京王の新型車両、目玉の大型フリースペースがなぜ編成の真ん中に?
【汐留鉄道倶楽部】京王電鉄が2026年1月31日に営業運転を始めた新型車両「2000系」は、ベビーカーを押している親や、お年寄りが使いやすくした目玉の大型フリースペースが10編成の真ん中の5号車にある。同じような大型フリースペースを西武鉄道の車両40000系や、切り落とした食パンのような先頭形状を青く塗っているため「青い食パン」と呼ばれる福岡市地下鉄空港線・箱崎線の4000系は片側の先頭車に設けたのに対し、京王が一線を画したのには確固たる理由があった。
営業運転開始を前にした1月17日、2000系の試乗会に参加した。若葉台車両基地(東京都稲城市)を出発して相模原線の若葉台―橋本(相模原市)間を往復し、約35分かけて若葉台車両基地に戻る行程だ。新型VVVFインバーター制御装置を採用することで従来車両より約2割の省エネルギー化を実現し、静かでスムーズな乗り心地を堪能しながら車内をじっくりと視察した。

京王電鉄2000系の外観=2026年1月17日、東京都稲城市
京王の2000系と名付けた車両は2代目だ。「円」をモチーフとしたデザインのステンレス製車体で、緑一色の鋼鉄製車体だった1957年登場の初代2000系とは印象が大きく異なる。ただし、左右に「丸目」の発光ダイオード(LED)の前照灯を配置した位置は、前照灯が上部中央に二つある初代2000系の尾灯があったのとほぼ同じ場所を踏襲した。
「円」のモチーフにのっとり、側面には水色や紫色、ピンク色などの水玉模様を装飾。車内のロングシート座席も無数の水玉模様が彩られており、ドアと座席の間にある袖仕切りも丸みのあるデザインだ。

京王電鉄2000系の車内=2026年1月17日、東京都稲城市
10両編成で、客室には1両当たり片側4カ所に両開き扉を備えており、東京都内の新宿―京王八王子間を結ぶ京王線などで使い、東京都営地下鉄新宿線への乗り入れには用いない。
JR東日本の子会社、総合車両製作所(横浜市)が製造し、2027年3月末までに計4編成、計40両を導入。その後も増備し、1984年に京王初のステンレス製車両としてデビューした7000系は順次廃車にする。
2000系に京王で初めて導入したのが「ひだまりスペース」と名付けた大型フリースペースで、ベビーカーや車いすの利用者と同行者らが過ごしやすいように配慮している。この名称は2025年5月7日―6月10日に利用者に三つの候補から選んでもらったところ、最多の1196票を獲得して選出された。残る「ぬくもりライド」は388票、「ひまわりライド」は227票だった。

京王電鉄2000系の「ひだまりスペース」に立つ佐々木昌さん=2026年1月17日、東京都稲城市
「ひだまりスペース」は5号車の一部にあり、この部分の窓は大型化されている。その狙いを京王の車両電気部車両企画担当課長の佐々木昌さんは「窓の(下部の)位置を下げ、手すりを設置することでお子さまがつかまりながら、外を見られるようにした」と明かす。
車両の中央部には「S」字状の仕切りを設け、その間にベビーカーや車いすを折りたたまずに置きやすくしている。試乗した公務員男性(43)は「ベビーカーで移動することがある親としては広いスペースのため、座っていたり、立っていたりする他に、お客さんにスペースを空けてもらう必要がないのは気持ちが楽になる」と評価し、親子連れらが乗ることを想定したスペースのため「子どもが少し大きな声を出しても許されやすいのも良いと思う」と話した。
また、中央部の仕切りや、壁には人間の腰ぐらいの高さにクッションを取り付けている。これらのクッションについて車両電気部車両企画担当の宮園朋菜さんは「普通の座席に深く腰かけた場合だと立ち上がる時に結構大変な高齢者らが、ちょっと寄りかかれるぐらいの高さに設置した」と教えてくれた。

西武鉄道池袋線を走る40000系=2024年10月19日、東京都東村山市
「ひだまりスペース」とよく似ているのが、西武40000系の大型フリースペース「パートナーゾーン」だ。また、2024年11月に営業運転が始まった福岡市地下鉄空港線・箱崎線の4000系も、車いすやベビーカーの利用者らが快適に過ごせるように大きな空間を確保した「フリースペース」を備えている。
ただし、これらの空間は片側の先頭車の乗務員室の後ろにある。一方、京王2000系の「ひだまりスペース」は編成の中央である5号車にある。これは京王線の駅では5号車付近にエレベーターが設置されている駅が多く、エレベーターを使うベビーカーや車いすの利用者らが乗降しやすくするという配慮からだ。

京王電鉄2000系の乗務員室の出入り口にある窓ガラスは、子どもにも見やすいように下部の位置を低くしている=2026年1月17日、東京都内
そんなきめ細やかな心配りは、「ひだまりスペース」だけにとどまらない。先頭車の乗務員室の車内との出入り口にある窓ガラスは「下の方に大きくしており、お子さまでも運転台や前面の展望が少しでも見やすいように配慮した設計としている」(佐々木さん)。
試乗会に参加した東京都江東区に住む保育園児(6つ)は「すごく楽しく、窓が大きいところとか、運転席がよく見えるところとかが良かった」と称賛した。「円」をモチーフにした快適な新型車両だけに、幅広い世代にとって円満な移動空間になることが期待されそうだ。

「青い食パン」とも呼ばれる福岡市地下鉄4000系=2025年6月18日、福岡市西区
☆共同通信・大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう) 経済部次長。息子が成人した父親としては、「ひだまりスペース」は「もっと早くあれば良かったのに」と感じる空間でした。