ベンツSクラスとアルファード「値落ち感」の決定的な違い

アルファードの中古車は値落ち感がさほどないようだ Photo:JIJI
近年の新車はとても高く、さらに物価上昇のあおりを受けて、中古車が選択肢になる人も多いでしょう。少しでも安くクルマを手に入れたい一方で、「なぜそんなに安いのか」と不安に思うケースもあります。そこで今回は、安い中古車の“謎”と、中古車選びのコツについて解説します。(モータージャーナリスト/安全運転インストラクター 諸星陽一)
2016年型メルセデスベンツSクラスと
アルファードの決定的な違い
世の中には、驚くほど「値落ち」している中古車があります。中でも輸入車セダンの値落ちは目を見張るものがあります。
例えば2016年型のメルセデスベンツSクラスは、200万円を切る価格で販売されている場合もあります。新車で1000万円程度したクルマが、中古車とはいえ200万円程度で購入できるのは大きな魅力です。
ちなみに同じ2016年型の高級車で、トヨタ自動車のアルファードの場合は、中古車価格で170万~200万円ほど。新車価格(約300万円台~700万円台)と比べて、それほど値落ち感はない相場となっています。
2016年型ベンツSクラスの値落ち感があるのは、セダンの人気が低いという理由もありますが、輸入車は維持費が高いというのも大きな理由です。欧州ガソリン車の多くはハイオクなので、ガソリン代がかさみます。
また、修理や整備で部品交換が必要な際も、部品代は国産車に比べて高くなるのが一般的です。ディーラーで整備をした場合、時間工賃も高めなので整備費用も高くなりがちです。
「事故車=修復歴あり」じゃない!
中古車業界の前提どうなっている?
中古車の購入で絶対気をつけたいのは「事故車」です。これはお得な掘り出し物だ!と思って中古車を買ったら実は事故車だった、「修復歴なし」と書かれていたので安心して買ったのに修理した痕跡が見つかった、などという話はよく聞きます。
多くの人が勘違いしていますが、「事故車=修復歴あり」では、ありません。では、中古車業界の前提は、どうなっているのでしょうか?
自動車公正取引協議会が定めている「修復歴」は、クルマの骨格に該当する部分を修復したものに限られています。骨格とはフロアやメンバー(補強部材)、ピラー、ルーフなどの部分のこと。さらに、クレジットカード大以上の修復がされた場合にのみ「修復歴あり」となります。
つまり、ドアやボンネット、リヤハッチなどの凹みを板金塗装していたり、交換していたりしても「修復歴なし」です。また、クレジットカード大以下の小さな修復だと「修復歴なし」になります。
もっと極端な話をすれば、骨格部分の修正はせず全塗装(オールペン)していても、「修復歴なし」とされます。ユーザーの立場からすれば、ドアをガードレールにこすったクルマは「事故車」と思うかもしれませんが、中古車業界では「修復歴なし」となるのです。
悪質業者の中には、骨格部分を修復しているにもかかわらず「バレないだろう」と「修復歴なし」で販売している中古車も、残念ながら存在します。ただ、それを素人が判別するのは難しいでしょう。たとえ中古自動車査定士(民間資格)であっても、スキルによっては見抜けないほど巧妙な、「隠れ修復歴あり」も存在します。

