【ホルムズ封鎖】原発すべて緊急稼働、脱炭素見直し、米国産原油の輸入拡大、エネルギー政策の大転換が必要な理由

ホルムズ危機を想定していたか?, 原油の中東依存はもはや許されない, 原発、全33基の年内稼働を!, 「脱炭素」をドグマにするな、石炭火力も積極稼働せよ

ホルムズ海峡封鎖で曲がり角を迎える日本のエネルギー政策(写真:ロイター/アフロ)

イランがホルムズ海峡を事実上封鎖し、日本が危機に直面している。輸入する原油の約9割を中東に依存し、多くがホルムズ海峡を通過していることに加え、天然ガス価格の高騰も予想される。ガソリン・電気に多大な影響が出ることは必至だ。経産省出身で政策アナリストの石川和男氏は以前から、ホルムズ海峡の封鎖リスクを指摘してきた。中東情勢の混乱を受けて石川氏が、エネルギー政策の大転換を緊急提言する。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

ホルムズ危機を想定していたか?

──ホルムズ海峡が事実上封鎖され、中東地域全体が不安定になっています。資源国ではない日本はどう動くべきでしょう。

石川和男氏(以下、敬称略):まず言いたいのは、2024年8月にJBpressのインタビューでお話しした通り「イランがホルムズ海峡を(事実上)封鎖するかもしれない」というシナリオを、日本はどれだけ真剣に考えていたのか、ということです。

 ホルムズ海峡の危機という意味で言えば、過去にもタンカー襲撃事件など度々取り沙汰されてきました。日本は原油の約9割を中東に依存し、その多くがホルムズ海峡を通っているのですから、前回「アメリカ産原油の長期契約を結んで、少しでも輸入先を分散しておくべき」と提言したよう、備えをきっちりやっておくべきでした。備えていなかったから、今大騒ぎしているのが現実でしょう。

ホルムズ危機を想定していたか?, 原油の中東依存はもはや許されない, 原発、全33基の年内稼働を!, 「脱炭素」をドグマにするな、石炭火力も積極稼働せよ

石川 和男(いしかわ・かずお) 1965年 福岡生まれ。1984〜1989年 東京大学工学部、1989〜2007年 通商産業省・経済産業省、2008〜2009年 内閣官房(この間、内閣府規制改革委員会WG委員、内閣府行政刷新会議WG委員、政策研究大学院大学客員 教授、専修大学客員教授、東京女子医大特任教授、東京財団上席研究員などを歴任)、2011年〜 社会保障経済研究所 代表 2017年〜 算数脳育研究会 代表理事

 私の予想が当たったか当たってないかはどうでもいい。ただ、今回のホルムズ海峡危機は先行きが非常に不透明で長期化の恐れがあります。価格が高騰するだけならまだいいのですが、今回は原油そのものが届かない。原油だけでなく、世界の全ての化石燃料がこの影響を受けます。「メガトン級のオイルショック」と言っていいでしょう。

 そこでどうすべきか。①原油輸入の分散、②電源の多様化、という2つの論点に絞ってお話ししましょう。

原油の中東依存はもはや許されない

石川:まず原油については、9割の中東依存を下げていくことが急務です。すでに報道されているようにアメリカ・アラスカ産原油の輸入は有力なオプションです。アメリカ産の原油は軍事的にシーレーンが確保されていて、ホルムズの二の舞になりにくい。

ホルムズ危機を想定していたか?, 原油の中東依存はもはや許されない, 原発、全33基の年内稼働を!, 「脱炭素」をドグマにするな、石炭火力も積極稼働せよ

米首脳会談で高市首相はトランプ大統領に「米国から調達する原油を備蓄する共同事業を実現したい」と伝えた(写真:共同通信社)

 加えてロシアの経済制裁を緩和し、ロシア産原油の輸入を考えるべきかもしれません。サハリンプロジェクトは日本の商社が参画しているので、検討に値するはずです。他方、火種を常に抱える中国からの原油輸入は避けたいところです。

 ただし、中東依存度を下げるための最有力候補であるアメリカ産原油は、質があまりよくありません。日本の製油所は中東の原油を想定した製造仕様ですので、改修工事に数カ月〜数年かかるでしょう。

 当面は日本国内の石油備蓄を放出するのと、足りなくなったら各国からスポット買いをしていくのでしょう。ただ、エネルギー政策としてもはや原油を中東に依存することは許されません。イランとイスラエル・アメリカの戦争は長期化する公算が高そうですし、2度あることは3度あるからです。

 イラン以外の産油国も原油が売れないと干上がってしまいますから、別ルートでの輸出を考えるのでしょうが、パイプライン建設は年単位で待たなければなりません。ともかく原油の輸入先は分散させましょう。

──電源構成についてはいかがでしょうか。

原発、全33基の年内稼働を!

