「東横イン」「ルートイン」と何が違うのか?「アパホテル」が利益率35%を実現できる根本理由――業界地図を塗り替えた拡大戦略の実像とは
利益率35%と53年連続黒字経営の実績
2026年2月11日、アパグループ創業者で会長の元谷外志雄氏が82歳で死去した。1971(昭和46)年4月に注文住宅販売事業で創業し、その後マンション分譲やホテル事業へと領域を広げ、夫人でアパホテル社長の元谷芙美子氏とともに、グループを国内最大級のホテルチェーンへと成長させた。業界では「ホテル王」として知られる存在である。政界との結びつきも強く、藤誠志(ふじせいじ)のペンネームで著述活動も行った。発信力の強さと独自の存在感は、ホテル業界の枠を超えて注目を集めてきた。
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事業は2022年4月に長男の元谷一志氏(現社長兼CEO)へ承継されている。近年は記者会見やメディア対応の前面にも一志氏が立ち、経営の世代交代が進んでいた。
アパグループは同族経営の非上場企業であり、グループ内各社の詳細な関係は公表されていない部分もある。一方で、公式サイトでは連結決算や新規ホテル用地の取得状況などを開示しており、経営数値の情報発信は積極的だ。
公開資料によれば、2024年11月期の連結決算(2025年2月28日発表)は、売上高2259億7000万円で前期比18.2%増、経常利益795億8000万円で同44.0%増となった。利益率は
「35.2%」
に達し、ホテル業界のなかでも高い水準にある。公式サイトの「数字で見るアパグループ」では、全国1015ホテル・13万9741室の展開、タワーホテル17棟、日本最大級の2,311室を擁する横浜ベイタワー、日本最高層50階の東京ベイ幕張、1000室超の大型ホテル7棟、そして53年連続黒字経営など、事業規模と実績を示す数値が並ぶ。
ホテル業と旅行業の融合モデル

2022年、大阪市内のホテル起工式での元谷外志雄氏と芙美子氏(画像:アパグループ)
ただし、1015ホテル・13万9741室という数字には注記が必要だ。公式サイトによれば、この数値には建築中や海外、フランチャイズに加え、「アパ直参画ホテル」も含まれている。建築中や海外、フランチャイズを合算する手法は他社でも見られるが、アパ直参画ホテルの扱いは性格が異なる。
アパ直参画ホテルとは、アパグループが運営する宿泊予約ポータルサイトやアプリに参加しているホテルを指す。直営やフランチャイズとは別の枠組みである。
そのため、1015ホテルという数字をそのままチェーン全体の拠点数とみなすには慎重さが求められる。
一方で見れば、アパグループはホテルチェーンでありながら、従来はJTBや日本旅行、じゃらん、楽天トラベルといった旅行会社やOTA(インターネット上で宿泊や航空券などの予約を仲介する旅行予約サイト)が担ってきた宿泊予約機能も自社で展開していることになる。ホテル運営と予約プラットフォームの両面を持つ業態といえる。
ブライダル産業新聞社「国際ホテル旅館」による全国ホテル・旅館チェーン客室数ランキング(2026年1月1日時点、日本国内のみ)では、1位が東横インの343ホテル・7万3197室、2位がアパグループの303ホテル・7万2279室、3位がルートインの362ホテル・6万4167室となっている。アパ直参画ホテルを除いても、アパグループが国内有数の規模を持つことに変わりはない。
東横イン・ルートインとの立地戦略の違い

アパ直のウェブサイト(画像:アパグループ)
東横イン、ルートイン、アパグループの3チェーンはいずれも同族経営の非上場企業で、ビジネスホテルを中心とする宿泊特化型で全国展開してきたという共通点がある。このため、業界内では比較対象として語られることが多い。
もっとも、立地戦略には違いがある。競合する地域もあるが、出店エリアには一定の棲み分けが見られる。
東横インは大都市圏と県庁所在地クラスの都市を主軸とし、駅前立地が中心だ。大都市圏では、それまでホテルがなかった駅前への出店も目立つ。新幹線の新駅が開業した際には、周辺の開発が進んでいない段階からいち早く進出することで知られる。
ルートインは東京や大阪など大都市圏での出店は多くない。一方、地方では県庁所在地に加え、さらに規模の小さい都市にも展開する。駅前型もあるが、無料の平面駐車場を確保できる郊外の幹線道路沿いが主な立地だ。
これに対しアパグループは、直営店に限れば東京や大阪など大都市圏が中心である。都心や副都心の駅前を重視し、形状が整っていない土地でも取得を進めてきた。いわゆる「ドミナント戦略」と呼ばれる手法で、東京都内の日本橋エリアなど特定地域に複数棟を集中的に建設している。地方ではフランチャイズで加わったホテルも多く、立地は都市ごとに異なる。
なお、東横インはビジネスホテルに特化し、一般的なリゾートホテルは展開していない。ルートインもリゾート型は例外的な存在だ。アパグループも本格的なリゾートホテルは少ないが、近年は大都市圏の大型ホテルに都市型リゾートの要素を取り入れている。
飲食部門の外部活用による地域連携

2026年2月に開業したアパホテル福島駅東(画像:アパグループ)
立地戦略に加え、東横インやルートインとアパグループでは運営方式にも違いがある。
東横インとルートインは、建物を地主が建設する場合と自社で建設する場合の差はあるものの、運営はほぼ直営で行っている。フランチャイズ展開は基本的に見られない。
これに対しアパグループは、東京や大阪など大都市圏では自社物件による直営が中心である一方、地方ではフランチャイズ方式の比重が高い。
館内の飲食についても違いがある。東横インは直営で朝食のみを提供し、ルートインも直営で朝食と夕食を提供する形を徹底している。そのため、どの地域のホテルでも食事内容に大きな差はない。
一方、アパグループは「アパ社長カレー」など自社ブランド商品を展開しているものの、大都市圏の大型ホテルを除けば飲食施設を直営で運営するケースは多くない。館内の飲食店はテナント形式が中心で、焼き鳥店やインド料理店など店舗ごとに内容は異なる。同じアパホテルでも、提供される食事は施設ごとに違いがある。
これは宿泊部門に経営資源を集中させ、飲食部門は外部の事業者に委ねるという判断と見ることもできる。同時に、館内スペースを地元の飲食店に開放することで、地域との接点を持つ形にもなっている。