「業界地図」見方・使い方③ 「つなげて読む」方法
※本記事は会社四季報オンラインにも掲載されています。
皆さん、こんにちは。『業界地図』編集部です。
今回からは、業界地図の少し違った読み方として「業界研究の深め方」をお伝えします。業界地図には多くの情報が載っているので、ただ眺めるだけでは、頭の中を情報が流れていってしまうだけかもしれません。
そこで、少しでも読者の皆さんの興味に沿った内容になるよう、業界研究の深め方を2つの方法でお伝えしていきます。
まず最初は「業界地図をつなげて読む」方法です。
並び順ではなく、「キーワード」で業界を横断する
業界地図の業界は、読者にとって使い勝手がよいように、「大きな産業分類を冒頭に置いて、関連する業界が続く」という順で並べています。
例えば自動車で言えば、トヨタ自動車などの完成車メーカーを扱った業界を最初に置き、自動車部品、二輪車、タイヤ、中古車、トラックと並べています。
一方、読者の方はこの並び順にとらわれる必要はありません。自身の興味のあるキーワードなどに沿って読んでいくと、新しい風景が見えてくるかもしれません。われわれはこうした読み方を「つなげて読む」方法と呼んでいます。
例えば、「安全保障」というキーワードに沿って読んでみます。ウクライナでの戦争では、ドローンを使った戦闘が話題を集めました。そこでドローン業界に目を通してみます。ドローンは、人が入れないような橋の下の点検や下水道の点検、離島への荷物の運搬など、様々な用途での活躍が期待されていることがわかります。
また、安全保障分野で大きな注目を集めるのが造船業界です。
かつて日本のお家芸と呼ばれた造船業ですが、現在では中国や韓国企業との競争に敗れ、世界での生産シェアは1割程度に縮小しています。業界再編も活発に進んできました。
ところが近年、造船業をめぐる環境が変わり始めています。アメリカのトランプ大統領の方針によって、中国船籍や中国で作られた船が、アメリカに寄港する際に高額な入港料を取るようになり、日本を含む非中国船の需要が増加しています。
また安全保障面でも、オーストラリアが日本の新型護衛艦を最大11隻を約1兆円で導入することが決まるなどして、需要が増えています。
株価も反応しています。下記の時価総額ランキングのページを見ると、5年前と比べて、防衛や造船関連銘柄の株価が大きく上昇したことがわかります。こうした状況を背景に、造船業界の天気予想が久々に好転しているのです。
ちなみに、2025年2月、「週刊東洋経済」に「もうけの仕組み 2025年版」という特集を掲載しました。そこで取り上げたのがサプライチェーン(供給網)です。
最近、ニュースでもサプライチェーンという言葉を耳にする機会が増えました。自分の企業や業界を中心に置いたとき、川上の仕入先から、川下の販売先までの「つながり」を指しています。
ほとんどの業界は、川上の仕入先から川下の販売先まで、さまざまな業界と取引をしています。そこで、1つの業界の動向だけでなく、その業界とつながっている「縦の動き(サプライチェーン)」と、関連する業界の「横の動き」を意識して読んでみる方法があります。
業界地図では、業界同士のつながりを示す「業界リンク」を掲載しています。従来は関連業界を載せるだけでしたが、26年版からは一部の業界で「仕入先」「販売先」「関連業界」に分けて記載し、サプライチェーンの構図が一目で見て取れるようにしました。
携帯電話事業者業界で仕入先にあたるのは、スマートフォンを作っている会社や、通信網を維持する工事を行う専門工事業者、そして携帯電話の販売代理店業界です。関連する業界としては、スマートフォンを使ってさまざまなサービスを提供している、決済、アプリ、EC(eコマース)などが挙げられます。
業界比較から見えてくる意外な事実
以下は、携帯電話事業者のサプライチェーンに関連する業界の「市場規模」「平均年収」「平均利益率」「天気予想」の一覧です。こうして並べると、どの業界に勢いがあるのか、利益率が高い業界はどこか、平均年収が高い業界はどこか、といったことが一目でよくわかります。
携帯電話事業者を中心に株式投資先や就職先を探していくと、サプライチェーン上の専門工事業界の方が平均年収が高かったり、「天気予想」に勢いがあったりすることがわかります。
また、eコマース業界は市場規模が大きくても、平均年収や利益率が低いといったことも見えてきます(楽天グループの巨額の赤字が利益率を押し下げている可能性も捨てきれませんが)。
さらに、電子部品業界は日本の製造業の中でも世界的な競争力を誇っていますが、意外に市場規模は大きくないということも見て取れます。
このようにサプライチェーンの流れを意識することは、「先読み」につながります。例えば今、専門工事業界では人手不足から仕事を断る状況が常態化しているそうです。これが今後、携帯電話事業者の業界にどういう影響を及ぼしてくるのか、考察してみるのも面白いかもしれません。
今回は「業界地図をつなげて読む」方法を紹介しました。次回は業界研究の深め方として、過去と現在の業界地図を「比べて読む」方法について解説します。
※『業界地図』の内容は会社四季報オンラインの「業界研究」ページでもご覧いただけます。
この連載では一部、25年9月に東京証券取引所で行ったセミナーの資料を使っています。