(参照)骨格の部位名称 出典:日本自動車鑑定協会

同上 出典:日本自動車鑑定協会
また、輸入車(新車)は船で運ばれてくる間にキズが付くといったトラブルが、一定の割合で発生します。多くの輸入車は日本に上陸後、「PDIセンター」などと呼ばれる施設で、機能はもちろん内外装についても検査を受けます。もし外装にキズなどが見つかった場合は、PDIセンターで板金塗装などを行います。その後、新車として販売されますが、修復歴ありとはなりません。
つまり、「修復歴あり」と明記されている中古車は、それなりに大きな修復を受けているわけです。では、修復歴ありのクルマは「良くないクルマ」なのでしょうか?
結論からいえば、それはイエスでもありノーでもあります。確実にいえるのは、修復歴を隠しているクルマよりも、明記しているクルマのほうが安心度は高いです。
直前に修復されて売りに出された中古車なら、選択肢として十分に検討できます。ただし、骨格部分の修復にはそれなりの手間が掛かるため、販売価格が安い背景には別の要因があるかもしれないことを忘れずに。
なお、修復歴はオーナーが変わっても残ります。前オーナーだけでなく、前々オーナー、前々前オーナーがいる中古車も存在しますから、気になるという人はやめておいたほうがいいでしょう。
他方で、修復歴の明記は、「きちんと修理されている」とみなすこともできます。市販車を使い、改造範囲が少ないプロダクションレースなどでは、新車よりもきっちりと修復された車体のほうが良いと言われることもあります。新車でラインオフされた車体より、プロの手で修正(矯正)された車体のほうが、足回りの取付位置などの基準が整いやすい、という考え方です。このことからも、修復歴ありが悪いとは一概には言えません。
国道沿いに並んでいる「10万円」の
激安中古車は買って大丈夫?
さて、中古車にはいわゆる「激安車」と呼ばれるものが存在します。国道沿いの青空店舗に、中には「10万円」や「20万円」といったプライスボードを掲げている中古車を見かけます。
かつては車両本体価格のみでもプライスボードを掲示できましたが、現在は支払総額での表示が義務づけられています。つまり基本的には、その価格を支払えば、乗って帰れてしまうということです。
ただし、「定期点検整備(車検整備)なし」となっている場合は、自分で車検を受けてナンバーを取得しなくてはなりません。仮ナンバーを取得し、ユーザー車検を受けること自体はさほど難しくありませんが、手続きがは平日のみなので注意しましょう。買ってすぐ乗りたい!という人は、少なくとも車検の残りがある中古車を選ぶことをおすすめします。

Photo:PIXTA
「狙い目」の激安中古車がある
意外な場所って?
また、狙い目の激安車は、意外な場所にあります。町の整備工場(モータース)です。整備工場でも新車を販売していることがあります。新車販売をすれば下取り車が発生することも多いですし、単純に処分依頼でクルマを引き取ることもあります。
中古車販売をメインに行っていなければ、中古車情報サイトに掲載していないこともあります。サイト掲載には経費が掛かり、その分が販売価格に上乗せされがちですが、そうした経費が掛かっていない分、安い場合があるのです。
また、町のモータースは地域密着型のビジネスなので、口コミが悪くなるようなことは避ける傾向にあります。中古車販売で利益を出すというよりも、販売後の整備や車検業務などで利益を出すことを目的としているので、結果として販売価格が抑えられていることが期待できます。

Photo:PIXTA
中古車をネットで買うのは
アリ?ナシ?
今は何でもネットで買える時代です。アメリカの高級電気自動車(EV)テスラは、新車でもネット販売が中心です。では、中古車をネットでポチっとするのはアリでしょうか?
筆者は、中古車は「現物確認」が基本だと考えています。クルマは確認すべき部分があまりに多いからです。
ホイールやナビであれば、キズがないか、機能するかを確認すればOKです。が、クルマそのものとなるとエンジンを始動して音や匂いを確認し、試乗もしたほうがいいでしょう。探すのにネットを使うのは全く問題ありませんが、特に匂いについては実車しないと分かりません。禁煙車であっても、香りが強い芳香剤が使われているケースもあります。
3月に買う人が注意したい「税金」
ディーラー値引きもある
例年、年度末である3月はクルマの登録(軽自動車の場合は届出)がとても多くなります。就職や入学で新たにクルマを使う人が増えるからです。さらに、決算期で3月末までに登録・届出台数を稼ぎたいというディーラーとメーカーの思惑もあります。
しかし、2026年はちょっと事情が異なっています。というのも3月31日をもって「環境性能割※」が廃止される方向で調整が進んでいるからです。※19年10月に自動車取得税に代わって導入された税。燃費性能に応じて新車・中古車の購入時に課税
複雑な税体系が簡素化される一方で、新たな課税方式への移行も議論されており、3月は制度の切り替わりを前にした「買い控え」と、「駆け込み需要」が混在する複雑な状況が予想されています。
筆者が取材した現状では、一部で買い控えが発生しているようです。とはいえ、EVはもともと非課税で、ハイブリッド車も非課税の車種が多いので、それらは買い控えには影響しないとのこと。その一方で、登録台数を少しでも増やしたいディーラーは「3月中に登録するのであれば値引きします」とセールスしてくるケースもあるようです。
最後の注意点として、軽自動車」は4月1日の所有者に1年分の軽自動車税が課税されます。そのため3月末や4月1日の届出は、税金の節約ができません。軽は4月2日以降に登録するのが理想です。
EVの場合は軽自動車、登録車に関係なく翌年度の軽自動車税、自動車税が75%軽減です。つまり軽のEVの場合、4月2日に登録すれば、ほぼ26~27年の2年間で、1年分の25%負担で済みます。