トヨタ新型「RAV4」走って分かった大きな進化! 新車載OS「アリーン」によって自動運転はどう変わったのか?

都内で試乗した新型トヨタ「RAV4」の「Z」グレード Photo by Kenji Momota

6代目のトヨタ自動車「RAV4」に試乗した。ワールドプレミアは2025年5月21日、国内発売は同年12月17日。ユーザーへのデリバリーは26年3月に入ってからであり、実車を試乗体験している人はまだ少ない。都内周辺を、「Z」と「Adventure」というRAV4の二つのグレードで走った感想は「丁寧な仕事」だ。試乗後にエンジニアらと意見交換しながら、RAV4進化の実態を確認した。(ジャーナリスト 桃田健史)

世界で販売好調の先代を超える「RAV4」が作れるのか?

社内でフルモデルチェンジ不要との声もあったが…

 トヨタ自動車の新型「RAV4」試乗に先立ち、チーフエンジニアの太長根嘉紀氏は改めて歴史を振り返った。

 1989年の第28回東京モーターショーで出展した「RAV-FOUR」はSUV(当時はRV:レクリエーショナルビークル)の常識を覆し、乗用車と同じモノコックボディを採用。ユーザーの間に賛否両論が巻き起こるも、5年後の94年に「RAV4」として量産されグローバルで人気を博す。

 ところが、2000年代以降にアメリカを中心に巻き起こったSUV(多目的スポーツ車)ブームの中で、RAV4の独創性が市場の中で埋もれていく。

 そこから再び市場のベンチマークになるべく、19年に登場した先代(5代目)の宣伝キャッチコビーは「好きにまみれろ」。トヨタは攻めの姿勢に打って出た。結果は大成功となり、ラギッド感を押し出したスタイリングとオフロード性能を強調し、グローバルで販売が伸びた。

 さらに時代が進み世の中がコロナ禍となると、人々のライフスタイルが多様化し、競合他社のSUVもRAV4路線に寄ってきた印象があった。

 実績で見れば、初代登場の1994年から2025年12月までRAV4のグローバル累積販売台数は約1580万台にも及ぶ、トヨタの稼ぎ頭だ。

 そうした中で6代目RAV4の開発が始まるのだが、社内からは「5代目を超えるRAV4が本当に作れるのか」「(グローバルで)これだけ売れているRAV4を、そこまでして変える必要があるのか」という声があったと、太長根氏は当時を振り返る。

 だから、6世代RAV4の商品企画・開発陣は開発の方向性について大いに悩んだ。

 その上で「現在、そして少し未来のお客様にもっとワクワクする体験を提供しようと、その思いで、腹をくくった」という。

 ポイントは、継承と進化をユーザーに分かりやすく伝えることだ。

 6世代の商品コンセプトは「Life is an Adventure」。

 実車に乗ると、そうしたトヨタの思いがドライバーにどのように伝わってくるのだろうか。

走り出してすぐに分かる、乗り味、走り味の進化

ADAS性能でも想像以上の進化

 では、試乗に移ろう。

 RAV4のグレードである「Adventure」、そして「Z」の順番で乗った。

 結論から言うと、トヨタによる「とても丁寧な仕事」だと感じた。

 その上で、走り味、そしてドライバーが走行中に抱く満足感や驚きは、先代と比べて「明確に違う」と直感できた。

 ユーザーがカタログデータ上で先代と6代目を比較すると、「どんな違いがあるのか?」と疑問を持つかもしれない。

 なにせ、ボディデザインに変更があっても、ボディ寸法が先代とまったく同じだからだ。

 具体的には、全長4600mm×全幅1855mm×全高1680mm、ホイールベースは2690mm。フロントタイヤの中心点から車体先端までのフロントオーバーハングが920mm、またリアオーバーハングが990mmである。

 車内についても、前後シートの距離、荷室全長なども先代と同じという、フルモデルチェンジという観点ではなんとも大胆な設計である。

 だからといって、いわゆるビッグマイナーチェンジではなく、クルマとして抜本的な変化がある。

「Adventure」で走り始めてまず感じたのは、見切りの良さの向上だ。先代ではダッシュボード全体が直立方向に立っていて、横方向に水平なデザインだった。それが6代目になると、ダッシュボード上部が水平方向に円を描き、ダッシュボディ全体が低く感じる。車幅18が55mmあっても、前方と斜め左右の見切りは悪くない。

新型「RAV4」、「Adventure」グレードのインテリア Photo by K.M.

