【米国市況】国債急落、原油高でインフレ懸念-ドル一時157円台後半
(ブルームバーグ): 2日の米金融市場では、中東での紛争激化を受けて原油価格が大幅に上昇。インフレ再加速への懸念から、国債相場は急落(利回り上昇)。市場では米利下げ観測が後退し、ドルが買われた。ドルは対円では一時1ドル=157円台後半まで値上がりした。
米国債は一時、昨年4月以来の大幅安となり、利回りは数カ月ぶりの低水準から上昇した。この日発表された米ISM製造業総合景況指数が2カ月連続で拡大圏となったことや、仕入れ価格が2022年以来の高水準に急上昇したことも国債相場への重しとなった。
| 米30年債利回り | 4.68% | 7.2 | 1.56% |
| 米10年債利回り | 4.03% | 9.7 | 2.46% |
| 米2年債利回り | 3.47% | 9.6 | 2.85% |
| 米東部時間 | 16時37分 |
世界的な市場混乱時に通常見られるような米国債への資金逃避の動きは限られ、戦闘激化がインフレを再燃させるリスクが意識された。米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利下げ幅に関する織り込みは後退した。
短期金融市場では、今年の初回利下げは9月になるとの見方が完全に織り込まれており、年内に3回目の利下げが実施されるとの予想は消えつつある。
米国とイスラエルによる対イラン攻撃は中東全域に瞬く間に波及した。トランプ米大統領はイランに対する軍事攻撃を必要な限り継続する考えを示した。ヘグセス米国防長官はイランとの軍事衝突が終わりのない戦争に発展することはないと否定する一方、どの程度続くのかについては明言を避けた。
TDセキュリティーズのストラテジスト、ヤン・ネブルジ氏は「質への逃避で買いを入れても、債券市場でそれに見合うリターンは得にくい」と指摘。「振り返れば、金利市場は地政学的緊張が激化する可能性をある程度織り込んでいたのかもしれない」と述べた。
ドイツ銀行の先週のリポートによると、地政学的ショックそのものよりも、原油価格上昇の方が利回りを「大幅に」押し上げる可能性がある。同行ストラテジストは、過去数十年の大規模な地政学的イベントを分析した。これには1990年のイラクによるクウェート侵攻、2001年9月11日の米同時多発テロ、ロシアによるウクライナ侵攻などが含まれる。
一方、ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、マニシュ・カブラ氏は、過去50年間に発生した5回の原油供給ショックは、その後1週間、3カ月、6カ月の各期間において、平均的に米10年債を押し下げる結果となっていたとリポートで明らかにした。
フィデリティ・インターナショナルのポートフォリオマネジャー、マイク・リデル氏は、財政リスクの影響を受けやすい長期債が下落した場合に利益が出るポジションを積み増した。
「世界各国政府がエネルギーや食料の価格を補助金で抑える動きは、ここしばらく続いている」と指摘。「中東危機が長期化あるいは拡大すれば、この傾向は一段と強まるだろう。超長期債利回りは足元の水準では上昇しやすい」と述べた。
アライアンス・バーンスタインのジョン・テイラー氏はこの日の利回り上昇について、こうした動きやインフレへの注目で説明できるとブルームバーグテレビジョンで発言。
それでも、米国債の安全資産としての特性が最終的には再評価される可能性もあるとも付け加えた。

