に至る2000年代後半から、日産のEV開発の現場を日米欧各地で見てきた。初代と2代目のマイナーチェンジを含めた量産モデルにも多数試乗し、歴代のEV開発関係者らと日産が目指すEV像について意見交換してきた。
その上で、今回試乗した3代目リーフは、初代リーフが目指した大衆向けの次世代EVという信念をしっかりと継承していると感じる。「スーッと滑らか。ずっと乗り続けたくなるクルマ」という言葉は、とてもリーフらしい。
本格普及に向けた最も重要なことは何か?
最後に、EV普及に向けた課題を考えたい。
日産によれば、EVを検討したが購入しなかった主な理由トップ3は次の通りだ。
充電インフラが不十分、航続距離の不安、そして充電時間が長い。

東関東自動車道下り線の酒々井(しすい)パーキングエリアで急速充電する様子 Photo by K.M.
これら3つの課題については、充電インフラは段階的に拡大傾向にあり、航続距離と充電時間についても新型リーフは大きく改善している。
そうはいっても、給油から充電への行動変容に至るには個人差がある。ライフスタイルが違うからだ。
欧州のように国や地域が政策としてEVシフトを仕掛けても、人々のライフスタイルや社会が一気に変わることは難しいことが明らかになった。
一方で、国民に対する国の影響力が強い中国では世界で最も早くEVシフトが進み、またEV技術を応用したプラグインハイブリッド車の市場もEVと併せて一気に拡大している。
そうした中、日本では今年、リーフ、スズキ「eビターラ」、スバル「トレイルシーカー」、また軽EVではBYD「ラッコ」、スズキ・ダイハツ・トヨタによる共同開発の商用車など、新型EVが続々と市場導入される。
ここで改めて、EV普及での重要課題となるのがリセールバリュー(再販価格)だ。
現状で、EVのリセールバリューは高いとはいえない。2010年代に比べるとリセールバリューは上昇しているとはいえ、新車買い替えの動機付けとしてのインパクトは弱い。
EVのリセールバリューを巡っては、電池の劣化状態の評価を標準化する動きがあるが、そうした技術論とともに、中古EVの商流について業界が一丸となって取り組む仕組みが必要だと感じる。
ただし、自動車メーカーは企画・製造・卸売りが本業であり、新車販売や二次流通には直接関わらないため、EVリセールバリューの安定化を議論する場が設定しづらい。
その上で、可能性としては、自動車メーカーでつくる業界団体・日本自動車工業会(自工会)が掲げる「新7つの課題」の中にEVリセールバリューの安定化の議論を組み込むことが考えられる。
新7つの課題の一つに、サーキュラーエコノミーの推進がある。EVでは、バッテリーのリユースやリセールが含まれるが、EVリセールバリューの商流についても自動車販売業界と議論を深めるべきではないだろうか。
新型リーフが、クルマとして大きく進化した今、EV普及に向けた抜本的な業界変革が必要だと強く感じる。