 次に感じた先代との違いは、ハンドル操作からクルマ全体の上質感が分かる点だ。車体剛性の向上、車体とサスペンションとの接合部分の剛性向上、そして車体各所での高減衰接着剤の採用などからドライバーは路面、タイヤ、サスペンション、車体を介するクルマ全体の進化を手のひらで感じ取れる。

 乗り心地も良くなった。都心の一般道と首都高速を走行すると、マンホールや道路のつなぎ目の乗り越えで、路面からタイヤへの入力を「いなしている」ことが分かる。

 総じて「クルマ全体の雑味が減った」という表現が妥当だろう。

 オフロード走行も想定したシティユースを優先するこのクラスのSUVでは近年、スバル「フォレスター」、日産「Xトレイル」、ホンダ「CR-V」なども同様に「雑味の軽減」を実現しているが、6代目RAV4でも「明らかに上質」と分かるほど雑味が減った。

 ブレーキのタッチもいい。従来型の蓄圧タイプから、新電子制御ブレーキシステムを採用したオンデマンド加圧タイプへの変更が大きな効果を生んでいる。HEV(ハイブリッド車)特有のブレーキフィーリングではなく、ガソリン車と同じくコントロール性と応答性が良い。

 パワートレインはガソリン仕様がなくなり、排気量2.5Lのハイブリッドによる全輪駆動をベースにリアをモーター駆動するE-Four(電気式4輪駆動方式)を継承。モーター出力は約8%向上し、燃費も改善した。

 ドライブモードはECO、NORMAL、SPORTを使い分けたが、上質さを優先する走りには、出足がじんわりかつ伸び感がしっかり分かるECOが都心ドライブにはマッチした。

トヨタセーフティセンスの進化も実感

期待が高まるPHEV専用の「GR Sport」

 ADAS(先進的運転支援システム)であるトヨタセーフティセンスの進化にも驚いた。

 進化の背景として、トヨタ車として初採用となる新OS(オペレーティングシステム)「アリーン」と、領域別で複数の車載ECUを統合する新しい制御システムの効果が大きい。RAV4という単一モデルに対してではなく、トヨタ車全体としての電子系フルモデルチェンジというべき時代の変わり目だ。

 そこに、人の感性を重視する、開発におけるスペシャリスト「匠」の運転技術をデータとして取り入れた。

 今回の試乗で特に強く印象に残ったのは、大きく2点。

 1点目は、PDA(プロアクティブ・ドライビング・アシスト)だ。アクセルオフで先行車に近づいた際、また交差点手前でのアクセルオフの際に、クルマの「減速の振る舞いが、ほどよい」のだ。

 2点目は、首都高速でのレーントレーシングアシスト(LTA)が「Adventure」ではコーナー入り口で少し強めに利いて、コーナー旋回時からコーナー脱出時にはハンドルを補助する力が徐々に減少する点だ。

 しかも、その味付けが後に試乗した「Z」とは明らかに違う。

 また、アクティブクルーズコントロールなどトヨタセーフティセンスの機能を稼働させるボタンアクションが、1回で行えることも好感できた。

 話が多少前後するが、「Z」では「Adventure」で感じたハンドルの切り出し時のステアリングへの反力の出方や、路面からの反力に対するサスペンションのセッティングが違う。

「Adventure」はその名称からオフローダー重視の印象を持つが、6代目の乗り味・走り味は「上質さ」を優先する。

 筆者の個人的な好みは「Adventure」だ。

「RAV4」が搭載する2.5Lハイブリッドエンジン Photo by K.M.

 気になるのは、今回は試乗機会がなかったPHEV(プラグインハイブリッド車)の存在である。「Z」に加えて「GR SPORT」をラインアップすることで、RAV4への多様なニーズに応える。

「RAV4」には三つのグレード「Z」「Adventure」「GR Sport」をラインアップ。トヨタのプレゼン資料を撮影 Photo by K.M.

 トヨタ車として初採用となる次世代PHEVシステムで、モーターや制御系の融合や駆動用バッテリーも進化しているという。今回試乗したHEVでも「Z」と「Adventure」では走り味に違いがあっただけに、PHEV専用設定の「GR SPORT」がどんなスポーティー性を見せるのか、ユーザーの多くが興味を持っているだろう。

 近い将来、「GR SPORT」試乗に加えて、HEVでのオフロード走行を試してみたいと思う。

 なお、トヨタによれば、RAV4(HEV)の国内登録台数は25年12月17日~26年2月で約5200台。月販基準台数は3000台。製造はトヨタ自動車の高岡工場と豊田自動織機・長草工場で行う。