米国債利回り、一時昨年4月以来の大幅上昇
外為
外国為替市場ではドル指数が上昇し、一時、約9カ月ぶりの大幅高となった。米国によるイラン攻撃で安全逃避先としての需要が強まったほか、原油価格高騰によるインフレ再加速懸念で米国債利回りが上昇したことが背景。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時1%上昇。昨年5月以来の大幅高となった。ドルは対円では一時1.1%高の1ドル=157円75銭まで買われた。
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1196.14 | 8.69 | 0.73% |
| ドル/円 | ¥157.31 | ¥1.26 | 0.81% |
| ユーロ/ドル | $1.1692 | -$0.0120 | -1.02% |
| 米東部時間 | 16時37分 |
マネックスの外為トレーダー、アンドリュー・ハズレット氏は「今回の紛争において、究極の安全逃避先はドルだ」と指摘。「『米国売り』は人気のテーマだったが、今や事態は正念場を迎えている。原油や天然ガスが急騰する中、トレーダーは状況が落ち着くのを見極めようと、慣れ親しんだ安心できる場所を求めている」と述べた。
紛争の激化によってインフレ期待が高まり、FRBが年内に追加利下げを実施する余地があるのか疑問が生じている。インフレ率は依然として当局の目標水準を上回っている。
米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによると、市場では総じてドル安を見込むポジションが積み上がっていたが、2月24日までの週にはドルに対する弱気ポジションは縮小していた。
JPモルガン・チェースの為替ストラテジストは、中東の紛争による原油価格の持続的なショックが、ドルは今年下落するという同行見通しへの最大のリスクだとリポートで指摘。「米国・イスラエルとイランの緊張激化は地域の安定にとって重大なリスクだ。為替市場は主にエネルギー価格の経路を通じて反応している」と続けた。
アリアンツ・グローバル・インベスターズは、ドル買いを検討している。過去数カ月にわたってドル売りを続けてきたが、中東での戦争を受けてドルの安全資産としての地位が改めて意識されていることが背景にある。
同社でマルチアセット戦略の最高投資責任者(CIO)を務めるグレーゴル・ヒルト氏は、短期的には「ドルを買う十分な理由がある」とインタビューで指摘。
「当社は長期的な脱ドル化の流れ、およびドルは緩やかに下落していくとの見方を維持しているが、短期的にはより中立的なポジションに戻す必要があるかもしれない」と語った。
また、中東紛争に伴うエネルギー市場の逼迫(ひっぱく)はインフレ圧力を高め、特にユーロ圏と日本に大きな影響を及ぼす可能性があると指摘。両地域はいずれも経済活動を輸入エネルギーに大きく依存しているためで、これは金利見通しを複雑にし、特に日本での金融引き締めの行方に影響を与えかねないとヒルト氏は述べた。

ドル・円の推移
米国株
株式市場では、S&P500種株価指数が小幅上昇。寄り付きから下げ、一時1.2%安となったが、下げを埋める展開となった。
| S&P500種株価指数 | 6881.62 | 2.74 | 0.04% |
| ダウ工業株30種平均 | 48904.78 | -73.14 | -0.15% |
| ナスダック総合指数 | 22748.86 | 80.65 | 0.36% |
航空銘柄が下げる一方、エネルギー株や防衛関連株は上昇。財務基盤が健全な複数のテクノロジー企業も値上がりした。
モルガン・スタンレー傘下のEトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は、原油価格を巡る不確実性が市場全体のセンチメントを左右する大きな要因になり得ると指摘。
「現時点では答えよりも疑問の方が多い。エネルギー情勢が安定化すれば前向きな波及効果が広がるかもしれないが、供給混乱長期化への懸念が強まれば、逆の影響が出る可能性がある」と述べた。
ジュリアス・ベアの株式戦略責任者マチュー・ラシェター氏は「どのような結末を迎えるのかが依然極めて不透明だ。比較的迅速な政治的決着に至る可能性もあれば、紛争が地域全般に飛び火する可能性もある」と指摘。
「戦況が極めて不透明な中では、市場は変化し続ける事実そのものよりも、起こり得るシナリオの確率を織り込んで動く傾向がある」と話した。
モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏率いるストラテジストは、イランおよび中東での紛争激化が米国株に対する同行の強気見通しを損なう可能性は低いと指摘。
「原油価格が歴史的に見て急激なペースで上昇しその水準で高止まりしない限り、最近の出来事が今後6-12カ月の米国株に対する当社の強気見通しを変える可能性は低い」とリポートに記した。

S&P500種の推移
原油
ニューヨーク原油は大幅続伸。中東戦争による最初の影響が、市場で表面化した。原油輸送の要衝ホルムズ海峡が実質封鎖され、サウジアラビアの大型製油所が操業停止に追い込まれたことに、エネルギー市場は揺さぶられている。
ICEフューチャーズ・ヨーロッパの北海原油代表油種ブレント先物は、2025年6月以来の大幅高。イラン革命防衛隊の報道官は同国の石油を地域外に搬出させないと表明し、これが国営メディアで伝わると、原油先物は引け後に一段高となった。世界経済のエンジンとされるディーゼル油先物は、約3年ぶりの高値で引けた。
イラン空爆から3日目のこの日、米政府からは戦闘期間について相反するメッセージが打ち出された。トランプ大統領は戦闘について「4-5週間を想定しているが、それよりはるかに長く継続できる能力がある」と発言。ヘグセス国防長官は一方で、「終わりのない」戦争という概念を否定した。
戦争は中東および世界の原油市場を危険な段階に導く。イランは日量約330万バレルの原油を生産し、世界産油量の3%を担うが、それ以上にエネルギー供給に大きな影響を同国が持っているのは、ホルムズ海峡という地の利だ。ペルシャ湾岸の原油が中国やインド、日本に運ばれるには、この海峡を通過する必要がある。この要衝は世界で流通する原油の5分の1と、ほぼ同比率の液化天然ガス(LNG)を取り扱っている。
RBCキャピタルの商品市場戦略責任者、ヘリマ・クロフト氏は「戦闘長期化のシナリオでは、原油価格が1バレル当たり100ドル台に達すると予測される」とリポートで分析。「エネルギーは現在、明らかにイランでの戦争の直撃を受けている」と述べた。