石川:天然ガス依存を低減させ、原子力発電の再稼働を増やす、そして石炭火力発電をもっと動かす。これしかありません。

 まず、ホルムズ海峡とのかかわりでいえば、カタールからのLNG(液化天然ガス)があります。日本の電力源のうち、天然ガスが33%程度を占めています。カタールからのLNGは全体のうち5%程度と影響が小さいものの、論点はそこではありません。

 ホルムズ海峡の封鎖で「LNGの価格が高騰する」ことが問題なのです。LNGは基本的に国際的な原油価格と価格が連動します。原油はこれから下がることはないでしょうから、LNGも必然的に高くなります。

 また、日本だけでなく、他の非資源国もシーレーンが安定しているオーストラリアやマレーシアからのLNG輸入を強化し、売り手が非常に強くなるでしょう。

 要は「天然ガスの調達コストが異常に膨らむ」ことが避けて通れない未来なのです。

 ではどうすべきか。日本が自前の政治的選択としてできるのは「原発再稼働」以外にありません。後ほどお話しする石炭火力発電の積極稼働も有効な手段ですが、化石燃料全てが値上がりし、石炭のコストも上がる中において、原発だけは政治判断で動かせるからです。

 現在の原発の発電に占める割合は1割くらい。原子力規制委員会が厳しい“基準”を課しているためにこの数字になっていますが、日本の原発はすでに「安全」と言っていいでしょう。

 3.11の後に日本の全ての原子力発電所を緊急点検しており、その時に旧基準では(当時の)全ての発電所で「安全」というお墨付きが出ています。震災のとき、震度6以上を観測した女川・福島第一第二・東海第二は緊急停止しましたが、これも通常の作動です。

 それに現在の“新規制基準”は「テロ対策」「活断層」「竜巻」など、福島の事故と関連性が薄い項目が多数並んでいます。テロ対策をやるなとは言いません。ですが、テロという観点で言えば石油コンビナートや天然ガス発電所もリスクはありますが、これには誰も言及しません。現在の規制委員会は、3.11事故を契機に次々と規制を追加して、もはや実際の安全性と関わりが薄く、ほとんど無駄と言っていいような項目まで並んでいるのです。

 日本の原発再稼働を阻んでいるのは科学ではなく、政治的な事情というのが現実です。まして日本は非資源国であり、今回のことで化石燃料の調達環境が悪化するのも必至。手元にあって、安全で、エネルギー効率の高い原発を再稼働させないといけないのは自明です。

 審査中のものでもいいですから、とりあえずは日本の全33基を稼働させましょう。すでに電力料金は原発なしで計算されている地域も多いのですが、1年半から2年半かけて(原発を再稼働させれば)上昇を抑えることができます。政府は政治的決断を恐れてはいけません。やろうと思えば年内にはできるはずです。

──石炭火力発電についてはどうですか。脱炭素の流れの中で長らく悪者にされていましたが。

「脱炭素」をドグマにするな、石炭火力も積極稼働せよ

石川:日本の石炭火力発電の技術は世界最高水準です。碧南火力発電所や三隅発電所…とにかくいけばわかります。すごいのですよ。私も経産省時代の90年代にポーランドに円借款で石炭火力発電の供与をやりましたが、現地からは相当感謝されました。

 脱炭素政策の中で石炭火力発電は非常な悪者にされましたが、日本の中で「低効率」と位置付けられている発電所でも世界ではトップクラスです。まして、これだけエネルギー事情が逼迫している中にあって脱炭素政策をドグマとして信じていても何にもなりません。

 脱炭素をあれだけ称揚してきた欧州でさえ、EU(欧州連合)のフォンデアライエン欧州委員会委員長が「欧州が原子力発電に背を向けたのは戦略ミスだった」と認めたじゃありませんか。エネルギーに背に腹は代えられないのです。周回遅れで日本が追随する必要はありません。まして日本は非資源国です。

 今回のホルムズ海峡危機に対して政府はガソリンも補助金、都市ガスも補助金、電気代も補助金で当面対応するでしょうし、それしかできません。目先はそれでいいとしても、根本の日本のエネルギー政策の歪みを正さないと、国民が現実を直視できなくなります。

 日本は資源国ではないのです。だからこそ、安価で安定したエネルギー供給網の構築が国家として必要不可欠です。まずは原油の輸入先の分散、天然ガス依存の解消、石炭火力発電の復権、そしてなにより原発の再稼働です。国際社会に道徳論を振りかざしても、化石燃料は入ってきません。したたかに、冷静に、日本の国益を考えましょう。

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