イラン攻撃を受け原油価格は急上昇 | ロシアのウクライナ侵攻後(22年3月)以来の大幅高
JPモルガン・チェースの推計では、ホルムズ海峡の実質封鎖が25日間続いた場合、産油国の貯蔵タンクが満杯となり、生産を削減せざるを得なくなる。保険市場はすでに、リスク計算の手法確立に向けた対応に追われている。
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、ラスタヌラ製油所の操業を停止した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたもので、この地域でのドローン攻撃を受けた措置だという。これを受けてエネルギー価格は一段高となった。近くの港湾からの原油積み出しは継続されている。
欧州の指標となるガス先物は、一時50%高と約4年ぶりの上昇幅となった。カタールのガス施設がドローン攻撃を受け、LNGの生産が停止された。
石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」のサウジ、ロシアなど有志8カ国は1日、4月の原油供給量を日量20万6000バレル増やすことで合意した。

中東の製油所と石油積み出しターミナル | ホルムズ海峡は世界で流通する石油の5分の1が通過する
マックス・レイトン氏らシティグループのアナリストは「ブレント原油は少なくとも今後1週間、1バレル=80-90ドルのレンジで取引される」と取引開始前のリポートで基本シナリオを示した。
モルガン・スタンレーは今年4-6月(第2四半期)の北海ブレント相場の見通しを従来の62.50ドルから80ドルに上方修正した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は、前営業日比4.21ドル(6.3%)高の1バレル=71.23ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は6.7%上昇し77.74ドル。一時は82.37ドルまで買い進まれた。
金
ニューヨーク金相場は続伸。ただ、中東の紛争激化によるインフレを抑制するためにFRBが政策金利を引き上げるとの観測が広がり、上げ幅は縮小した。
金スポット価格は一時0.3%安まで下げた後に切り返し、約1%高まで戻した。トランプ米大統領はイランでの軍事作戦には必要なだけの月日をかける意向を表明。武力行使に踏み切ってから初めて、目指す4つの目標を説明した。貴金属市場では銀とパラジウムが下落した。
バッファロー・バイユー・コモディティーズのクロス資産マクロ戦略・取引責任者、フランク・モンカム氏によれば、インフレ高進リスクを市場が織り込み始め、金の上値が抑えられた。FRBをはじめ主要国の中央銀行は、物価圧力を抑えるために、政策金利の引き上げを迫られる可能性がある。
実際に金利スワップ市場ではすでに、利下げ見通しの後退を織り込んでいる。金利上昇は通常、利息を生まない金投資にはマイナスに作用する。
地政学的な緊張の広がりや、国際社会との関係や貿易を一変させるトランプ氏の政策が、長期に及んだ金の上昇局面を支えてきた。また中銀による金購入拡大と、インフレと通貨の価値低下に対する投資家の懸念も、金の買い材料となっている。
TDセキュリティーズのアナリストらは「地政学的に不安定な状況やリスクテーク意欲の減退、エネルギー価格の急騰によるインフレ懸念は、金の追い風になる」と1日付のリポートで指摘。数週間前から金のロング(買い持ち)ポジションを縮小させていた投機筋が「中東での今回の展開を、市場に復帰する好機と捉える可能性がある」と続けた。

金は過去最高値に接近、中東での紛争拡大で逃避加速
金価格は1月末に5595ドルを突破した後、大きく押し下げられたものの、依然年初からは23%上昇している。
イランによる報復攻撃はアラブ首長国連邦(UAE)にも向けられた。UAEは中国やインドの金購入者に地金を供給するだけでなく、世界最大の金現物取引ハブであるロンドンからの出荷中継地でもあり、金取引の動脈と位置付けられている。
ソシエテ・ジェネラルの米株戦略責任者、マニシュ・カブラ氏は地政学プレミアムについて、原油価格には大半は織り込み済みだと指摘する。「金は引き続き当社が最も選好するヘッジ手段だ。原油ショックの局面で堅調に推移する傾向があり、規律ある分散投資手段だ」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時55分現在、前営業日比47.76ドル(0.9%)高の1オンス=5326.69ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は63.70ドル(1.2%)高の5311.60ドルで引けた。
(国債相場に新たなコメントを追加し、原油相場を加えます)
原題:Treasuries Sink as Oil Jump Stokes Inflation Fears: Markets Wrap(抜粋)
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